| 【一本刀土俵入り】 |
| 長谷川伸さんの代表的な戯曲の一つで、歌舞伎や新劇・新国劇、映画、テレビドラマ、浪曲、講談などで上演去れ続けて来ました。 |
それだけに良く出来たお話でして、一本刀土俵入りはざっとこんなお話です。
大利根川に沿って茨城県に取手と言う名前の宿場町があります。
そしてここに安孫子屋と言う酒も飲ませる食事もさせる、
そしてちょっと、首の辺りにおしろいを塗った女が、
お金さえ払えば相手にしてくれると言う所なんです。そういうお店が宿場町には並んでいます。
その内の一軒、安孫子屋に居るお蔦と言う女が美人で人気があり繁盛してました。
そのお蔦が酔っ払って今2階の窓を開け、なんの騒ぎだろうと手すりにもたれて見下ろしますと、
目の前がづっと街道になってましてそこを、
弥八と言う男が出刃包丁を持って酔っ払って大暴れをしているんです。
旅人はみんな蜘蛛の子を散らすように逃げ散って行きました。
そこへフラフラフラーッとよろめきながら一人の、
もう髪の毛ざんばら乾き上がって砂埃かぶって顔も真っ黒、手足も真っ黒
それはそれは、こ汚いお相撲さんがやって来るんです。
これがよろよろっと道の右へ左へよろけながら歩いているんです。
これに、この酔っ払っているやくざの舟戸の弥八が、
「邪魔だードケー」と出刃包丁持って突っ掛かって行くんです。
と、これをよろろよのお相撲さんがやっとの思いで右に左にかわしたかと思うと、
いよいよかわしきれない時に、上半身をグゥーッとかがめたかと思うと、
正面から突っ掛かって来る弥八の腹へ頭でドウォーンと頭突きを喰らわすんです。
これで弥八がひっくり返ったんで、ますます怒るんです。
出刃包丁を振りかざした時、頭の上から水が降って来るんです。
パッと見上げると、安孫子屋のお蔦が、
「よしなよ、馬鹿な真似は。今ねぇ、お前の親分さんが私んちの家の部屋に遊びに来てるんだよ。
言いつけてやろうか」てな事言うので弥八がほうほうのていで逃げて行きます。
そしてここに安孫子屋と言う酒も飲ませる食事もさせる、
そしてちょっと、首の辺りにおしろいを塗った女が、
お金さえ払えば相手にしてくれると言う所なんです。そういうお店が宿場町には並んでいます。
その内の一軒、安孫子屋に居るお蔦と言う女が美人で人気があり繁盛してました。
そのお蔦が酔っ払って今2階の窓を開け、なんの騒ぎだろうと手すりにもたれて見下ろしますと、
目の前がづっと街道になってましてそこを、
弥八と言う男が出刃包丁を持って酔っ払って大暴れをしているんです。
旅人はみんな蜘蛛の子を散らすように逃げ散って行きました。
そこへフラフラフラーッとよろめきながら一人の、
もう髪の毛ざんばら乾き上がって砂埃かぶって顔も真っ黒、手足も真っ黒
それはそれは、こ汚いお相撲さんがやって来るんです。
これがよろよろっと道の右へ左へよろけながら歩いているんです。
これに、この酔っ払っているやくざの舟戸の弥八が、
「邪魔だードケー」と出刃包丁持って突っ掛かって行くんです。
と、これをよろろよのお相撲さんがやっとの思いで右に左にかわしたかと思うと、
いよいよかわしきれない時に、上半身をグゥーッとかがめたかと思うと、
正面から突っ掛かって来る弥八の腹へ頭でドウォーンと頭突きを喰らわすんです。
これで弥八がひっくり返ったんで、ますます怒るんです。
出刃包丁を振りかざした時、頭の上から水が降って来るんです。
パッと見上げると、安孫子屋のお蔦が、
「よしなよ、馬鹿な真似は。今ねぇ、お前の親分さんが私んちの家の部屋に遊びに来てるんだよ。
言いつけてやろうか」てな事言うので弥八がほうほうのていで逃げて行きます。
人通りの絶えた寂しい街道に安孫子屋の2階から見下ろすお蔦と、
道から2階のお蔦を見上げる相撲取りの二人だけ…
道から2階のお蔦を見上げる相撲取りの二人だけ…
「お相撲さん、どうしてそんなにふらふら歩いているんだい?」
「腹の具合が悪いんですよ。」
「あぁ、食べ過ぎかい?」
「あいやぁ、食べなさすぎなんです。巡業先で首になって、三日間飲まず食わずで歩いているんです。」と言いながらふらふらしています。
お蔦は酔っ払っています。
「可哀想だねぇ」その故郷を聞いて、
「故郷、駒形と言う所なんで、おらぁ駒形茂兵衛と名乗って、横綱の土俵入りがしてみてえと思ったが、もう駄目だぁ。」と言うんです。
あんまり可愛そうなのでお蔦が2階から、現金と
「これも持ってお行き、アッこれも持ってお行き」と、
自分のべっ甲のくし・かんざし、こうがい全部、しごきにくるくると巻いて、
2階から垂らしてやるんです。
これを受け取って、駒形茂兵衛と言う相撲取りが、
「ありがとござんす、ありがとござんす」と、
一歩あるいて振り返り、三歩あるいて振り返り、10歩あるいて振り返り…
しまいにお蔦が「もういいから、お行きよ」と、
「そんなに頭下げなくっていいんだよぉ。」
「(立派な横綱になっておくれ…)よっ!駒形。日本一、土俵入りー、コマガター」と、
酔っ払っているお蔦が言います。
何重編と頭を下げて、立ち去る駒形茂兵衛です。
「腹の具合が悪いんですよ。」
「あぁ、食べ過ぎかい?」
「あいやぁ、食べなさすぎなんです。巡業先で首になって、三日間飲まず食わずで歩いているんです。」と言いながらふらふらしています。
お蔦は酔っ払っています。
「可哀想だねぇ」その故郷を聞いて、
「故郷、駒形と言う所なんで、おらぁ駒形茂兵衛と名乗って、横綱の土俵入りがしてみてえと思ったが、もう駄目だぁ。」と言うんです。
あんまり可愛そうなのでお蔦が2階から、現金と
「これも持ってお行き、アッこれも持ってお行き」と、
自分のべっ甲のくし・かんざし、こうがい全部、しごきにくるくると巻いて、
2階から垂らしてやるんです。
これを受け取って、駒形茂兵衛と言う相撲取りが、
「ありがとござんす、ありがとござんす」と、
一歩あるいて振り返り、三歩あるいて振り返り、10歩あるいて振り返り…
しまいにお蔦が「もういいから、お行きよ」と、
「そんなに頭下げなくっていいんだよぉ。」
「(立派な横綱になっておくれ…)よっ!駒形。日本一、土俵入りー、コマガター」と、
酔っ払っているお蔦が言います。
何重編と頭を下げて、立ち去る駒形茂兵衛です。
利根川の渡しに来た駒形茂兵衛はお蔦に貰った金で腹ごしらえをし、
そこへ弥八が仕返しにくるが、腹ごしらえの出来た相撲取り、
こともなくやっつけます。そこで子守女からお蔦が父なし子を産んだと聞かされる。
そこへ弥八が仕返しにくるが、腹ごしらえの出来た相撲取り、
こともなくやっつけます。そこで子守女からお蔦が父なし子を産んだと聞かされる。
で、それから10年経ちました。
水も滴る様ないなせな旅人やくざ、三度笠に縞の合羽をまとめて肩に掛け登場する駒形茂兵衛。
すっかり相撲道を捨てた茂兵衛は渡世人となっていた。
お蔦を捜し利根川沿いまで来た駒形茂兵衛、
これいきなり5~6人のやくざが飛びかかって来て「あっ!人ちげえーだ、すまねぇ」
と走り去ろうとするのを、バン、バン、バァーンと叩き伏せて、
「何が人ちげえーだ。謝っただけで済むと思ってるのかい?どう言う事情があるんでぃ。」
と聞くとこの辺りに昔、だしぼりの辰三郎と言う男が住んでいて、
いかさまのばくちの名人で、特にいかさまのサイコロを作るのがうまかった。
まずい事があって、女房子供を残して他国にとんずらしていたのが、
久しぶりに戻って来てまたいかさまのサイコロを使ったらしい。
そして姿を消したのを、今やくざ達が追いかけている。
「あぁ、そんな話かい、どうでもいいよ俺にとっちゃぁ。行きな!」といって、
そのやくざ達をやり過ごして、
焚火のそばで大工さんが船を造っている所まで行き、
小腰をかがめて「つかぬ事をお聞きしますが…、今から10年前この辺にお蔦さんと言う綺麗な女の人がいたはずなんですが・・・今どこでどうしていなさるか…ご存じの方おりやせんか」と聞きます。
「俺たちもずいぶん遊んだが…お蔦?そんな女いたっけなぁ~」と誰も知らない。
で、諦めてズゥーッとその辺りを捜してみると、
10年前くし・こうがい、かんざしぐるみ、現金をくれたお蔦が酔っ払って唄ったあの歌が、
幼い女の子の声で聞こえてきます。
で、その家の中に近づいて行ってガラっと開けようとすると、
家の中に船印彫(だしぼり)師辰三郎と女房と幼い子供がいるんです。
なかなか開けてくれない、
「決して怪しいもんじゃござんせん。10年前に受けた御恩を返しにやって参りました。」と言うので開けました。
「覚えていらっしゃいませんでしょうか…」
10年前これこれしかじかこんな風に助けて頂いた、あの時の…貧しい相撲取り…相撲にならずやくざになって戻ってみればこの始末…あとはあっしにお任せ下さい。ここにお礼にと思って兼ねて用意していた大金が御座います。これ持って一足早くお逃げなさんせ。」
「まぁどこのどなたか存じ上げませんが、酔っ払ってわずかばかりの事をした…それだけにこんなに有難がって頂くとは…ではご遠慮なしこのお金を頂戴し逃げます。」
――娘に母親が教えた歌を唄っていたのをきっかけで巡り合う。
お蔦はまったく覚えていない。
水も滴る様ないなせな旅人やくざ、三度笠に縞の合羽をまとめて肩に掛け登場する駒形茂兵衛。
すっかり相撲道を捨てた茂兵衛は渡世人となっていた。
お蔦を捜し利根川沿いまで来た駒形茂兵衛、
これいきなり5~6人のやくざが飛びかかって来て「あっ!人ちげえーだ、すまねぇ」
と走り去ろうとするのを、バン、バン、バァーンと叩き伏せて、
「何が人ちげえーだ。謝っただけで済むと思ってるのかい?どう言う事情があるんでぃ。」
と聞くとこの辺りに昔、だしぼりの辰三郎と言う男が住んでいて、
いかさまのばくちの名人で、特にいかさまのサイコロを作るのがうまかった。
まずい事があって、女房子供を残して他国にとんずらしていたのが、
久しぶりに戻って来てまたいかさまのサイコロを使ったらしい。
そして姿を消したのを、今やくざ達が追いかけている。
「あぁ、そんな話かい、どうでもいいよ俺にとっちゃぁ。行きな!」といって、
そのやくざ達をやり過ごして、
焚火のそばで大工さんが船を造っている所まで行き、
小腰をかがめて「つかぬ事をお聞きしますが…、今から10年前この辺にお蔦さんと言う綺麗な女の人がいたはずなんですが・・・今どこでどうしていなさるか…ご存じの方おりやせんか」と聞きます。
「俺たちもずいぶん遊んだが…お蔦?そんな女いたっけなぁ~」と誰も知らない。
で、諦めてズゥーッとその辺りを捜してみると、
10年前くし・こうがい、かんざしぐるみ、現金をくれたお蔦が酔っ払って唄ったあの歌が、
幼い女の子の声で聞こえてきます。
で、その家の中に近づいて行ってガラっと開けようとすると、
家の中に船印彫(だしぼり)師辰三郎と女房と幼い子供がいるんです。
なかなか開けてくれない、
「決して怪しいもんじゃござんせん。10年前に受けた御恩を返しにやって参りました。」と言うので開けました。
「覚えていらっしゃいませんでしょうか…」
10年前これこれしかじかこんな風に助けて頂いた、あの時の…貧しい相撲取り…相撲にならずやくざになって戻ってみればこの始末…あとはあっしにお任せ下さい。ここにお礼にと思って兼ねて用意していた大金が御座います。これ持って一足早くお逃げなさんせ。」
「まぁどこのどなたか存じ上げませんが、酔っ払ってわずかばかりの事をした…それだけにこんなに有難がって頂くとは…ではご遠慮なしこのお金を頂戴し逃げます。」
――娘に母親が教えた歌を唄っていたのをきっかけで巡り合う。
お蔦はまったく覚えていない。
そこへだしぼりの辰三郎を追いかけて来たやくざが、ドダドダドダーと流れ込んで来たのを、
パン パン パーンと心張棒で叩き伏せた駒形茂兵衛が、
最後の一人が突っ込んで来るのをヒョイと上半身かがめてそいつの腹へ頭でドォーンと頭突きを喰らわした。
---その途端お蔦が叫んだ
「思い出したぁ!」
パン パン パーンと心張棒で叩き伏せた駒形茂兵衛が、
最後の一人が突っ込んで来るのをヒョイと上半身かがめてそいつの腹へ頭でドォーンと頭突きを喰らわした。
---その途端お蔦が叫んだ
「思い出したぁ!」
そして、お蔦もだしぼりの辰三郎も幼い娘も逃がしてやった後、
土地のやくざ波一儀十とこれも相撲あがりなんで1対1で相撲を取って、
この悪い親分をやっつけた後、
「無事でお逃げなさんせよ。」と後姿を見送りながら、
たった一人やくざ姿のままで土俵入りをやってみせる駒形茂兵衛の頭に肩に落ち葉がヒラヒラと散って行く・・・・。
一本刀土俵入り
土地のやくざ波一儀十とこれも相撲あがりなんで1対1で相撲を取って、
この悪い親分をやっつけた後、
「無事でお逃げなさんせよ。」と後姿を見送りながら、
| 「思い起こせば10年前 くしこうがいかんざしぐるみ 情けを貰った姉さんに 見せてやりたい駒形のしがねえ姿の土俵入りでござぁんす―――。」 |
一本刀土俵入り
駒形茂兵衛(こまがたもへい)
お蔦(おつた)
弥八(やはち)
船印彫師(だしぼり) 辰三郎(たつさぶろう)
娘お君(お君の歌う越中おわら節)
土地のやくざ波一儀十(なみきいちぎじゅう)
お蔦(おつた)
弥八(やはち)
船印彫師(だしぼり) 辰三郎(たつさぶろう)
娘お君(お君の歌う越中おわら節)
土地のやくざ波一儀十(なみきいちぎじゅう)