有機溶剤中毒予防規則に続き、今後、しばらくは特定化学物質障害予防規則(特化則)を読むこととする。
1 目的、対象物質
この規則には冒頭に目的規定的な条文がある。
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(事業者の責務)
第一条 事業者は、化学物質による労働者のがん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害を予防するため、使用する物質の毒性の確認、代替物の使用、作業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備、健康管理の徹底その他必要な措置を講じ、もつて、労働者の危険の防止の趣旨に反しない限りで、化学物質にばく露される労働者の人数並びに労働者がばく露される期間及び程度を最小限度にするよう努めなければならない。
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ここにもあるとおり、基本的な目的は、労働者の
「がん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害」
の発生を予防すること、これである。
よって、規制の対象物質はこれらの健康障害を引き起こす恐れのある物質ということになる。
対象物質の概要は以下のとおり。
① 第1類物質
がん等の慢性障害を引き起こす物質のうち、特に有害性が高く、製造工程で特
に厳重な管理(製造許可)を必要とするもの
② 第2類物質
がん等の慢性障害を引き起こす物質のうち、第1類物質に該当しないもの
③ 第3類物質
大量漏えいにより急性中毒を引き起こす物質
また、第1類物質と第2類物質のうち、がん原性物質またはその疑いのある物質については「特別管理物質」としており、名称、注意事項などの掲示(特化則38条の3)や、空気中濃度の測定結果と労働者の作業や健康診断の記録を30年間保存すること(特化則38条の4)が求められている。
その具体的な物質の内容については労働安全衛生法施行令別表第3に定めがある。
そこでは、第2類物質の37と第3類物質の9に、「…までに揚げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの」という規定があり、これだけではよくわからない。
そこで、厚生労働省令である特化則の第2条を見ると、以下のような規定がある。
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第2項 令別表第三第二号37の厚生労働省令で定める物は、別表第一に掲げる物とする。
第3項 令別表第三第三号9の厚生労働省令で定める物は、別表第二に掲げる物とする。
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特化則の別表第一と第二を見ると、第2類物質の1から36まで及び、第3類物質の1から8までの物質を含有する製剤その他の物で、その物質の含有量が重量の1パーセント(一部5パーセント)以下のものを除く、という内容になっていることが分かる。
要するに、令別表第3にあげられている物質そのものと、その物質が重量の1パーセントなど、所定のパーセント以上含まれている製品等が規制対象物質になるという訳である。