第77回 「誰と共に」
「何がやりたいのですか?」と、私は転職の相談にみえる皆さんに伺う。
最初はそれなりの希望を言われる方々も、よく聴いてみると自分の求めているものが、「実は、よくわからない」という言葉が返ってくる事が多い。
そういった方々に、「これまでのキャリアで、誰しも一度や二度は、生き生きと楽しく仕事をして、輝いた時があると思います。その時、どこで、何をしていた時ですか?
そこに共通していえることは、どんなことでした?」と訊ねると、「何をやっていたか」よりも、「誰と共に働いていたか」に、輝く要素があることが多い。
自分と気の合う好きな人や、自分が共感できる価値観を語る社長や経営陣のもとで働けば、心地よく伸び伸び働ける。
やりたい仕事も大切な要素だが、この人とだったら共に働きたいと思える人を見つけることは、企業選択の大きな基準となる。
6年前にある企業にご紹介した役員と、部門部長と会食をした。
笑顔で経緯を語る彼の中に、互いに対する信頼感が感じられとても爽やかな気持ちになった。
「人の相性を大切に」という思いがあるので、その企業と役員に思いを寄せてくれた方々を次々に紹介した結果、500億の事業会社として成長し、今年いよいよ上場する。
ご紹介した方々の多くが部長職という立場に昇格され、ますます手腕を発揮している。
起業時、殆どの場合、気の合う仲間と共に、スタートする。アーリーステージの企業の優位性は、気の合う、信じあった人間達の団結力以外、何ものでもない。
小規模の会社を選ぶ際は特に、社長とメンバーの理念や価値観の共有化は、きわめて大きな転職成功要素となる。
経営者の理念やビジョン、価値観、そして意志決定のワールドに参加するのだから、なおさらである。
人は、本質的に自分の為だけには、努力できないものである。
誰かが喜ぶ事、喜ぶ顔をみることで、力が湧く。
子供の頃、好きな友達や先生の家の手伝いは喜んでやった記憶はないだろうか!
気の合う好きな人の為に、仕事をするということは、その人に、自分を認めて欲しいからである。
持てる力を最大限に上げて仕事をするから、成果が上がる。そして、そういった気持ちで仕事する仲間が集まった環境は何ものにも代えがたい。
「誰と共に・・」は、大きなモチベーションに繋がり、人と企業の成長の原動力となる。
魅力的な気の会う人との出逢いは、人生を根底から変える。