低線量の放射線被曝でも循環器系死亡リスクが上昇
2010.2.1 BMJ誌から貼り付けします。
「低線量の放射線被曝でも循環器系死亡リスクが上昇」
原爆被曝生存者を50年以上追跡した研究の結果
(転載貼り付け開始)
広島と長崎で被曝した人々を50年以上追跡した研究で、低線量(0.5~2 Gy)の放射線被曝であっても、脳卒中と心疾患による死亡リスクが高まることが明らかになった。放射線影響研究所の清水由紀子氏らが、BMJ誌電子版に2010年1月14日に報告した。
CTを用いた頭部や胸部の検査、放射線治療などが広く適用されている現状を考えると、1 Gy未満の低線量被曝が脳卒中や心疾患のリスクを高めるかどうかを明らかにすることは、公衆衛生上重要だ。
これまでに、低線量の医療被曝、職業被曝、環境被曝が脳卒中または心疾患による死亡を増やすことを示唆した研究はあるが、これを否定する報告もあった。そこで著者らは、原爆被曝生存者を1950年から追跡しているLife Span Studyコホートを対象に、心疾患と脳卒中による死亡のリスクに低線量被曝が及ぼす影響を明らかにしようと考えた。
Life Span Studyコホートに属する8万6611人については被曝線量が推定されており、これらの人々を、重み付けした結腸線量(Gy)に基づいて層別化した。被曝線量は0 Gyから3 Gy未満で、0.2Gy未満が86%を占めていた。
1978年には、社会人口学的情報(学歴、職業)、ライフスタイルに関する情報(喫煙、飲酒)、健康状態に関する情報(肥満、糖尿病)といった共変数に関する調査が実施された。郵送による調査に回答したのは3万6468人だった。
主要アウトカム評価指標は、脳卒中または心疾患による死亡と、被曝線量の間の線量反応関係に設定。先にこのコホートの癌による死亡と線量の関係を評価したときと同様の方法で分析した。
2003年までの53年間に、循環器疾患で1万9054人が死亡していた。9622人が脳卒中、8463人が心疾患で死亡しており、969人はその他の循環器疾患による死亡だった。
直線的な線量反応モデルを用いた場合の1 Gy当たりの循環器疾患死亡の過剰相対リスクは、11%(95%信頼区間5-17%、p<0.001)となった。このコホートの被曝に起因する循環器疾患過剰死亡は約210人と推定された。
脳卒中死亡については、線型モデルを用いると1 Gy当たりの過剰相対リスクは9%(95%信頼区間1-17%、p=0.02)となった。しかし、線形二次モデルの方がよくフィットし、低線量のリスクは有意にならなかった。推定閾値は0.5 Gyで、95%信頼区間の上限は約2 Gyだった。
心疾患死亡では、1 Gy当たりの過剰相対リスクは14%(6-23%、p<0.001)。0~0.5 Gyでは線量反応関係は有意にならなかったが、線型モデルが最もよくフィットすることから、過剰リスクは低線量でも見られると考えられた。推定閾値は0 Gy、95%信頼区間の上限は約0.5 Gyだった。
被曝による脳卒中死亡リスク、心疾患死亡リスクに影響を及ぼす共変数を探すために、必要な情報が得られた5万1965人について分析した。脳卒中または心疾患の危険因子であることが知られている喫煙、飲酒、学歴、職業、肥満、糖尿病などで調整した過剰相対リスクと未調整の過剰相対リスクを比較したが、結果に有意な変化は見られなかった。したがって、通常の危険因子では説明できない、被曝によるリスク上昇が存在すると考えられた。
1950~1985年に循環器疾患によって死亡した1900人について剖検データを入手し、剖検結果を基に死因判定が正確だったかどうかを調べたところ、判定精度はかなり高かったことが確認された。
また、癌に対する化学療法の心臓毒性や癌に対する放射線治療の影響によって、本来は癌死亡であった患者を被曝による循環器疾患死亡と見なしている可能性もあると考えた著者らは、癌と診断されていた死者を除外して、脳卒中、心疾患による死亡リスクと線量の関係を評価した。
(転載貼り付け終わり)