観戦記 井上尚弥vs河野公平 | ボクシング独我論~最高の技術と,戦術眼と,知識を,君に~

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試合結果:井上6回TKO勝利

 

*果敢に攻め込んだ河野。至極のテクニックを堪能すべし

 

まるで軽量級のロイ・ジョーンズ?恐るべき身体能力を誇る"怪物"井上尚弥とタフ・ボーイから全階級屈指のカウンター・パンチャーへと華麗なる転身を遂げた河野公平が争うWBOスーパーフライ級王座戦。

 

カウンターを抱えつつ前に出る脅威の能動性とボクシング力を発揮した河野を井上がフィジカル・パワーで捻じ伏せたような内容。私は河野のテクニックを高く評価しているので以下、試合を通じて印象的だった河野のスキルについてザックリと

 

1.ジャブ
肩肘、右ガードによるカバーが効いている。運動神経抜群、ムービングセンスに優れる初心者が「こんなヤツがプロなの?」てな感じでスパーに臨み不格好な先輩選手にジャブだけで小突き回されたりする。どの時代、どのジムにも変わらずこんな格好のジャブを打つ選手が存在するが相対すると意外な程隙がなく刺し合いも強かったりするんだ。そしてサークリングの内外回りの配分も素晴らしい。クロス?左フック?こう動かれるとカウンターも悩むんだわ。

 

2.右クロス
「右の威力が上がった」等陣営のコメントが出ている。実際に試合でも多用したがパンチのクオリティそのものの問題というよりポジショニングとセットアップの変化によるもの。4回終盤に見せたステップアウトしながらの右ダイレクト、多用したアウトサイドからの右ダブルと右スト、右スウィング、右ボディフックを使い分け奥足重心の相手に思い切りよく打ち込んだ。

 

3.ポジショニング
終始劣勢だったがインサイドワークでは相手より優秀だった。ステップバック、転身の瞬間、重心移動に合わせてパンチを被せ、素早く連打へ繋ぐ。コンビの序発で守らせて3打目、4打目、5打目は相手の重心とパワーハンドのタメに応じて内外へ回り、サイド高低頭を逃しつつ攻め込んだ。

 

p.s.
これだけスピードがありながら、プレッシャーがありながら、何故河野のオフェンスにカウンターが取れない?Whyが大事だ。