コロナ禍で物品販売現場の対面販売がめっきり減り、デジタル・キャッシャー導入が加速した。人件費削減や経理業務合理化に拍車がかかった。デジタル化が遅れている日本にとって、コロナ禍は良い機会だったかもしれない。しかし、高齢者を中心に弱者の孤立化が進んでいることに危機感を感じる。

 

子供だった昭和40年代を思い出すと、駅の改札には切符切りのおじさんが立っていた。毎日定刻に改札を通る通勤・通学客とは、互いに顔見知りとなり「おはようございます」と挨拶を交わす人もいた。

 

写真引用先:https://x.gd/erYfb

 

 

切符切りのおじさんは、高齢者や障がい者など介助を必要としているお客さんも知っていた。弱者を保護するための法律などなくても、自然に対応できていたのだ。

 

ところが、改札の自動化が進むと、この関係が一気に崩れてしまった。誰かがいくら払ってどこからどこまで行ったのか、そのデータは自動的に蓄積されたが、個性を持った人間とサービス提供者の絆は切れてしまったのだ。サービス提供者にとって、「客」は「物」になった。

 

コロナ禍で一気にデジタル・キャッシャー化が進んだ今日、「お客様のモノ化」がさらに進み、人間対人間の接点はいよいよ失われつつある。支払っただけの権利を求める客と、支払った範囲でのサービス提供をする販売側を機械が審査するのだ。生産者に対する感謝、購入者に対する感謝の接点などはどうでもよくなった。

 

こうなってくると、そもそも人間関係が薄い高齢者や障がい者といった弱者と社会の接点が乏しくなり、孤立による孤独死や自殺が増加する。

 

私は毎朝コンビニに朝ごはんを買いに行くのだが、デジタル・キャッシャーはスルーして馴染の店員さんがいる店に向かう。理由は、互いに交わす「おはようございます」がその日を明るくするからだ。

 

現在、銀行へ行っても区役所へ行ってもデジタル化一辺倒。マイナンバー制度も「便利」と宣伝して国が進めるが、個人主義の台頭と孤立による問題浮上は必至だ。デジタル化とヒューマン化のバランスが取れた未来志向を持つことが肝要だ。