自閉症の症状を引き起こす可能性のある原因物質を発見しました。
この原因物質は腸内細菌が作っていました。
カリフォルニア工科大学の若い女性研究者イレイン・シャオ博士は、
特別なマウス(自閉症モデルマウス)を使って自閉症の研究を行っています。
シャオ博士は、コミュニケーション能力の低下したマウスでは、腸に異常があることを発見しました。
腸の壁は本来、細胞がびっしりと詰まっているはずですが、このマウスには隙間ができていました。
〝漏れる腸”と言われる状態です。
腸は、栄養を体内に取り込む働きをしつつ、外敵や毒の侵入を防ぐバリアとしても働いています。
しかし、〝漏れる腸”になると、敵も味方も見境なく体内に入ってきてしまうため、
病原体や毒素が体中をめぐり、病気になってしまいます。
シャオ博士は、マウスの腸を修復するために、整腸作用を持つ薬を飲ませることにしました。
すると、その整腸剤が驚くような作用を引き起こしました。
なんと、低下していたコミュニケーション能力が改善され、ほとんど正常になったのです。
なぜ、マウスのコミュニケーション能力が改善したのでしょうか?
さらに詳しく調べてみると、コミュニケーション能力の低いマウスでは、「4EPS」という毒素が80倍に増えていました。
それが、整腸剤を飲んだあとでは、正常と同じ程度まで下がっていました。
一方、普通のマウスに4EPSを注射すると、コミュニケーション能力が低下することもわかりました。
この4EPSが、腸内細菌が作り出す毒素だったのです。
これまでの実験結果から、次のようなことが推測できます。
コミュニケーション能力の低いマウスでは、腸内細菌が作り出した4EPSが
〝漏れる腸”の腸壁をすり抜けて体内に入ったということ。
さらに、整腸剤で〝漏れる腸”を治療すると、腸のバリアが働いて4EPSの侵入を防いだということ。
もし、マウスと同じメカニズムが人間にも働いていれば、
4EPSをコントロールすることが自閉症の症状軽減に役立つ可能性があります。
毒も薬も腸内細菌というややこしい話
〝漏れる腸”を治した整腸剤も、バクテロイデス・フラジリスという腸内細菌です。
この菌は、腸壁を整え、バリア機能を高める働きをします。
すなわち、マウスの症状を悪化させる毒である4EPSを作っているのも、
その毒が体内に入らないようにするために腸を整えているのも腸内細菌です。
したがって、腸内フローラのバランスが崩れると〝漏れる腸”につながり、
さまざまな病気を引き起こしますが、
自閉症もその病気の一つであるという考え方ができます。
さらに、バクテロイデス・フラジリスの整腸作用が人間にも効果があるならば、
自閉症以外の病気にも効果を発揮するかもしれません。
シャオ博士の研究は、腸内細菌と病気との複雑な絡み合いの一端が現れた、象徴的なものと言えます。
すべてが解明されたわけではありませんが、
現代医学が「腸内細菌」という視点を得たことは、
今後の治療の大きなブレイクスルーにつながる可能性があります。
腸内細菌は、様々な分泌物を分泌することにより働きかけております。
この分泌物が、乳酸菌発酵エキスと呼ばれている物質です。
腸内細菌は自閉症にも関わっていますが、その多くが乳酸菌発酵エキスを介して行われています。
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