先月の21日に発売したアルバムは、クラシックホールを貸し切って、ステージにコンデンサーマイクを立て、そのマイクに向かって全員で一気に歌うという一発録音で作りました。

このスタイルにこだわったのは実はコーラス界の大先輩、ボニージャックスさんの影響がとても大きいんです。


昨年僕たちが十周年を記念して出したベストアルバム、

「ありがとうでつながろう」

にはスペシャルゲストとして、宮沢和史さんとボニージャックスさんを迎えました。


そのボニージャックスさんの声を録らして頂いた時のこと。


始めは最近の主流である、それぞれの声をそれぞれのマイクで録った後に機械上で混ぜる方法で録りました。


しかし、どうもしっくりとこない。

あの身体も心も真から震えるボニーさんのハーモニーにならない。


エンジニアと二人、頭を悩ませていたところ、当のボニーさんから提案が。それが


「マイク一本立ててそれを囲む形で録らしてもらっていいかな?」


というもの。

この方法は実はレコーディングの後処理の段階で色々な制限が発生することもあり、最近はあまり取られることが少ない方法なのですが、ものは試しにとそのセッティングで録り直したところ、僕とエンジニアは思わず耳を疑いました。


先程引っかかっていた問題が全て解決されている!

むしろ、ボニージャックスのハーモニーはこうでなければ!

そんな音がスタジオのスピーカーから流れたのでした。


でも、それもそのはず。

この方法はボニージャックスさんが長年歌って来たスタイルそのもの。

「昔はこの方法でしか録りようが無かったんだよ」

という言葉も感慨深い。



そして、レコーディング技術が進んだ現在でも、この方法は実はコーラスを、特にアカペラコーラスを録音するのに最も適している方法なのではないかと思ったんです。



ハーモニーを、ハーモニーが震わすその場の空気の震えごと録る。

このコーラスレコーディングのオールドスタイルとも言える方法で録ったものを、最新のスタジオ設備でCDに落とし込む、これが今回のアルバム制作の大きなコンセプトのうちの一つでした。


そんなこともあり、先日取材を受けた中日新聞の記者さんの

「ライブ盤の様でもありますが、でも音はとてもしっかりと作り込まれてますよね?」

という言葉がとても嬉しかったりしました。


そんなこだわりも含め、今回のINSPiのニューアルバム「日本のココロ歌」を改めてじっくりと聴いてもらえると、とても嬉しいです!


伸二