第10回 光の人
このところ華々しく成長した企業が店頭公開でピーク・アウトしてしまう例が後をたたない。
景気後退・競争激化・市場飽和・商品陳腐化、サービス陳腐化は、原因の一つだ。
しかし、こういった問題はどの企業もいつか遭遇する必然の事態であり、本質は環境変化を感知し、素早く対応出来る企業とそうでない企業の違いの問題だ。
企業はリストラという号令を出し、すっかりこの言葉が定着し、至るところで使われている。
永引く不況で、相変わらず減収、減益と発表している企業が多い。いつしかその対応策が「リストラ」という表現になり、共通言語として使われるようになった。
その内容は、人員削減による労務費の切り詰めという施策になって使われている。「リストラ」は、人減らしであり、昔の口減らしの言葉のイメージが強い。
本来リストラとは、事業の再構築であり、単に目先の事業の一般管理者の縮小のP/Lの数字合わせに走ったものでなく、抜本的に事業生命力を持ったものにしてゆく施策だ。
経営者の示す事業には、ヴィジョンや理念が必要だ。事業として「いける、やりたい」という直感的洞察力が求められる。経営者自身が、自らの思いで「こういうことをやりたい!」と明確だと社員は「意気に感じて」動く。事業がうまくいかなくなった際、フットワークが落ち、人に会わないリーダーに、社員が「意気に感じる」はずがない。
いくら計画を理論的に作ってみたところで、それを実行するエネルギーはもっと泥臭いものだ。経営は、今ここの、現場にある。「オレはこうしたい」といった、リーダーの強烈な「先を照らす光」が必要だ。
平成大不況、構造的不況を嘆くことなく、リーダーは、ヴィジョンを示し、メンバーの先を照らし、「小さな差異」を愚直に実行してゆくことに、トンネルの先に出口が見えてくる。