「易水送別」は駱賓王が徐敬業との別れに、心情を詠った詩です。

★昔、この易水のほとりで、燕の丹の恨みをはらすべく荊軻(けいか)は丹と別れ、秦王(秦の始皇帝)を撃つ旅に発った。その別れの宴で、見送る人々の激情は凄まじく髪の毛は冠を突き上げるほどであったという。今、私がいるこの易水のほとりでは、その当時の人はすでになく、ただ、寒い易水の水だけが流れている。

★この詩は、駱賓王が徐敬業(じょけいぎょう)と、この易水のほとりで別れるときに作った詩である。送別の詞であるが、作者から九百年前の歴史を思い浮かべ今の自分たちの別れに重ねている。

★女帝・則天武后を打つため徐敬業が兵をあげると、駱賓王もそれに加わったが失敗におわった。この易水の地で駱賓王が徐敬業を見送るに当り「荊軻の故事」を思い起して作った詩である。歴史にある「易水の別れ」を前半二句で詠うことで、今の作者の激しい心境に代えている。この詩を詠むと、千年の昔(駱賓王から)、白装束姿の同士たちが、荊軻と惜別の宴をはり、剣舞を舞った姿が彷彿としてくる、ひきしまった傑作だと思います。