料理研究家が日曜日の夜にのみ営業する、居酒屋「華ちゃん」。

今夜も開店時間となりました。

今夜のお客さまは、アダミアーノ 多美さん。

イタリア人のご主人=アダミアーノ マリオさんと共に、日頃はローマに住んでいますが、夏休みを日本で過ごすために一時帰国中です。

「ご主人は、お変わりございませんか?」と聞く華ちゃんに、多美さんは「はい!  おかげさまで」と、優雅に微笑みます。

今から5年ほど前、多美さんと華ちゃんは、ストックホルムに向かう船の中で出会いました。

華ちゃんの船内での正装。実は、ネットで買ったドレス。笑


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華ちゃん「暑い折ですから、冷たい前菜を用意しました。

野菜のゼリー寄せです。

さあ、どうぞ召し上がって下さい。

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赤肉メロンのひとくちスープ、ブルーチーズのフラン、ホタテのヒマワリ仕立てサラダも、お作りしておきましたわ。

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華ちゃん「これは、カレイの縁側の唐揚げです」。


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多美さん「まあ〜! 青柚子のすりおろしが良い香り!!!。

日本の香りですね〜」。

5年ほど前、多美さんは仕事でスウェーデンに向かっており、華ちゃんはスカンジナビア半島にある有名なレストランに、「食」の研究に出かける途中でした。

憂いのある表情で海を眺めている多美さんが妙に気になり、華ちゃんから声をかけたのがきっかけとなり、船内でも行動を共にしたのがご縁です。

華ちゃん「マリオさんとご結婚なさって、本当にお幸せそうですね」。

多美さん「ええ! 幸せそのものです。

朝は起床と同時に微笑み合い、肩を抱くというスキンシップから始まります。

声をかけ合うこと、日々のスキンシップが相手に対する愛情表現だと、マリオから教えられました。

船で華ちゃんに会った頃は、結婚について悩んでいました。

その頃にお付き合いをしていた日本人の男性からは、親に資産があるのでお金には困らない、結婚したら仕事を辞めて家庭に入って欲しいと言われていました」。

華ちゃんは、多美さんの好物である「陳麻婆豆腐」を作ってお出しします。


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わあ〜!  これコレ!!!! と、表情が緩む多美さんです。

華ちゃん「政府の外交の仕事をしていた多美さんに、仕事をきっぱりと辞めなさいと言うのも、ずいぶんと理解のない話でしたね。

その後に、イタリア万博関連の仕事で知り合ったマリオさんから猛烈に求婚されて、電撃結婚なさってしまった。

元彼は、ショックだったでしょうね〜〜」。

ワインがすすむ多美さんに、華ちゃんはクルミのキャラメリゼをお出ししながら、その後の様子を尋ねます。

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クリームチーズのナンも焼き上がりました。

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ほうれん草のカレーと、マンゴーラッシーをお食事にご用意しました。

居酒屋「華ちゃん」の名物カレーです。


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多美さん「マリオは私が仕事を続けることに、強い理解を示しました。

〜マリオさんの言葉〜

仕事をするということは、社会参加だ。

女性を、結婚という名の元に家庭に閉じ込めるのは、男の独占欲だ。

お互いに仕事をし、共に家庭を守り、両親を大切にする。

女性の社会参画を認めないのは、男の傲慢としか言いようがない。

多美さんが仕事で忙しい時には、僕が料理を作って待つよ。

同じ時間に帰れる日は、一緒に料理を作ろう!

多美さん「マリオの柔軟性ある言葉と、私を単に女としてだけでなく、人として大切にしてくれる姿に惹かれました」。

華ちゃんは、多美さんとお話しつつ、多美さんの故郷菓子である「ミョウガ餅」をこっそりと作っています。

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さあさあ、蒸したての熱々を召し上がれ。

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多美さん「華ちゃん!  こ、こ、これは??

まるで母が作ったミョウガボチ(餅)と同じ味です!」

華ちゃん「今は亡きお母さまの料理ノートを、お兄さまから送ってもらいましたのよ。

ミョウガの葉はお父さまが摘んで、宅急便で送ってくださいました。

お母さまは、多美さんの幸せを誰よりも強く願っておられました。

摘みたてのミョウガの葉は、お母さまの匂いがしますか?」

ミョウガ餅を片手に、溢れる涙を拭う多美さん。

故郷の匂いが、店内に香り高く漂います。

〜このお話はフィクションであり、実在の人物及び団体とは一切関係ありません〜