前回までのあらすじ:
藤堂物産で働く本田承太郎はこの会社で10年働くサラリーマン。
本田承太郎は部下の前田と共に人事部部長「倉持」に呼び出され
勉強のために講義を受けある話に興味を持ちました。
第42話:社会人として最も必要とされる基本スキル
倉持の講義は経験の浅い前田にとって
噛み砕いて解り易く説明されるのでとても理解しやすい内容でした。
前田はそこまで頭の悪い人間ではありませんでしたが
倉持の100%伝えようとする姿勢に
「話を聞く体勢」が整ったのでした。
「前田さん、社会人として最も必要とされるスキルって何か解る?」
「そうですね、常識とかでしょうか?」
「そうね、常識を細かく言うとどんなものがあるのかしら」
「え~と、敬語使うとか挨拶するとか・・・・」
「そう。社会人に必要なスキルのうち最初に学ぶのが
みんな就職活動でも基本とされる礼儀の部分よね」
「でも、何故礼儀が必要なのか解るかしら?」
「それが普通だから?相手が嫌な思いをするからでしょうか?」
「そうね、では飲食店に例えて考えてみましょう。」
倉持の例えとはこういうものだった。
飲食店で礼儀というと
「いらっしゃいませ」
「かしこまりました」
「ありがとうございます」
「お待たせしました」
などの接客用語を思い出すのではないでしょうか。
でも、これはお客様に対する敬語という部分で
礼儀の一部に過ぎません。
倉持が言う飲食店でいう最大の礼儀とは
「まともな商品を提供する」という事でした。
まともな商品を提供するなんて
飲食店では当たり前じゃないか!って思いますよね。
その通り、礼儀とは当たり前のことを
当たり前にする事なのです。
つまり、飲食店においては「まともな商品を提供しないこと」が
無礼に当たるという事になります。
サービス精神や接客や雰囲気作りは
満足度を高めるために重要でこの部分を疎かにしても
無礼になってしまうかもしれませんが
商品がまともじゃないこと以上に
無礼なことはありません。
お客様に対し無礼な物言いで頑固なオヤジが
最高に美味いラーメンを作るなんて話もあります。
接客や見栄え、包装なんかも簡素で大したことないけど
美味しくて評判だから買ってしまうファーストフードなども
この例外に当たるのかもしれません。
これが「まともじゃない商品」だったなら
すぐにお店は潰れるでしょう。
だからこそ、職人さん・商品開発者たちは
日々黙々と努力を続けているのです。
店長という立場なら当然その事を深く理解して
いなければならないと倉持は言います。
最近流行りの「バイトテロ」をご存知でしょうか?
バイトテロはアルバイトが店長やほかの従業員の隙をついて
冷蔵庫に侵入している写真をスマホで撮影して
ネットにアップしたりしている事件です。
フランチャイズチェーンなどは深夜営業のお店も多く
アルバイトだけで営業が成り立っている時間帯が結構多いのです。
そして意外にも様々な危険やリスクの高い
深夜の時間帯にアルバイトが一人で営業を行うお店も
現実には比較的多く存在します。
ピザを裸の体に貼り付けてる写真
ソーセージをかじっている写真
コンビニのアイスショーケースに入る写真
数えだしたらキリがありませんが
店長がしっかりと「まともな商品を提供する」という
お客様に対しての礼儀を教えて
徹底していればこんな緩みは無かったのかもしれません。
今はそんな所から教えなくてはいけない時代だという事を
深く理解しなければならないという事なのです。
バイトテロは昔からありましたが、
最近話題になってようやく社会問題となり対処方法として
損害賠償や契約制度の見直しが話に上がるようになってきました。
こういうケースに発展させないためにも
「まともな商品を提供する」事が最低限の礼儀なのだと
忘れないで欲しいと倉持は説明しました。
「今回の話は極論かもしれないけど、
社会人として必要とされる基本スキルとして覚えておいて欲しいのは
こういう意識が必要ない体に染み付いた人間性を育てることなの。」
「それには時間もかかるし話も多くしなくてはいけない。
会社にとって損失になるとなれば切らなくてはいけない場合もある。
だからこそ私たちは初めから基本スキルが高い人を
選ばなくてはならない仕事してるのよね」
「そういう、こと学べる場所って少ないですからね」
「そう言えば、礼儀に限った話ではないけど
人間力を鍛える会っていうのがあるわよ。
噂では【地獄合宿】って呼ばれてるそうよ。
興味があったら行ってみたらどうかしら。」
この時、地獄という言葉を聞いて前田は目を逸らしたが
上司の本田承太郎は行く気満々の目で興味深々なのでした。
つづく