この動画、良かった。
話し手は吉田猛々さん。この方の話は面白い。
1話目はかなりエグい話なので動画を見るなら12:40から見た方がいいと思う。
特に面白かったのは2話目の「座(くら)」と最後の島田秀平さんのお話。
座(くら)
お話の主人公はAさん。
このAさんが小学校1年生だった時のお話です。
Aさんのおうちは東北にあり、安土桃山時代から続く古い家系だったそうな。
近くに神社があり、11月の終わりになると秋祭りというのがあった。
この秋祭りでは1つの家が選ばれて、神様を接待するという風習があったという。
ある年のこと。
神様の接待役にAさんのおうちが選ばれた。
20畳敷きの和室に座( くら )と呼ばれる神様の座る場所を設け、その前に朱色のお膳を据えてズラリとご馳走を並べたり御神酒を供えたりする。
その隣の和室には依子( よりこ )と呼ばれる子供が12時間ほど待機する。
むろんお腹が空いたとしても神様のお膳に手をつけてはならない。
ところがAさんは我慢できそうもないので、あらかじめカステラをラップに包んで、
着物の袂に忍ばせておいた。
さて当日。
神様を呼ぶ準備が整った。
20畳敷きの和室に座( くら )が設けられ、その前にお膳が置かれた。
Aさんが隣の和室に入ったのは夕方のことである。
大人たちも退室してしばらく過ぎた頃、
Aさんはお腹が空いたので持って来たカステラを1つ取り出して食べた。
全部食べてしまうと食べるものか無くなるのでそれは取っておくことにしたのだが、
まだお腹が空いている。
どうしよう……
襖を開けて隣の和室を覗くと、神様のお膳がある。
Aさんはそろりそろりとお膳に近づいていった。
美味しそうなご馳走を見て、ついそれをつまんでしまった。
美味しい!
もうちょっと。もうちょっと。
氣づくとお椀の半分くらいを食べてしまった。
咄嗟にAさんは思った。
どうしよう。このままだと叱られる。
隣の和室に戻り、横になると、お腹がいっぱいだったのでつい眠ってしまった。
ところが、である。
ふいに目が覚めてしまった。
あきらかに部屋の空氣が変わったのである。
ピンと張り詰めたような厳かな空氣。
何だろうこれ……
思っていると、いきなりグイと体を起こされた。
そして胸ぐらを掴まれたように引っ張られ、
神様のお膳がある所まで連れて行かれたと思うと土下座をするような体勢になった。
体は思うように動けない。
辺りには白檀のような香りが立ち込め、しかもただならぬ空氣が漂っている。
そしてふと氣づくと黒い靴を履いた足が目の先にあった。
あきらかに男性の足である。
自分の目の前に誰かが立っている。
けれども顔を上げることが出来ない。
しかも相手は何を言っているのか分からないが滅茶苦茶怒っているようである。
ど、どうしよう……わたし、悪いことをしたから。
この時、Aさんはそれが神様だと分かったのかも知れない。
すると急に空氣が和らぎ、花のような香りがして複数の人が入って来る氣配がした。
やがて複数の女性の声がして怒っている男の神様を諌めてくれているようだった。
その時、ふっとAさんの頭を女性の手が撫でてくれた。
Aさんは自分が許されたような氣がして思わず泣いてしまった。
そして、
ごめんなさい……ごめんなさい……
そういう氣持ちが溢れて来て、残っていたカステラを手の平に乗せると、
下を向いたままそっと差し出した。
それを男の神様が受け取って、ムシャムシャと食べる咀嚼音が聞こえた。
すると、
「ハッハッハッ」と笑い声が響いて、
「よきかな」
一言、男の神様の声が聞こえたそうな。
( 中略 )
翌朝、神様のお膳に手をつけたことが大人にバレて、Aさんは叱られたが、
お膳の脇に落ちていたカステラを包んでいたラップを神職が見つけて一言、
「お氣に召されたようですね」
と言ったそうな。
それから秋祭りの神様のお膳にはカステラが供えられるようになったという。
きっと神様はカステラが美味しくて喜んでくれたのだろうね。
子供は神様に失礼なことをしてしまったけれど、心から「ごめんなさい」と謝ったし女の神様たちが庇ってくれたから許してもらえたのかも知れない。
何とも言えず不思議なお話でした。