高校生だった
古い話です。
1985年の秋、高校一年生だった私。
中間テストの真っ最中の日に
その日の試験が終わり、そのまま自宅方向の電車に乗り
いつも降りる駅をそのままスルーして
成田空港に向かいました。
数日前に、出張でアメリカから帰る父から連絡があり
『荷物が多いから空港まで迎えに来い』 との命令が下ったからです。
普通に学校帰りの制服姿で到着ロビーにいるというのは
少し居心地の悪いものでした。
到着便を知らせるボードで
父が乗っているはずの飛行機が到着している事を確認。
近くのモニターを凝視し
私なりに一生懸命目を凝らしていたのに
一向に現れる気配の無い様子。
少しイライラし始めた私。
『・・・ひょっとして乗って無いんじゃないの???』
そんな疑問がよぎり始めた頃
『おい!!!何してん!!』
と、突然すぐ傍に立ちはだかったおっさんに声を掛けられびっくりしました。
その多少見覚えのあるおっさんは父でした。
<※これは出発ロビー f^_^; 到着ロビーの写真が無かった。>
わずか半年、顔を見なかった父は
私の想像以上に老けこんでいたので
出て来た姿に私は全く気が付かなかったのでした。
二つの大きなスーツケースをカートに乗せた父は
『めんどさいからタクシーで帰る』
と言い放ちました。
『タクシーに乗れるお金があるんだったら(会社に請求出来ると言う事)
私なんか来る必要無かったやん!』
そんな可愛げの無い事を言った覚えがあります。
そして帰りの車中の小一時間
何気に楽しい出張生活だったと語る父。
そう言えば、やけに日焼けしている。
毎週日曜日はゴルフばかりしていたとの事。
じゃあなんであんたこんなに白髪が増えた?・・・と
違和感を感じつつ聞いていたのを覚えています。
父が帰国したのはちょうど今頃、10月の半ば。
奇しくも、39年ぶりのリーグ優勝を果たしたタイガースが
日本シリーズに向けて張り切っていた頃。
リーグ優勝は見逃した父でしたが
何とか日本一を見届ける事が出来ました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あれから25年。
父は生きているうちに
もう一度日本一の瞬間を見る事が出来るでしょうか(;´ω`)
きっとそんな思いで彼らを観ている人は沢山いるはず。
一昨日、またしても夢破れた彼らの姿を観ながら
ふとそんな事を思ってしまいました。
こんな些細な、どうでも良い事が生きる希望にもなるって事実が
おめでたくも存在するわけで。
これは年寄りの父に限らず
私にも言える事なのですが。
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