本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
本田と部下の前田は新事業の為に
倉持部長からリスクマネジメントの
特別講義を受けていました。
第121話:王道メニューと看板料理とは
今回も倉持部長の講義を終了した
本田承太郎と前田は次の講義までの
予定がある程度決まっていました。
本田承太郎は以前倉持が話していた
「地獄の合宿」というものの
参加日程が決まっていたので
次回の講義まで仕事をあける事に
なっていました。
本田
「前田、
留守の間に計画を進めてレポートと
資料を作成しておいて欲しい」
前田
「解りました、研修頑張って下さい」
「それと、1件予定を組んでおいた。
あるお店が短期間に売上を
アップさせた方法を学べる研修を
先方に予約しておいたので
勉強してきてくれ」
「以前行きませんでしたか?」
「前回とは違う方法だから今回も
勉強になると思う。
一人で参加して吸収してきて
報告書をあげてそこから資料を
作れるように準備しておくように」
「ちょっと一人だとプレッシャーに
なりますね」
「今までの経験があるから
前田ならやれると部長に申請したんだ
だからお前に任せるんだぞ、
しっかりやれよ」
「解りました」
こうして前田は東京都内にある
あるお店の情報を元に向かうのでした。
今回は今まで常に同席していた
本田承太郎が謎の合宿により不在で
前田一人での研修となっていたので
不安とプレッシャーを感じながら
取り組み始めました。
今回本田が前田に用意していたお店とは
「メニューを変更して売り上げ倍増したお店」
でした。
飲食店でメニューとは商品の
ラインナップで「品揃え」の事です。
この品揃えは販売効果に影響するので
重要な問題ですが個人経営のお店で
そこまで考えてメニューを作れる人は
あまりいないでしょう。
オープン前にメニューを試行錯誤する
という事はありますがそれで終わるのが
一般的です。
プロの料理人で料理長や支配人など
構成や理論を学んでいる人間が作る
メニュー構成とはやはり違うので
どうしても「無駄」が出てきます。
前田は今回メニューを切り替えて
大幅に売り上げをアップさせたお店に
研修に来ていてその手法を学ぶ為に
本田から依頼されていたのです。
前田が訪れたお店は東京都内にある
「ディアボロ」(仮)というレストラン
です。
このお店はビルインタイプの
テナント店舗で1階の敷地と周辺に
カフェスペースや駐車場もある
割と「条件の良いお店」でした。
前田が訪問して出迎えてくれたのは
店長の「峰岸」さんです。
峰岸
「前田さん初めまして、
本田さんから話は聞いていますよ。
今日はお店の休業日なので
ゆっくりしていって下さいね」
そう言うと
峰岸店長は気さくな笑顔で
美味しいエスプレッソを
いれてくれました。
前田
「ありがとうございます。
でもお休みの日に
なんか申し訳ないです。」
「構いませんよ、本田さんに
取材費はもう頂いていますから」
「あら、そうなんですか」
そう言うと峰岸店長は
お店の経緯を話し始めました。
峰岸店長は3年前にお店をオープンし
開店当初はオープン景気により
繁盛したそうですが
その後徐々に売り上げが落ちて行って
悩んでいたそうです。
もともと料理の腕があって修業を経て
開業してお店の計画も専門家に
相談しながら作ったので
「何がいけないのか解らない」
状態で悩んでいたのです。
緩やかにお客様も売上も減って行き
下げ止まった所で経営は赤字に
なっていたそうです。
もともと峰岸店長は
メニューや料理には自信があって
お店を出そうと決意したので
そのメニューを変更するまでには
時間が掛ったそうです。
「きっかけ」はお店のスタッフが
料理を食べに来てくれた時の事です。
そのスタッフの友人と気さくに話す
峰岸店長はこんな事を
聞かれたそうです。
「料理全部美味しいですね。
いつもどうやってメニューを
作ってるんですか?」
何気なく聞かれた言葉に峰岸店長は
何故か引っかかったそうです。
「そう言えば最近あまり大幅に
メニュー変更していないな…」
その業界の経験者で売れる商品や
メニューを知り尽くしているプロなら
「売れ筋商品」をメニューに
入れるのは当然でしょう。
峰岸店長は料理にも自信があったので
美味しくて自信のある王道メニューを
看板料理にしていました。
前田
「王道メニューって何ですか?」
峰岸は前田の質問に
この様に答えました。
【王道メニューと看板料理とは】
普通どんなお店にも商品の種類が
あって色んな商品に目移りします。
その中でも
「このお店に来たらこれを食べる」
という目的意識を持つ商品を作る事は
飲食店ではあたりまえなのです。
この目的意識の発生する商品が
「看板料理」です。
それから、
お店の中で一番人気のある商品が
どんなお店でもあると思います。
例えば、
「居酒屋なら枝豆」
「カレー屋ならカレー」
という皆が最もオーダーする商品です。
それが一番売り上げが上がる商品なら
そのお店の「売れ筋商品」となります。
こう言ったどこのお店に行っても
置いてある定番商品を
「王道メニュー」と言います。
前田
「人気のある商品が看板料理って事
なんですよね?
王道メニューと看板料理は同じじゃ
無いんですか?」
峰岸
「枝豆は看板料理にならないですよね?
だから、一番売れる商品と
一番売りたい商品(看板料理)は
違う場合があります」
「ナルホド、一番売りたいのが
看板料理なんですね。
じゃあ同じになる方が理想的ですよね」
「もちろんそうですが、
皆が大好きなメニューはどこのお店も
看板料理にしますよね?」
「どういう事ですか?」
「例えば、ハンバーグ専門店で
皆が大好きなデミグラスハンバーグを
看板料理にしているお店があったら
前田さんはそのお店に行きますか?」
「よっぽど美味しいなら行きますけど
ベタだな~とは思いますね」
「以前は私もこういう風に
王道のメニューを組んで看板料理に
していたんですよ」
「それの何がいけないんでしょうか?」
「ひとつは、
周りに埋もれる。
という事が言えますね」
「埋もれる?」
すると
峰岸店長は自身のお店で行っている
メニュー構成の定義を
話してくれたのでした。
つづく
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