『ローズマリーの赤ちゃん』は、ロマン・ポランスキー監督のハリウッド進出第一作で、オカルト映画ブームの走りとなった作品である。
自分の赤ちゃんが悪魔教徒に狙われているのでは、と不安になる妊婦のローズマリーをミア・ファローが見事に演じている。ポランスキーの演出によって、映画の観客は本当に危険が迫っているのか、それともローズマリーの妄想なのか分からなくなる。
ミア自身も複雑な家庭で育った精神が不安定な女性だった。私生活では、夫のフランク・シナトラの反対を押し切ってこの映画に出演したため、シナトラから離婚届にサインするように要求される。結局、二人はこの映画の撮影後に離婚している。
もともと『ローズマリーの赤ちゃん』は小説として出版されていた。そして映画化に際して、『反撥』で不安をかかえる女性を描いたポランスキーが抜擢される。
ポランスキーの演出は強烈で、ミアに車が行きかう道路を渡らせ、危険だと撮影を拒否するスタッフに代わって、ポランスキー自身がミアの後について手持ちカメラで撮影している。さらには自分のイメージにこだわって何度もテイクを重ね、自身も映画監督で即興演技を好む夫役のジョン・カサヴェテスと激しく対立する。
映画は1968年に公開されて大ヒットとなるが、ポランスキーは翌年、妊娠していた妻のシャロン・テートを、チャールズ・マンソン率いるカルト集団のメンバーに惨殺されてしまう。
ポランスキーは『反撥』を撮った理由を、自分自身が精神異常者ではないかと疑っていたからだと語っている。そして『ローズマリーの赤ちゃん』を経て、妄想三部作の最後として、ポランスキー自身が主演の『テナント/恐怖を借りた男』(1976年)を撮るのである。





