このコーナーでは、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、苦悩している飲食ビジネス関連者へ少しでもお役に立ちたいと考え、今回で40回の連載を発信している。日々感染者が減少しているこの頃だが、気を緩めずにもう少し頑張ろう。このコラムは、自著「繁盛百科・成功するための開業種選び!」の中から、章末に掲載している一文を紹介している。何らかのヒントやキーワードになれば何よりである。

 

 4、「釣り」

 私は、凝り性で気が多いことから、人よりも道楽が多い。この数年間は、仕事に追われてその余裕もないが、クラッシックギター演奏に始まり、盆栽、書、車、仏像彫刻など、このすべてが中途半端だが、あらゆるものへ興味を抱いてしまう性分なのである。

 

 その道楽の一つに「魚釣り」がある。これも、発端は胃潰瘍で医者から手術を言い渡され、手術二日前に病院から逃げ出したときに、担当医から「お前の手術はもうしてやらん!釣りでもして神経を休ませろ!」と言われ、それから始めたものである。当時は東京中野区在住であったことから、海釣りには行けない。仕方なく、ヘラブナ釣りを始めた。それでも最初は釣り堀から始めたのだが、やがて、相模湖、津久井湖などへ出かけ、休日のほとんどを釣りで費やすまで凝ってしまった。ここでは、釣り竿に凝ってしまい、「紅雀」や「石舟斎」など、数百万円もする名竿まで揃えてしまうなどであった。

 

 その後、仕事の関係で銚子沖と鹿島灘に近いところへ引っ越したことから、獲物はヘラブナから海水魚へ変わった。店の休日は、乗合船に乗り、根魚(メバルやカサゴ、ヒラメ、アイナメ、ソイ、メヌケ)などを釣る。投げ釣りでは、イシモチやカレイ、スズキなど。とくに、銚子沖から北の海魚は、その魚の美味しさが違うので、釣果が楽しみになってしまった。

 

 やがて、この海釣り道楽が経営に役立つことに気づいた。海は釣り堀と異なり、魚の存在を確認できない。したがって、天気や気温、海水温、そして釣り場のポイントなど、これらのすべてが、ビジネスで言う「マーケティング」となる。そして、その対象魚「ターゲット」へ投じる餌「店の付加価値」、ポイントへ餌を投げ込む技術「商品力、接客力、店舗力」(Q・S・C)、まさに魚釣りは、フードビジネスの教本的ノウハウが必要だったのである。

 

 こうして、道楽も凝りすぎるのは問題だが、そこからビジネスの何かを学べることができればそれはそれなりに良いことだと考える。例えば、人生をマラソンと例えると、42.195キロメートルを走るための目標を定め、乾燥するための戦略を練るのと同じである。

 

 今回は、自分の道楽からの気づきを紹介した。皆さんにも何らかの趣味や道楽があるであろう。そんな中にも飲食店経営のヒントやキーワードが隠されていることに気づくべきである。

 

次回は、「ギターを弾きながら!」をお届けする。