池井戸潤「空飛ぶタイヤ」

池井戸潤といえば、最近は「下町ロケット」かもしれない。

ドラマにもなった直木賞受賞作品である。

しかし、「下町ロケット」と「空飛ぶタイヤ」を最近読んだ私はこう思っている。

「空飛ぶタイヤ」の方が面白いのではないか！

どちらも中小企業の社長が主人公となり、大企業のやたらと威張り散らしている、妙に腹立たしい社員らを相手に悪戦苦闘していくのが大まかなストーリーといえる。

しかし、その追い込まれっぷり、そしてそれゆえのドキドキが大きいのが「空飛ぶタイヤ」なのではないかと思うのである。元となる事件が有名なだけに展開を読む面白さはない。それでも、十分に楽しんで読めるのは、登場人物の心情がどのように変わっていき、最終的な結末へ向かっていくのかを実にうまく書いているからだと思う。

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)/池井戸潤