陽性検査のパラドクス(原因の確率、ベイズの定理) | 数学美術館 

陽性検査のパラドクス(原因の確率、ベイズの定理)

こんにちは。パーソナル数学コーチの八田陽児です。


今年(2012年)の指導要領改訂で、数Cにあった「条件付き確率」の単元が数Aにやってきました。


現在、数学の先生をされている方は高校生時代には選択だったので、勉強していない人も多いのではないでしょうか??


特に原因の確率と呼ばれる内容は、教科書には複雑に書かれています。



しかしベイズの定理 と呼ばれる方法を使えば簡単に解けますよ!



今日はもう一つ有名な数学の問題「陽性検査のパラドクス」をご紹介します。




ある感染症は1万人に1人の割合で感染しているとします。

この感染症の検査は99%の精度です。


さて、Aさんがこの感染症の検査をして「陽性」と出ました。

このときAさんが「陽性」である確率はいくらくらいでしょうか?



検査の精度が99%なのだから、99%の確率で「陽性」なのでは?と思ってしまいます。


しかし実はそうではないのです。




これはまさに「原因の確率」と呼ばれる問題です。

ですからベイズの定理を用いて、解いてみましょう。



まず


[A]陽性の人で、検査も陽性が出た人の割合は・・・・


1/10000*99/100=99/1000000


[B]陰性の人で、検査は陽性が出た人の割合は・・・・


9999/10000*1/100=9999/1000000


[C]陽性の人で、検査は陰性が出た人の割合は・・・・


1/10000*1/100=1/1000000


[D]陰性の人で、検査も陰性が出た人の割合は・・・・


9999/10000*99/100=989901/1000000



の4パターンに分けられ、それぞれの割合が求まります。



今、検査で陽性が出たので[C]と[D]が消えます。


残りの[A]、[B]の割合の比は


99/1000000 : 9999/1000000 = 1 : 101


になり、これで確率1を分けると考えると、


検査で陽性が出たのに陰性の人の確率は


101/101+1=101/102≒99%


になるのです!!!




ここから言えることは、一回「陽性」が出たからといって、本当に「陽性」かどうかはわからないということです。


感染している人の割合が低い感染症ほどこういうことが起こるのですね。




この問題がパラドクスのように思えるのは、


陽性の人⇒検査で陽性


という命題が真だとするとき、この命題の逆


検査で陽性⇒陽性の人


も同じように成り立つと思ってしまうことです。



逆は必ずしも真ではありませんので、こういう違和感を感じるのですね。