本日は、国民投票に関する問題を扱います。
今年の1月31日、イギリスは正式に欧州連合を離脱しましたが、その根拠となった国民投票については、果たしてイギリスの国民の意思を正しく反映したものといえるのか、今なお疑問符がついています。
その国民投票については、わが国にも憲法改正に関して法律が存在しますので、決して他人事とは言えません。
改憲の話題も近年、常々議論されるようになってきましたので、国民投票についても、より深い議論が交わされるようになることが予想されます。
国民投票についても、どのような裏表があるのか、考えてみてください。
問題
2016年6月、イギリスでは欧州連合からの離脱の可否を問う国民投票が行われ、その投票結果は「離脱」が「残留」を上回りました。結果が明らかになった直後に、インターネット上には、投票を終えた有権者たちによる「“欧州連合”って何?」「“欧州連合”を離脱するとどうなるの?」という書き込みがあふれたそうです。このことが示す、国民投票の課題を述べなさい。
解説
国民投票がなぜ行われるのかを考えましょう。
国民に選挙された議員からなる議会のある国は、たいていのことは議会で決定します。選挙されたことから、議員は国民の代表者であると考えられるからです。
しかしながら、議会による決定が適切でないものもあります。それは、国にとって非常に重大なこと、国民と国の関係が大きく変化するものなどです。たとえば、日本では、国と国民の関係を規定する憲法について、その改正は国民投票によるものとなります。
国の将来を左右するような重大なものについては、国民が直接投票で決めることによって、その選択が国民の意思であるものにするのです。
しかし、国民投票が国民の意思であるというためには、その議題につき、「国民が正しく知っていること」「国民が自分の考えで判断して投票したこと」が前提になります。
そうした前提がない場合、国民が自分の意思で選択した、ということはできません。
実際、イギリスの欧州連合離脱に関する国民投票は、問題文の指摘する通り、よく知らずに投票した人たちがたくさんいました。そのため、のちに欧州連合離脱のデメリットが広く伝わると、再投票を求める声も起こりました。欧州連合を離脱すると自分が困るのに、よく知らずに離脱に投票した人たちがいたことは、大いに問題になりました。
解答例
国にとって重要な選択になるにもかかわらず、その選択の内容をよく知らないまま投票する人が多数いるなどすると、投票結果を国民の選択といえない場合がある。