今晩には福岡県を含む39県で緊急事態宣言が一旦解除される予定です。緊急事態宣言が発表されてから今日まで当院では新規の不妊治療に関してはある程度制限を設け、またスタッフや患者さんの感染予防の目的で診療時間を短縮するなどの対応を行ってきました。本日緊急事態宣言が解除された場合、来週5月18日からは診療時間を通常通りに戻し、新しい治療周期の開始、体外受精の初回説明の予約についても特に制限を設けないことにする予定です。ただ妊娠に直結する人工授精や胚移植については、それを受けられる患者さんがコロナ感染への懸念からすぐの再開を躊躇されることも充分に理解できますので患者さんと充分にご相談の上、ご希望に沿って開始するかしばらく延期するかを個別に決定していきたいと考えています。宜しくお願いします。

なお来院患者さんへの手指消毒、マスクの着用は今後しばらく継続をお願いします。当院のスタッフもマスク着用、手指消毒、院内の消毒作業は継続して参ります。

 

ご参考までに5月11日にアメリカ生殖医学会から発表された「PATIENT MANAGEMENT AND CLINICAL RECOMENDATION DURING THE CORONA VIRUS(COVID-19) PANDEMIC」(コロナウイルス流行時の生殖医療現場での患者対応と臨床的推奨事項)からお役に立ちそうな内容を記載します。英語で書かれたものを私が翻訳して記載しますので完全に正確とは保証できませんが少しは参考になると思います。お時間があれば目を通してみてください。

内容的にはこれから不妊治療を少しずつでも再開していくために参考になることを記載する目的のものです。

 

まず総論的な事です。

○コロナウイルスの患者発生数が一旦横ばいになっていてもその後患者数が実際に減少するかどうかは不明であり、不妊治療の再開についてはその状況に対応してフレキシブルに変更する必要がある。

○ワクチンや有効な薬剤がまだ得られていないことは間違いなく、その開発の努力は継続していく必要がある。コロナウイルスへの対応は恐らく長期間に及ぶものと考えられる。

○コロナウイルスが妊孕能に与える影響や妊娠初期の妊婦に与える影響についての我々の知識はほとんどないので、これから前方視的に患者の登録事業を行って情報を収集し知識を蓄積する必要がある。

○何らかの内科的合併症(糖尿病や心疾患など)を持っている不妊患者についてはコロナウイルスに感染した場合重症化する可能性があるため、不妊治療のについては十分な説明による同意をを得た上で治療を行うかどうかについて決定する必要がある。

 

検査について

○確定診断はPCR検査により行われる必要がある。PCR検査では疑陽性の頻度は低いが偽陰性(本当はコロナに罹患しているのに検査が陰性となること)は検体の採取方法が悪かったり、感染の非常に早期に検体が採取された場合などに起こり得る。PCR検査は症状開始後1日目には陽性となり、その後約3週間陽性が続く。重症例では3週間以上陽性が持続することもある。(著者註:本邦では他国に比較してPCR検査の実施件数が少なく実態を把握できているかどうかが不安です)

○抗原検査はウイルスのタンパク質を検知する検査であるがPCRと比較して偽陰性率が高い。陰性であった場合はPCR検査で確認する必要がある。

○抗体検査:コロナウイルスに感染した全ての患者で抗体が産生される訳ではないので診断としては推奨できない。(著者註:コロナウイルスの蔓延の程度を知るために出来るだけ多くの人の抗体検査をすることは意味があると思います)

 

妊娠とコロナウイルスについて

○現時点で分かっていること

(1)コロナウイルスに感染した母親から満期産で生まれた新生児は全般的に健康な新生児であった(Shalish et al, 2020)。

(2)重症のコロナウイルス感染は早産のリスクを高める可能性がある(Liu et al, 2020; Zhu et al, 2020)。

(3)コロナウイルスに感染した9名の母親から帝王切開で生まれた児の羊水・臍帯や母親の乳汁中にコロナウイルスのRNAは確認されなかった(Chen et al. 2020)(著者註:これらの報告はやはりほとんど中国からのもののようです)

○現時点で分かっていないこと

(1)妊娠第1三半期(妊娠13週頃まで)、第2三半期(妊娠27週頃まで)の胎児にコロナウイルスが与える影響についてはまだ情報が充分得られていない。

(2)垂直感染(母胎内の胎児に経胎盤的に新生児にウイルスが感染すること)についてもまだ明らかではないがその可能性はある。217名の帝王切開で生まれた児で垂直感染は認められなかった(Shalish et al. 2020)。一方で新生児にコロナウイルスに対するIgM抗体(感染早期に出現する抗体)が認められた症例もある(Dong et al, 2020)。他にも3例の垂直感染を示唆する症例報告があり、少数例では垂直感染が起こる可能性を否定できない。ただし新生児の症状はほとんどが軽症であり重症化した症例はほとんどない。

 

他にもアメリカならでは卵子提供や精子提供、代理母の場合の注意なども記載されていますがそこは省略します。

まだまだ新型コロナウイルスとの人類の戦いは始まったばかりです。それに加えて新型コロナウイルスの蔓延によって世界中全ての国で経済活動が制限され恐らく大きな経済の落ち込みが今後しばらく続くことでしょう。それに対する手当を現在国や自治体が一生懸命に行っているところであると思いますがスピード感が絶対的に不足している事は否めません。不妊治療を続けて行くにはお金も掛かります。治療をしようという患者さんのマインドが低下してしまわないように心から願っています。