第29回 新世紀を迎え | インキュベーター社長日記 | インターウォーズ株式会社 吉井信隆のブログ

第29回 新世紀を迎え

21世紀から、20世紀を眺めると「国」から「会社」、そして「個人」へと重心が移動してきたと見える。


知識仕事人の平均寿命が驚くほど伸び、企業寿命が確実に短くなっている。


グローバル化と競争激化、急激なイノベーションと技術変化により、企業組織の寿命はいっそう短くなると思う。


知識仕事人が、企業組織よりも長生きし、第二の人生のために、新しいキャリア、新しいアイデンティティ、新しい環境を求めていくだろう。


アメリカでは、40%は、知識仕事人だといわれている。


こういった人たちは頭の中にある知識を所有し生産をすることによって新しいワークスタイルを築く。


SOHO人口が4000万以上いる現状は、そんな表れでもある。


1950年代から60年代にかけて制度化された日本企業の終身雇用、年功序列制度は、過去のものとなった。


先の企業の姿は、どのように変貌するのか?


今日とは、異なるものになるのだろう。


事業の成否はコスト格差、要はいかに安く作るかが事業戦略の有無にあった。


今日の事業の成否は、安さだけの戦いから価値の提供に変わりつつある。


この目に見えない価値を生み出す知識、知恵をどう生かすかの有無が企業間の格差につながる。


長生きする知識仕事人(40年以上)は、生産手段を所有し、しかも、その生産手段は個々の頭の中にある携行品だ。


生産手段知識は、他のいかなる資源とも異質であり、専門分化して、初めて意味、価値をもってくる。


例えば、人事評価コンサルタントが真価を発揮するのは、人事評価に専門分化しているからであり、戦略、財務、システムにはアドバイス、サポートは出来ない。


教育、医療などあらゆる職種の知識仕事人においてもいえる。


 企業内での中間管理職は、90年代に入ってから知識経済ではあまり活躍の場は見当たらなくなってきた。


今後、管理者として求められるのは、知識ワークと知識仕事人をマネジメントするプロ管理者(プロデューサー)になることだ。


40~50代の人に何をしているか伺うと決まって、「○○で働いている」「マルマル銀行にいる」と、会社の名前で返ってくることが多い。


若い人たちは「デザイナー」「システムエンジニア」「CPA会計士」といった答えが返ってくる。


知識仕事人の帰属先は、雇用される会社組織ではなく、自分の専門領域になり、コミュニティは自らの専門領域そのものとなっている。


これからの企業を変えていくものは、技術や情報やeコマースの発展よりも、むしろこの「個の意識の変化」がインパクトを与えると思う。


一人ひとりが、身らの機会、キャリア、成果、帰属、自己実現に結びつけ、明日の組織がどのようなものとなり、どのような組織が繁栄するかを決めはじめている。


企業をはじめどんな組織でも、「人をして何かを生みださせる」ことである。


多くの企業が、同一価格でいかなる原材料も手に入れられ、資金はさまざまな手段によって調達でき、土地、労働、資本からの競争優位は得られなくなってきた。


肉体労働者を活用してきたほとんどの企業にとって、生産手段として重要な存在ではなくなり、メーカーなど極度に労働集約的な小さな産業は別として、競争上意味をもたなくなった。


競争力要因は、知識労働の生産性だ。


知識労働の生産性を左右するものが知識仕事人であり、企業の盛衰を決めるものも、一人ひとりの知識仕事人だ。


今世紀は、知識仕事人として活躍する仕組みができるかによって、企業間の差はますます歴然となるだろう。


本年もよろしくお願い申し上げます。





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