「いつ死んでも悔いのないように、お金は使いなさい」とは、今は亡き母の言葉です。
今夜は「ひとり夜桜見物」。
母が青春時代を過ごした昭和21年、日本政府はデノミを実施した。
新円切り替えと預金封鎖で、全国民が使えるお金を大幅に制限したインフレ対策。
母の結婚費用として貯めてあった、それなりの預金は瞬く間に価値を下げ、たった1足の下駄しか買えなかったという。
成人し仕事を始めた頃の私に、母がいつも諭した言葉。
「カズちゃん! お金というものは魔物よ。あればあるほど、もっともっと欲しい。
私の青春はデノミで下駄1足だった。
食べたいものや、したい事を我慢してお金を貯めても、もしかしたら下駄1足(靴1足)しか買えない時代が再び来るかも知れないわ。
お金はそんな風に無くなるものだけど、知恵や知識や経験や技術は、誰にも取られないからね。
一生続けられる仕事をするのよ。
そしてどんな時にも、勉強しなさいね。本や新聞を毎日読みなさい。
おいしい料理をたくさん食べなさい。あなたの職業には、それが1番大切よ。
旅をすることが世間を広くするから、どこにでも行きなさい」と。
そんな時代を生き抜いた母は、我慢強く、明るく、達観的だった。