第9話:フランチャイズの人件費削減方法 | 本田承太郎

本田承太郎

飲食店開業を目指す為に学ぶべき知識。
スキルと資金・経験を積んで
自分の城を持つ為にやるべき10の事。

前回までのあらすじ:藤堂物産で働く本田承太郎はこの会社で10年働くサラリーマン。
本田は新しいプロジェクトの為に出向いた研修先のお店は繁盛店だが問題があった。
お店の作り方を学ぶために本田が手がけた計数管理により
お店の責任者加地店長が不正を行っていたことが発覚したのだった。


本田承太郎は加地店長の不正を許す気はなかったのだが
加地店長が発した言葉には本田も驚きを隠せなかった。

「あんたの上司に言われたとおりやっただけなんだ」


本田承太郎はいったいどういうことなのか
理解出来なかったが加地は続ける


「この会社とあんたの会社は繋がりがある、
取引や契約にはないが会社間の取引があるんだ」


「加地店長、どういう事か説明してもらえますか」

「勘弁してくれませんか、俺の権限では言えることは何もない」

「加地さんあんたどういう立場でものを言っているのか
解ってるんですか?このままでは臭い飯を食うことになるかも知れないんですよ」


本田にこう言われては加地も
知っていることを言わざるを得なかった。


「もともと、飲食店系列で知っていた本田さんの上司に
人件費の事で相談したのが始まりだったんです。

人件費が多くて赤字になるかもしれない悩みを相談すると
自分のいう事を聞けば助けてやると言われて話を聞いたんです。

その内容は、
研修受け持ち店舗として会社にお店を紹介してやると言うことでした。
自分のお店で勉強させて働かせ、ノウハウ提供代金を貰いながら
更に人件費も削れるので利益が出るというものだったのです。」


「その上司というのは誰のことを言ってるんだ?」
「・・・・」

「まさか藤森のことか?」
「・・・・」


「やっぱりそうなんだな、一体どこで繋がっていたんだ!?」

本田はここで自分の新しい上司である
藤森の不正関与という現実をやっと理解したのでした。


そして、上司の藤森や加地店長が自分が帳簿に関与することを
避けようと動いていたのはこういう理由があったからだと理解しました。


そもそもフランチャイズの本部などでは行っている
人件費削減と利益獲得の手法ですが個人で人選することは出来ないので
こんな不正は繋がりがないと出来ません。


本田承太郎の新しい上司である藤森はいろいろと
対立もしているがこういう不正を行う人物だったとは
本田自身も信じたくない想いで怒りが収まりませんでした。


本田はこの加地店長も許せないと思いましたが、
それ以上に本田自身の部下である山本を藤森によって
クビにされている経緯がある。

当然藤森に対して倍返しを狙う絶好の機会でもあると思いました。


「しかし証拠がない・・・」

ここで本田はある決断をしました。
許せないと思って憤慨した、この加地店長を訴えることなく
そのままにしようということです。


当然その見返りで藤森の情報や
今後動かせる外部の人間として大きな弱みを握った「コマ」を
確保したことになるからです。


「俺もこんな事は不本意だが加地さん、
あんたにはこのままこの会社に残ってもらう。
当然今回の不正を許したわけではないが、
今度は俺のために動いてもらうぞ。」

この事を少しでも他言すれば家族を泣かせることになる。
そう理解した加地は素直に本田に従うことになった。


本田承太郎としては、
不正を嫌い道を正す事が本分だと思ったが
権力があるからといって筋の通らない事がまかり通るこの会社や

自分の会社の上司を許せない気持ちの方が強く、
これからは自分も権力争いに身を投じて力を付けなければ
弱い立場では何も出来ない事を感じていました。

そして、
目的の為に自分は鬼になる。

という事を本田承太郎は決意したのでした。


今回、こういう事件があったが本田が明るみにしなかったので
研修は滞りなく終了して本社へ戻る日がやってきました。


そこで、
本田は今後の研修先に出る前にある人物に相談を持ちかけようと思いました。

それは
同期入社で同じ会社で働く同僚で、役職も同じ位置にいる
事業部の課長片岡という男でした。


この片岡という男はお世辞にも良い人とは言えない
独特の人間で会社でも異彩を放つ人間だったのです。


つづく