料理研究家が、日曜日の夜にのみ開業する、居酒屋「華ちゃん」。

今夜も、静かに開店しております。

今夜の桑名はあいにくの大雪で、お客さまも少なく、華ちゃんはため息をついたり、大きなあくびをしたり。

と、そこに、隣町に住む恭子さんが、彼女のご実家からのお届けものを持って来てくださいました。

華ちゃんの大好物の、お漬物です。

恭子さんは、華ちゃんの茶道仲間です。


あら!  珍しくお暇そうねと言われるので、はいはい、開店休業状態でございますと答えると、では私がお客さまになっても良いかしら? ということになりました。

ありがとうございます。

まずは、「ほうれん草と切り干し大根のハリハリ」からどうぞ。


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わあ〜!!!  シャキシャキ感がいいですね〜♬ と、恭子さん。

華ちゃん☆ 「切り干し大根をさっと洗って戻さずに茹で、ほうれん草と出汁などに浸すだけですよ」と、レシピを差し上げます。

続いては、鶏胸肉と白菜のピリ辛和えです。自家製のラー油で和えました。

昨年ソウルに旅した折に買い求めた、青磁の器に盛って、お出しします。

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ピリ辛が刺激的だわと、大よろこびしてくださる恭子さん。


今はニコニコ顔の恭子さんですが、数年前までは、家族関係に苦しんでおられ、華ちゃんは何度か愚痴を聞く係となりました。笑


華ちゃん☆「あのお母さまが亡くなられて、何年になられますか?」

恭子さん ☆ 「華ちゃんにも、たくさんの愚痴を聞いて頂きましたが、義母が逝ってから、もう3年になります」。

〜恭子さんは長野県の某市で精密機械を作る会社を経営する家庭に生まれ、縁あって、この桑名市に嫁いで来られました。

華ちゃん居酒屋の、隣町の豪邸に住んでおられます〜

恭子さん 「資産がある田舎の土地持ちに嫁げば、のんびりと暮らせるからと、周りにも勧められて田舎に嫁いでは来たものの、このような醜い遺産争いになるとは、考えてもおりませんでした。

夫は長男ですから、ある意味、義父の遺産の全てを夫が受け取ると思っていたのです。ところが、義母はとんでもない人でした」。

〜恭子さんの嫁ぎ先には、2万坪を越える土地や先祖代々の資産がありました〜


鰆の焼き物を召し上がってくださいねと、華ちゃんは熱々をお勧めします。

あらあら慌てて、付け合わせの膾を奥に盛ってしまったわ。


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華ちゃんはこれまで何度か、恭子さんの愚痴を聞いて来ましたが、お金は魔物だとしみじみ感じます。

恭子さん 「私の夫の実母は、夫が小学生の頃に亡くなり、義母は後妻でした。

夫から聞いたことですが、夫がまだ小さい頃には、義父がいない日に義母から何度か足や手をつねられ、アザだらけだった由。

義父も気づいていたようですが、彼を守ってくれたことはなかったと聞きました。

後妻には、義父も甘かったようです。

その義母が産んだ1人娘は遠くに嫁いだので、当然のごとく、私も夫も父が残した遺産を義母と夫が受け継ぐものと思っていたのです。

田舎では、嫁に行く折にたくさんの嫁入り道具と持参金を持たせてもらうので、土地などは長男が貰い受けるものでした。

何しろ、義妹には4トントラックで嫁入り道具を運んだほどのお支度をしたのですから、義父の遺産は放棄するものだと、私も夫も信じて疑わなかったのです。

しかし、義母は恐ろしい人でした」。

華ちゃん☆ 「新たけのこが手に入ったので、釜飯風に仕立てましたの。

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恭子さん☆ 「あら! 何て美味しい!!!  
気持ちが晴れやかになりますねぇ〜♬」

華ちゃんは、「もずくを入れた、かき玉汁も、ご一緒に召し上がってね」と、温かい吸い物も準備します。



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恭子さん☆ 「義父が亡くなったら、義母はすぐに家を出て義妹の近くに引っ越してしまいました。

全ての財産が、義父の亡くなる前に、義母と義妹の名義に差し代わってしまっていたことに、私や夫が気づいたのは、それから1年近くたってからのことです。

その財産を取り戻すために、長い年月がかかりましたが、やがてその義母も亡くなりました。

その間には、私どもの次男が未成年なのにタバコを吸い、自宅がボヤ騒ぎを出すという問題が起こりました。

次男は弁護士を目指していたので、大学の法学部を受験する予定でしたが能力が及ばず、進路変更を余儀なくされたことなどがストレスになっていたようです。

幸い多くの皆さまに助けられ、ボヤ騒ぎは大きな問題とならずに済みましたが。」

華ちゃんは、大根のキムチ=カクテギを最後にお出しします。


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恭子さん☆ 「義妹との遺産争いは、義母の死後も続きました。


その間には、義妹のひとり娘が車に跳ねられて、片足を失くすという不幸もありました。

遺産争いが続いていた頃、私はふいに実家に帰りたくなり、故郷の長野に戻り、母にあれこれと泣き言を並べたてました。

実家の母は90歳を超えますが、今なお元気です。

母☆ 「恭子よ、よく聞きなさい。おまえは何のために生まれてきたのだい? 

人は自分の幸せだけのために、生きるものだろうか?

あんな田舎の土地など、たいしたお金にもなりませんよ。

小さな財産に目が眩んで、生きるという本質を見失ってはいないかい?

おまえが着ている、そのロシアンセーブルとかいう毛皮だけれど、世界最高級のものだというが、着ているおまえは、まるで熊みたいだ。

おまえがつけている、その指輪は5キャラットというが、そんなものは、おまえが死んだ時には、それこそ揉め事のタネになるし、宝石商に持ち込んでも、おそらく二足三文だよ。

強欲とは、罪深いということだ。

人は、この世に生まれて死ぬまでに、何か他人さまを幸せにできるように、仕事や奉仕(ボランティア)をしなければ、生きている価値などないと私は思うがねぇ。

因果応報という言葉があるが、次男のボヤ騒ぎも、勝手な親の因果の報いを受けたのではないかい?」

母のその言葉は、私の胸にずっしりと響きました。

次男は私たち夫婦と義母の争いのストレスから、タバコを吸っていたのかもしれないと気づいたのです。

愚かな我が身にハッと気づいた時、母の姿が菩薩に見えました。

親とは、何とありがたい存在なのでしょうか。

私は仕事も、まともなボランティアもできませんが、せめて自分の子どもから、この親の子どもに産まれて良かったと言われるように身を律して生きなければと、つくづく思ったのです。

長野から戻り、私はご近所のお年寄りたちに自宅を解放して、お抹茶と手作りの和菓子を差し上げるというボランティアを開始しました。

一か月に、たった2日間のことですが、行きどころのないお年寄りたちに喜ばれています。私もたくさんの生活の知恵などを頂けて、本当に良かったと思っています」。

〜因果応報、、、確かに〜

我が身の行いが、いずれ我が身に返って来るということですね、


華ちゃんも、和菓子と抹茶で恭子さんをもてなします。

大垣の名店の、イチゴ大福ですよ。



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その後、恭子さんは相変わらず、のんびりゆったりと過ごしておられるようですが、お茶のお稽古の折には、愚痴がなくなりました。

華ちゃんは、おかげで大変助かっています。笑笑



〜このお話はフィクションであり、実在の人物及び団体とは、一切関係ありません〜