トランプ日本に対する問題発言?大統領選挙からみるアメリカ社会 | 国際法と国際政治から読み解く現在

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スーパーチューズデーの結果が出そろい、共和党では不動産王のトランプ氏が、民主党ではクリントン前国務長官が、それぞれ11州のうちの7つの州で勝利し、指名獲得に一歩近づきました。

スーパーチューズデーでは、民主・共和両党それぞれ11の州で一斉に予備選挙や党員集会が行われたのです。

党員集会に参加したアメリカの共産党員に聞いた話ですが、トランプは演説でTPP、中国、中東の国々など、いわゆる外のものに対する攻撃的な発言を繰り返し行っているらしく。

日本も、他人事ではありません。彼の発言の中には、
「去年から、日本がアメリカとの安全保障協力で協力的になっている。
まずは、日本に大量の防衛費を肩代わりさせて、アメリカの経済を安定させようじゃないか。」と言っていたり。


これを聞いたあと、今では、心の奥で少し彼を応援していた気持ちがいっさいなくなってしまいました。


このうち野党・共和党では、過激な発言を繰り返すトランプ氏が、ジョージア州やアラバマ州のほか、テネシー州、マサチューセッツ州、バージニア州、バーモント州、それにアーカンソー州の合わせて7つの州で勝利しました。

トランプ氏は記者会見で「私は人々をまとめる人だ。みんなを1つにしたいし、そうすれば誰もわれわれを負かすことはできない」と述べて、早くも本選挙を見据え、民主党のクリントン前国務長官との対決姿勢を鮮明にしました。

また、保守強硬派のクルーズ上院議員が、地元のテキサス州とオクラホマ州、そしてアラスカ州で勝利したほか、

若手のホープとされるルビオ上院議員がミネソタ州で勝利し、今回の候補者選びで初勝利を果たしました。

一方、与党・民主党では、女性初の大統領を目指すクリントン氏が、ジョージア州やバージニア州のほか、アラバマ州やテネシー州、アーカンソー州、テキサス州、それにマサチューセッツ州の合わせて7つの州で勝利しました。
これを受けてクリントン氏は演説し、「私たちは壁を作るのではなく、労働者や子ども、女性、黒人の家族が直面している障壁を一丸となって打ち砕き、その力を引き出していく」と述べました。

また、格差の是正を前面に掲げるサンダース上院議員は、地元のバーモント州のほか、オクラホマ州、コロラド州、そしてミネソタ州の合わせて4つの州で勝利しました。

前回は、メディアの選挙結果からではわからない予備選挙について説明しました。

今回は、大統領選挙からみるアメリカ社会の実体について。

今回の大統領選挙は少なくとも現在のの段階で、前代未聞の異例な事態に見舞われています。

8年ぶりのホワイトハウス奪還を狙う共和党では、不動産王にしてテレビタレントのドナルド・トランプ候補が、行政経験ゼロの上にこれまで信じ難いような暴論や問題発言を繰り返しながら、支持率でまさかの首位を独走しています。

かと思うと、民主党の方も、公認確実と見られていた本命中の本命のヒラリー・クリントン元国務長官が、社会民主義者を自任し、当初は泡沫候補扱いさえされていた74歳のバーニー・サンダース上院議員の猛追を許し、州によっては得票率で逆転しています。

 当初、トランプ、サンダース両「ダークホース」候補の躍進はあくまで一時的な現象であり、いざ選挙戦が始まれば、両党とも妥当な候補者に落ち着くだろうとの見方が強かった。しかし、とりわけトランプ氏への支持は勢いを増すばかりです。


 ダークホースの2候補にここまで支持が集まる理由として、米国内に鬱積する不満の存在が指摘されます。急激に経済格差を拡げてきたアメリカにあって、移民や人種的少数派の台頭を脅威に感じている白人のワーキングプアが、圧倒的にトランプを支持しています。また、その一方で、過重な学費ローンを抱えた上に安定的な職に就くことが難しく将来不安を抱える学生や若年世代が、サンダースの熱狂的な支持母体となっています。

 そのため、常識的には暴論にしか聞こえないトランプの移民排斥発言やイスラム教徒の入国拒否発言などが、そうした不満層の琴線に触れ、また、サンダースが提唱する対富裕層増税や公立大学の無償化、金融業に対する規制強化なども、不平等感を募らせる若年世代から、ようやく自分たちの代弁者が現れたと受け止められる理由となっています。


これはアメリカで格差の拡大を容認する政策が続いた結果、もはやアメリカ社会では中間層が空洞化し、一握りの富裕層と巨大な貧困層が形成されつつあることをより明確にしたでしょう。




サンダースもその貧困層にアピールする政策を掲げる以上、彼らに対する支持はそう簡単には弱まることはなく、しかも、そうした不満層は、過去の大統領選挙でたびたび有力候補の命取りになったちょっとした失言や過去のスキャンダル程度のことでは簡単には動じない性格を持ちます。

スーパーチューズデーは、共和党ではトランプ氏が、民主党ではクリントン氏がそれぞれ指名獲得に一歩近づき、フロリダ州などで予備選挙が行われる今月15日に次のヤマ場を迎えます。