強直性脊椎炎とは、痛みがつきものであり、この疾患の患者であれば、痛みがなくなれば何よりと思うのは当然のことでしょう。

昔は、最大限に非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)やサラゾピリンなどの抗リウマチ薬が使用される程度でしたが、近年では生物学的製剤や経口ジャック阻害薬なども登場し、選択肢が増えています。

CRPが高い場合、上記の製剤を使用する価値があるでしょうか。一方で、強直性脊椎炎の専門家の中には、これらの治療法では病気を完全に抑制できないと主張する人もいます。

しかし、CRPが下がることによって痛みが軽減されるため、患者にとっては大きな救いとなります。ただし、バンブースパイン(背骨の強直)は避けられないという見方もあります。

また、例えば股関節の痛みが強い場合には、人工関節置換手術によって痛みを軽減することができます。人工股関節の技術も進歩しており、前方からの切開を行う最小侵襲手術法(MIS)では脱臼のリスクが少なく、手術後の回復も早いとされています。

痛みから解放されて、自由に歩けるようになることは確かに重要です。背骨の可動域を股関節で補うことは、強直性脊椎炎患者の体幹の動きに制限を与えるため、股関節の問題があれば早急に手術を検討すべきだという整形外科医の意見もあります。

ただし、私は炎症が強い場合には手術を行わない方が良いと感じています。炎症が強い状態で人工関節を挿入すると、生体反応が起きる可能性があるためです。手術を行う場合は、CRPが落ち着いた状態で、60歳以上の患者を対象にするべきだと思います。

その他にも、生物学的製剤やジャック阻害薬は元々リウマチの治療に使用される薬であり、その応用範囲は強直性脊椎炎の治療にも大きな役割を果たすことがあります。

実際にリウマチでは、さまざまな生物学的製剤やジャック阻害薬が多くの選択肢として存在していますが、強直性脊椎炎ではそれほど多くの選択肢が利用されていません。

しかし、地域のリウマチ内科クリニックの方が応用力があると思われます。実際に、適応外のジャック阻害薬を強直性脊椎炎の治療に使用し、効果を上げているクリニックも少なくありません。

そのため、大学病院の整形外科やリウマチ科よりも、応用力のあるクリニックを選ぶことが必要ではないでしょうか。

言い方をかえると、専門家を自称する医師ほど、色々なしがらみで、応用的治療が出来にくいということ事実です。

新薬ができても、開業医の採用が一番先で、後から大学病院、大病院へと使われるドラッグラグも見逃せません。

強直性脊椎炎の治療に、選択出来る薬も、巷のクリニックの方がどれだけ、多いかを考えると、どうぞ若年者の患者は、賢者の選択をしてもらいたいと願うばかりです。