パレスチナ・ガザ保険当局によると、イスラエル侵攻の犠牲者が3万人を超えた。犠牲者には、瓦礫に埋もれるなどして安否が確認できていない住民が含まれていない。実際の犠牲者数は遥かに多く、そのほとんどが女性や子供だという。3月1日ANNが報じた。

 

 

ブラジルのルラ大統領は2月18日、これをジェノサイドと主張。ヒットラーのナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺になぞらえて、イスラエルを非難している。2月19日テレ東が報じた。イスラエルのネタニヤフ首相は強く反発。

 

 

 

確かに、今回の紛争の引き金となった一発目は、パレスチナ・ハマスによるイスラエルへの歴史的な侵攻だった。昨年10月7日の事だ。女性を含めた多くのイスラエル市民が未だにハマスの人質になっている。一歩も譲らないイスラエルの姿勢は理解できる。「ガザの一般市民犠牲は、ハマスが彼らを盾にしているからだ」というイスラエル政府の主張も理解できなくはない。

 

しかし、リラ大統領のジェノサイド発言は、一般的な世界市民の共通通念だろう。ユダヤ教超正統派もパレスチナ支持を打ち出し、イスラエルの侵攻を非難している。米国を中心とした西欧の真意もそうなのだが、表立って同調できない事情がある。

 

米国では、ユダヤ系金融資本やハリウッドが、その資金力を背景に政府や議会に対し多大な影響力を持つことで知られている。「差別的な反ユダヤ主義を明確に否定しなかった」などとの批判から、ペンシルベニア大学の学長は辞任に追い込まれた。ハーバード大学のゲイ学長も辞任。似たような理由だ。NHKが報じている。イスラエルを批判しているというならともかく、学内の批判をとめなかったから、というのはどうだろう。教育の場における「表現の自由」を脅かすものではないか。

 

ユダヤ人(イスラエル人)は、こと国土と民族防衛については激しく反応する。ウガンダ国ネンテベ国際空港人質救出作戦は、その典型例だろう。1976年に起きたエールフランス139便ハイジャック事件だ。乗客等260人のうち非ユダヤ人は解放されたが、ユダヤ人106人が人質となった。犯人はパレスチナ解放人民戦線のメンバー等だ。

 

これに対しイスラエル国防軍の戦闘機が深夜にウガンダ領空に侵入、人質解放作戦を敢行し成功した。この攻撃の最中に作戦司令官のネタニヤフ中佐(現イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフの兄)が死亡している。DNAは受け継がれているようだ。この事件は、映画にもなっており、ウィキペディアを読むとスリリングだ。

 

ウガンダ政府は後に「主権を侵害された」としてイスラエル国防軍の攻撃に対する非難を行い、国際連合安全保障理事会の招集を要求した。しかし、アミン政権がハイジャック行為を積極的に支援していたという背景があることなどから、安全保障理事会は最終的にこの問題に対するいかなる決議をも下すことを拒絶した。またこれにより国家防衛と自国民保護における国の主権を強化する国際法上の重要な先例を確立した。

 

イスラエルは、このような国際社会の反応を読み切っていたようで、ロビー活動も行っていたと見られる。今回果たして、弟ネタニヤフ首相の読み切りが当たるかは微妙だ。

 

もともと1947年のイスラエル建国には、英米仏の思惑が見え隠れする。中東石油利権担保のため、アラブ諸国に欧米の楔を打った。そのため、イスラエルを強く非難するのが難しい。また、イスラエルにF16などの兵器を納入する米国軍事産業にとって、ロシア・ウクライナ紛争とならび好都合という実体がある。

 

しかし、「子供たちの犠牲があまりにも多すぎる」と胸の内を明かした米国ブリンケン国務長官は、イスラエル訪問何度も訪問している―BBC報道。米国もさすがにイスラエルの暴走に堪忍袋の緒が切れたと見られ、ネタニヤフ首相に休戦を促すが、複雑に絡み合った中東関係にあって、事態が進捗するか微妙な情勢だ。

 

ジェノサイドと非難されてもおかしくないイスラエルの過剰防衛は、自らが経験してきた離散と差別への復讐なのか。そうだとしたら、民族存立の基礎とするユダヤ教典戒律からの離脱になり、民族存立の根拠を失うことになると警告するユダヤ人も少なくない―殺すなかれ。

 

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