◆「漢詩」の味わいには汲めども尽きぬものがあり、人の心の琴線にふれるような名言・佳句は私たちを風雅の境地に誘ってくれます。

今日は、空海の詩を紹介します。

★ひっそりとした高野山の草堂の夜明け、一人で座禅をしている。すると「ブッポーソー」と鳴く木葉木莵(このはずく)の声が聞えてくる。鳥はただ無心に鳴くのだろうが、鳥の声に三宝「仏法僧」を聞き、心に感じるものがある。鳥の声、人の心、雲と水とが融け合って、その中に仏の教えを見出したように思う。

★弘法大師・お大師さんゆかりの、四国八十八ヵ所廻りは年々盛んで、「同行二人」と、歩いてのお遍路は、人々に豊かな心と、風雅な潤いをもたらしています。特に「お接待」の心は、お大師さんの心を今に伝える、四国の最も美しいものの一つではないでしょうか。

 この詩は、普通の風雅な詩とは違って、仏詩といった方がよいでしょう。難解な部分もありますが、高僧・空海らしい有名な詩で、吟詠にもよく吟じられます。

●後夜=翌朝の五時ごろ。●仏法僧鳥=このはずく。ブッポーソーと鳴く。●三宝=仏徒の三つの宝。仏宝(釈迦)、法宝(説教)、僧宝(僧侶・僧徒)のこと。●閑林=静寂な林。●草堂=草ぶきのお堂。高野山の竜光院のことだろう。●声心=声は鳥の声、心は人の心。●雲水=雲と水。浮雲や水の流れのように所を定めず修行して歩く僧。●了了=はっきりと分ること。