薬剤師のためのEBMお悩み相談所-基礎から実践まで

EBMの基礎の解説、薬剤師業務に役立つ情報の紹介、学んだ内容の共有。これらを総合して行う、薬剤師生涯学習の拠点を目指します。

EPARK「くすりの窓口」にコラム執筆中です。
執筆等の仕事のご依頼は、上記「お問い合わせ」より、お気軽にどうぞ。

テーマ:

こんにちは、黒田です。


薬局で仕事をしていると、アニオンギャップを計算することはほぼ皆無といえます。そのため、つい忘れがちになります。


こうした状況に危機感を覚えたので、評判の良い電解質・酸塩基平衡に関する参考書を購入しました。そこで、ここから学んだ要点を備忘として以下にまとめます。



 

アニオンギャップの定義

AGは、以下の式で定義されます。


AG=Na-(Cl+HCO3)


単位はmEq/Lで、正常値は12±2mEq/Lとされています。AGの増加は多くの場合代謝性アシドーシスを意味します。その他、これに関連する要点を以下に列挙しておきます。
 

 

 

  • 細胞外液の陽イオンと陰イオンは等価存在する
  • 細胞外液のほとんどはNaイオンである
  • Kイオンは3.5-5.5mEq/L存在するが、変動幅はせいぜい2mEq/L程度である
  • その他の陽イオンであるCaイオンやMgイオンは2mEq/L程度とわずかである
  • 細胞外液の陰イオンの多くはClイオンとHCO3イオンに占められ、その他のものは通常は測定されない陰イオンである
  • 「通常測定されない陰イオン」とは、アルブミンなどのタンパク・無機リン酸・乳酸などである
  • 乳酸・ケト酸・リン酸などが増加した場合、これらはHCO3を消費し且つ陰イオンを増加するので、AGは増加する
  • AGが増加しないでHCO3が低下した場合、代償的にClイオンが増加し「高Cl血性代謝性アシドーシス」となっている
  • AGが減少するケースは、①unmesured anionの減少、または②unmesured cationの増加のいすれかである
  • ①の代表例は低アルブミン血症であり、アルブミン1mg/dLの低下につきAGは2.5-3.0mEq/Lほど低下する
  • ②の代表例としては、IgG型多発性骨髄腫などがある。これはモノクローナルIgGが正に帯電していることが多いため



 

代謝性アシドーシスの原因

AGの増加はすなわち代謝性アシドーシスの存在とほぼイコールですが、逆の視点に立つと、代謝性アシドーシスがあってもAGが増加しているとは限りません。代謝性アシドーシスの原因のうち、AGが正常なものと増加するものを分けて列挙します。

 

 

 

AG正常

①HCO3の喪失

  • 下痢
  • 尿管S状結腸吻合
  • アセタゾラミド


②腎尿細管での水素イオン分泌障害

  • 近位尿細管性アシドーシス
  • 遠位尿細管性アシドーシス
  • 尿細管・腎間質の疾患
  • 低アルドステロン症


③塩酸の投与


 

 

 

AG増加


①内因性物質の蓄積

 

  • 乳酸アシドーシス
  • ケトアシドーシス (DM性・アルコール性・飢餓)
  • 尿毒症


②外因性物質の蓄積

  • メタノール
  • エチレングリコール
  • サリチル酸
  • パラアルデヒド



 

補正HCO3値

AGが増加している場合、代謝性アシドーシスの原因になっている物質のカウンターカチオン≒水素イオンによって、HCO3イオンが消費されています。したがって、血ガスの所見として得られるHCO3の値が、水素イオンによって見かけ上低下します。


そこで、AGの正常値からの増加分を、測定されたHCO3に加えることで「anion酸が増加しなかった場合のHCO3濃度」を計算上得ることができます。これを一部では「補正HCO3値」などと呼ぶようです。例えば、AGが23だった場合、正常値を12とすればその残差は11ですから、これをHCO3測定値に加える、ということです。




では、また次回に。



Reference

黒川清 水・電解質と酸塩基平衡 南江堂

 

 

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:

こんにちは、黒田です。


今回は、単純な備忘として、アメリカ皮膚科学会 (AAD) の提唱しているⅠ度熱傷の初期治療に関して、要点を以下にまとめておきます (1)。


 

---------------------

  1. 火傷した部位を冷やす:水道水または冷たく湿った圧迫物を直ちに火傷部位にあてる。これを約10分または痛みが治まるまで継続する
  2. ワセリンを1日2-3回塗布する:軟膏・歯磨き粉・バターは塗らないこと。感染の原因となり得る。抗菌外用薬も使用しないこと
  3. 滅菌済み非粘着性の包帯で患部を覆う:水疱が形成されている場合は、覆ったまま自然治癒を待つ。水疱に触らないこと
  4. OTCの鎮痛薬使用を考慮する:アセトアミノフェンまたはイブプロフェンは、鎮痛および抗炎症に役立つ
  5. 患部を太陽光から保護する:火傷が治癒したら、その部位を覆うような服を着たり、SPF30以上のサンスクリーン剤を塗布して日焼けを防ぐ。これにより、瘢痕を最小化できる

---------------------



本筋とは無関係ですが、火傷したところに歯磨き粉やバターを塗ることなんてあるのか?と疑問に思いますが・・・。アメリカの民間療法では、そうした手法がとられることが多いのでしょうか?



ちなみに、熱傷の分類についても忘れがちなので、以下にまとめておきます (2)。

 

 

---------------------

  • Ⅰ度熱傷 (EB):表皮角質層の熱傷。発赤・熱感・疼痛を認めるが、数日で治癒し瘢痕は通常残さない
  • 浅達性Ⅱ度熱傷 (SDB):表皮有棘層・基底層までの熱傷。水疱・発赤・腫脹・強い疼痛・灼熱感を認めるが、1-2週程度で治癒し、通常肥厚性瘢痕は残さない
  • 深達性Ⅱ度熱傷 (DDB):真皮乳頭層・乳頭下層までの熱傷。SDB同様に水疱を形成するが、色調が白色で貧血状を呈し、近く鈍麻を認める。2-4週程度をかけて治癒するが、肥厚性瘢痕を認めることが多い
  • Ⅲ度熱傷 (DB):皮膚全層から皮下組織におよぶ熱傷。皮膚全層に壊死が生じる。色調は白色または褐色を呈し、知覚脱失も認める。広範囲のDBでは自然治癒に非常な長期間を要するので、植皮術の適応となることが多い

---------------------



では、また次回に。

 

Reference

  1. https://www.aad.org/media/news-releases/treating-minor-burns
  2. 大谷道輝・宮地良樹 薬局で役立つ皮膚科治療薬FAQ メディカルレビュー社
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:

こんにちは、黒田です。

 

 

ここ最近、どうもバタバタしてしまい、またしても更新が滞ってしまいました。そうこうしているうちに、世間ではいろいろな出来事が話題に上がったものです。その中の一つに、某自動車メーカーによる完成検査が、定められた法規回りの基準と適合していなかった、というのがありました。

 

 

実は、といいますか、私はこの話題となったメーカーの一つが作るクルマをずっと乗り継いでいます。そうした事情もあり、今回の発表には多少なりとも感じるところがありました。もとより、昨今では企業コンプライアンスが厳しく求められるようになっていることもあり、こうした行為というか習慣というかは、褒められたことではありませんし、一定の非難には値すると考えます。

 

 

しかしながら、肝心の完成検査で定められた内容を見てみると、一見して非常に原始的であることがわかります。資料の中からいくつか抜粋すると、

 

  • ハンドルのガタツキの有無
  • 燃料漏れの有無
  • ブレーキやクラッチの踏みしろの有無
  • ミラーの損傷の有無

 

といった具合です。仮に、私のような素人が作り、それを販売に供しようと考えたなら、こうした点をいちいち規定し、チェックする必要が生じると思います。しかし、近年の自動車工場の技術水準を考慮すれば、この程度の問題は容易にクリアされているはずですし、もし製造工程に何らかの逸脱があればライン自体が止まるのが普通でしょう。となれば、完成検査の内容に、すでに時代とマッチしていない部分があるといえるのではないでしょうか。もし、実質的に意味をなしていない制度・規定などがあれば、定期的に内容を見直して、現状との整合性をとっていくことが、規制当局においては重要な役割だと思います。本件は、こうしたことを考える機会を提供してくれた、ともみなせます。

 

 

さて、前置きが長くなりましたが、このようなことはどのような業界にもあるもので、私の専門(?)である保険薬局まわりにも、おかしな制度というか決めごとがあります。今回は、その点を指摘してみます。なお、以下で述べる内容は、特定の界隈では以前からいわれていることなので、読者によってはいまさら、と感じるかもしれません。おさらい、と思っていただければ幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

薬局開設申請時に必要な器具類

薬局の開設をするには、管轄の保健所に許可申請が必要です。これは、薬局に求められる調剤・医薬品の供給といった役割をしっかり果たせるか、という点に加え潜在的に危険性の高い医薬品や薬品の管理を適切に行える体制をとっているか、その確認が必要なためです (だと思います)。 実際には、まずはもろもろの書類を作成して保健所に提出し、それらに問題がないとなったら、次に職員による薬局の現地調査 (俗に「現調」) が行われます。

 

 

このような考え方自体はよいのですが、現地調査の際にチェックされる項目の一つに、「設備器具」があります。これが、ちょっとおかしいんじゃないの?という内容なのです。具体的に必要なものを、以下に掲載します。

 

  • 液量器
  • 温度計(100度)
  • 水浴
  • 調剤台
  • 軟膏板
  • 乳鉢(散剤用のもの)
  • 乳棒
  • はかり(感度10mgのもの+感度100mgのもの)
  • ビーカー
  • ふるい器
  • へら(金属製のもの+角製またはこれに類するもの)
  • メスピペット
  • メスフラスコまたはメスシリンダー
  • 薬匙(金属製のもの+角製またはこれに類するもの)
  • ロート
  • 調剤に必要な書籍(磁気ディスクも含む)

 

まあ、「調剤台」とか「はかり」などは、調剤を行うときに必要になりますから、このあたりは分かります。ちなみに、はかりについて「感度10mgのもの」と「感度100mgのもの」があるので、2つも電子天秤が必要なのか?と感じるかもしれません。しかし、最近では感度の切り替え機能がついているものが主流ですから、実際には1つで済みます。

 

 

ところが、よくよくみると「それ薬局に本当に必要か?」といいたくなるものがちらほらと載っています。例えばメスピペット。正直、これを使うシチュエーションにはどのようなものがあるか、想像しようとしましたが、まったく浮かびません。

 

 

加えて、ロート。これはいつ使うのでしょうか?水剤を調剤するときや、散剤を瓶に詰め替えるときでしょうか?確かに、あった方が作業がはかどる局面はあるかもしれませんが、薬局に「備え付けるべき」か?と問われれば、そこまではいえないと思います。

 

 

さらに、「メスフラスコまたはメスシリンダー」。当然、液体を測りとる際に使うものです。が、薬局において液体を測る機会で圧倒的に多いのは、いうまでもなく水剤の調剤です。であれば、むしろ備え付けるべきはメートグラスではないでしょうか?少なくとも、これを押しのけてまでリストアップされていることには、大いに違和感があります。

 

 

恐ろしいことに、上記のリストの中で一つでも欠けているものがあると、現地調査に通らず、開設許可が下りません。まあ、実際には仮に不備があっても後日もう一度、という話になるのでしょうが、薬局開設後にも大量に届出や申請を行う必要がありますから、現地調査でのスケジュールの狂いは後々大きなダメージとなって跳ね返ってくる可能性があります。よって、不備だけは何としてでも避けたいところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

保険薬局の各種公費指定申請

このように、実際には必要とは到底思えない器具等を準備することが、薬局開設の段階では求められており、はっきりいって無駄だと思います。他にも、「調剤する場所の明るさは60ルクス以上」といった基準もあります。しかし、実際に照度計を使って測ってみれば分かりますが、屋内でも普通に蛍光灯をつけていれば、これを下回ることはまずありえません。というか、60ルクス未満の場所で調剤をしろ、といわれても、暗くてやりにく過ぎるので、本人が嫌になるでしょう。この辺りの基準は、そろそろ見直してもいいのではないかと考えます (実際には、器具類については平成27年に一部が見直され、ピペット台などが削除になりました。ですが、まだまだ不十分と思います)。

 

 

ここで、少し話が変わりますが、薬局開設後にもいろいろと手続きが必要だと、上で述べました。その中に、究極の無駄と表現して差し支えないと思われるものがあります。それは、各種公費指定の申請です。

 

 

前提知識のない方向けに簡単に解説すると、薬局を開設しただけでは、医療保険を使った調剤ができません。通常、皆さんが病院や薬局を利用した際の窓口支払額は、かかった総額の3割とか1割になっているはずです。俗にいう「保険がきく」というもので、これが可能なのはその医療機関や薬局が、それぞれ保険医療機関・保険薬局の指定を受けているからです。この指定には、開設とは別の手続きが必要です。

 

 

加えて、通常の保険医療の他に、「公費」という制度があります。もっとも身近なのは、子供の医療費でしょう。最近では、子供の医療費は無料になっている地方自治体がかなりあります。これは、公費によって自己負担額分がカバーされるからです。一般に、身体障害等の理由から頻繁に医療を利用しなければならない人や、特殊な病気・状態などのために医療費が超高額になる人の場合、普通に自己負担を求めると支払いが不可能になる可能性が濃厚です。こうしたケースを救済する目的で、通常の医療保険に加えて、公費によるカバーが行われるのです。

 

 

こうした公費制度ですが、これまた薬局を開設しただけでは、その薬局で公費を使った調剤を行うことはできないことがあります。別途届出を行い、対応する公費の指定薬局となる必要があるのです。そして、この届出が必要な公費の種類がかなりたくさんあるのです。ざっと思い返してみただけでも、

 

 

  • 生活保護
  • 原子爆弾被害者
  • 小児慢性疾患
  • 精神通院医療
  • 難病
  • 労災保険
  • 結核
  • 育成更生医療

 

 

といった感じです。このほかにも、国保・社保への届出や、介護保険関係の手続き、厚生局とのやり取りなど、やることが膨大にあります。実は、薬局の開設というのはかなり大変な仕事なのです。

 

 

それはさておき、上記の公費申請の問題点は、それぞれ届け出先がバラバラなことです。この理由は、管轄先が異なるからです。要するに、行政の縦割りというやつです。なかには、届け出先の住所を調べると、「これ、明らかに同一の建物だろ」と分かるようなところに、ほとんど同じ書類を2回提出しないといけない場合もあるのです (たぶん、部署が違うとかそういう理由です)!このときほど、行政の縦割りというものを憎んだことはありません。

 

 

そこで思うのですが、こうした公費の申請はなくしてしまってもよいのではないでしょうか。別に、申請に際して薬局サイドに金銭的な負担が生じるわけではありません。しかも、指定に際して管轄の役所で細かく審査がされるかといえば、そんなこともないわけで。というか、申請の際に添付する書類では、その薬局のほんの表面部分しか見えませんから、精査すること自体が不可能なのですが。だとすれば、薬局サイドからすれば指定を受けるデメリットがないわけですから、保険薬局の指定を受けた段階で、自動的に各種公費も使用できるようにした方がよいと思うのです。

 

 

ちなみに、唯一実地での調査が入る可能性があるのは、育成更生医療の指定申請の際です。これは、建前上では次のような理由によります。この公費を利用している人は、例えば車いすを使うなど、身体的なハンディキャップを有してる頻度が高めです。そのため、例えば薬局の入り口が細いらせん階段を上がった先の2階にしかない、といった場合、公費を利用する人が入ること自体が困難ですから、指定はできないよね、という話になります。要するに、薬局の構造にある程度のバリアフリー要素が求められるのです。これについては、実地で見ないと分からない部分が大ですから、育成更生医療の指定に際しては、現地調査が入ることがあります。

 

 

が、上で「ことがある」としたのは、そうでないケースがあるからです。というのも、この公費指定申請の際に必要な書類一覧をよく見ると、「所属する薬剤師会の推薦状」といったものが入っていることがあります。これは何か?それは、こういうことです。

 

 

上で述べた通り、実際には現地を見てみないと育成更生医療の指定薬局にふさわしい構造設備を有しているかは、判断ができません。真面目にこれを実施しようとすると、その都度管轄役所の職員を現地に派遣する必要があります。ところが、現実的にはそこまで手が回らない。だったら、他の機関に代行してもらえばよいだろう、という発想から、薬剤会に白羽の矢が立つのです。つまりが、第三者によるチェック機能をアウトソースしている格好です。ということは、実質的には役所によるチェックは形骸化しているのですから、やはり意味がないのではないでしょうか。そもそも、仮に変なテナントに入っている薬局が、この公費指定を受けたところで、該当する患者は初めからこうした薬局には来ないでしょうから、現実的な問題は生じないと思いますし。

 

 

今回述べたような薬局開設周りの法規・制度は、開設に要する労力やマンパワーを無駄に増大させ、結果として新規参入の障壁を高めることにつながっていると思います。意欲の高い薬剤師が、もっと簡単に薬局を作ることができるようにした方が、社会的な観点からはメリットが大きいとも思います。

 

 

 

では、また次回に。

 

 

 

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。