やさしい漢詩

 

★私は、国・長安を去って遠い三巴の地を旅している。南楼に登ってみると、見渡すかぎり春たけなわだ。いま、私は川のほとりに傷ついた心を抱いてたたずんでいる。この美しい春の景色を見ても、私の心は少しも晴れないのだ。なぜなら、私はここの土地の人ではないからだ。(私は今、故郷を遠く離れて、寂しい旅をしているのだ)

★長江のほとりにある楼に登って、故郷を想い、その旅愁を詠ったものです。南楼に登ってみると、美しい春景色。だが、慮僎の心は晴れないのです。なぜか。どんなに美しい春景色でも、それは他郷であり、自分の故郷ではないからです。望郷の念がつのるばかりなのです。「旅愁」「郷愁」「望郷」をテーマにした詩はたくさんあります。杜甫の「絶句」、李白の「静夜思」(二六、五九参照)もその代表的なものです。また、城野静軒の「舟中子規を聞く」も旅愁が漂っています。この詩・南楼の望は「唐詩選」にも採られています。