道端に落ちていた手紙

私はある日、学校へ行く準備をしている途中に小学校へ行ったはずの弟が何故か一度帰ってきた。弟「YouTubeで見たヤママユってやつかな?」
私「ヤママユ…?こんな眼状紋してたっけな…まず生息してないはずだし…うーん似てる虫といえば札幌で大量発生してるクスサンかなぁ……」
という感じで少し話をした後、私と弟はとりあえず時間が許さないため学校へ行った。

  探究心

私と弟は帰宅してから、その蛾の"はね"がどこに落ちていたのか聞いてみた。結果的に場所は街灯も森もないただの歩道に落ちていたようだ。私はこの話を聞いて風に飛ばされてきただけだろうと考えた。しかし、この蛾の正体はまだ分かっていない。そのため正体を知るために私はインスタグラムで蛾屋の仲間に聞いてみた。この蛾の正体は「
クスサン」。札幌で大量発生しているとはいえ、もしクスサンの生きている姿があるのであれば大発見だ。何故なら私の住んでいる地域でクスサンは見つかっていたが目撃例が一桁だったからだ。私はそうしてある仮説を立てた。

「地球温暖化によりこちらにも来ているのでは?」という仮説だ。思いついたら即行動する私はすぐにライトに集まるだろうと考え、真昼間なのにも関わらず近所のドラッグストアへ向かった。結果は……
まさかのとても小さなメスのクスサンが横たわっていた。さらに彼女は生きていた。これは大発見だと悟り、博物館へ展示されていなければ寄贈しようと考えた。しかし、明日も学校があり鱗粉が禿げてしまうため早めに持っていきたかったところだが、不可能であった。すると…
またまたハプニング。次は卵を産んだようだ。
ん?? 皆さんお気付きでしょうか。卵を産むということは交尾相手がいるという訳です。つまり夜にドラッグストアへ行けば、オスの個体もいるのではないか?!と私の探究心を誘いました。

  おぼろ月の夜

夜の天気は比較的良かった。あまり月の光があると蛾は飛ばなくなってしまうので、ありがたいことに曇りだった。ドラッグストアへ着くと意味の分からないサイズのクスサンがいた。初めて見たとしても明らかに大きい個体だ。私はすぐさま三角紙へその巨大な蛾を入れ、標本にしようと考えた。しかし、問題があった。私は蛾の標本を一度も作ったことがなかったのだ。理由は単純、こんな可愛い生き物を〇すなんてことはできなかったからだ。胸が苦しくなる覚悟の上で、私は冷凍庫へその三角紙を入れた。
寒かったよね……本当にごめんね……。
覚悟はしていたが、やってしまった罪悪感が津波のように押し寄せてきた。こんな気持ちになったのは初めてだ。せめてもの供養として、初めての展翅にしては綺麗な展翅を行った。
初めてにしてはなかなかな出来ではないだろうか。おそらく元々クワガタ・カブトムシの標本は作っていたので針の使い方は慣れていたためだ。ただ、標本にしたクスサンの顔を見る度にごめんという気持ちが込み上げてくる。こんな私には標本は向いていないと確信した。そして、中一のときに習った少年の日の思い出に出てくるエーミールを尊敬した。彼は胸が苦しくないのだろうか。
ちなみにこのクスサンの体長は参考までに、
縦のサイズが9センチ超えだった。

  寄贈への旅


私はクスサンを寄贈するため、博物館へ向かった。しかし、2年前に行ってからずっと博物館へ行くことはなかったため、道が分からなく少し焦った。ナビの予想到着時間が20分に対し私は1時間30分かかった。ここで方向音痴が見事に発動した(笑) 行く途中、色々な虫に出くわした。
ウスムラサキイラガの幼虫……
センチコガネ……などなど。
頑張って到着したものの昆虫担当の学芸員さんはいなかった。事務の方が教えてくれたが、明日はいるそうだ。このまま帰るのも悲しいので、博物館の中へ入った。
一番驚いたのはこの蛾だ。この博物館では私の住んでいる地域の虫のみを展示している。つまり私の住む地域にはクロウスタビガがいると分かり、とても驚いた。他にイボタガ、エゾヨツメ、ヒメヤママユなどもいるそうだ……。私はてっきりヤママユガ科はオナガミズアオとオオミズアオのみだと思っていた。しかし、案の定クスサンという蛾はいない。明日持っていくと決意した。

  寄贈リベンジ!!

まず私は博物館へ行く前に、クスサンが他にいないかドラッグストアへ早朝に向かった。すると
2匹♀の個体がいた。この通り、まだオスは見つかっていない。卵を産むのでいるはずではあるが、何故だろう……ついでに彼女らも寄贈しに行った。博物館へ着くと昆虫担当の学芸員さんの姿は無かった。カウンターへ問い合わせてみると、会議をしているそうだ。そのため、30分ほど待つこととなった。30分後もまた姿がない。するとカウンターの方が出てきて会議室へ直接連れて行ってくれた。学芸員さんへクスサンを渡すと

学芸員さん「おお、クスサンですか。最近、(自分の住む地域)でも見つかってきてるとは聞きましたが本当にいたんですね。
私「あ、目撃情報はあったんですね。良かったら博物館に展示して頂けたら嬉しいなと思ってます。
学芸員さん「この卵は飼育していいですか?笑
どうやら三角紙に卵を産んでしまったようだ
私「え、あ、もちろんいいですよ笑
普通に卵を産んでいるとは思わなかった。けれど名刺交換をし、学芸員さんと仲良くなれた。
私「またいい虫いたら来ますね!
学芸員さん「お待ちしております
こんな会話をし、無事寄贈に成功した。

  未練

これまでの話で解明していない点があるのは分かるだろうか。そう、オスの個体を確認できていないのだ。私はどうしてもオスの個体が欲しかった。帰宅時刻を破ってまで探した。すると努力は実った。
配色が素晴らしすぎる……。眼状紋も吸い込まれそうなくらいに最高に近かった。そうして、クスサンの生息をオスメス共にこの目で確認したのだ。せっかくなので、また胸が苦しくなりますが、標本にしようと考えました。
あぁ……素晴らしい。またエーミールネタを擦るんですが、よくクジャクヤママユ壊されて手が出ませんでしたね……私だったら多分やられた相手標本にしてますよ……。話戻ります、見てくださいよこの眼状紋、素晴らしくないですか??蛾としての風格を完璧に持っていますよね……そして今頃気づいたんですが、一度冷凍して〆めると心へのダメージがかなり減りますね。まぁ、罪悪感はありますが……慣れって怖いですね。

  儚い命

これまでクスサンについて、話していきましたがどうでしたでしょうか?あまり生態については語っていませんでしたので、今から語っていきます。まずクスサンの寿命からです。寿命は成虫状態で一週間ほどです。現在、札幌や北見でクスサンが大量発生していますが、彼らも一週間程で死んでしまいます。とはいえ羽化する時期がそれぞれ違うので1ヶ月くらいは続くと思いますが……そんな感じで寿命はかなり短いです。理由は簡単で、成虫になると口が退化して無くなります。そのため、餓死ってことで死に至ります。次に別名についてです。幼虫のときクスサンは別名で呼ばれることがあります。その名も「シラガタロウ」。名前の由来はおそらく終齢幼虫に近づくにつれ白い毛が増えるからということでしょう。

  最後に

ここまで見てくださった皆さん、ありがとうございました。良かったらいいねとフォローよろしくお願いします。久しぶりに夢を追いかけられて、とても楽しかったです。最後に標本だけ載せておきます。それでは!