藤井竹外の傑作です。

★後醍醐天皇の御陵では、松と柏が高くそびえ、おりからの強い風がうなりごえをあげている。山寺に春の気配を尋ねて来てみたが、花も散りひっそりとしてものさびしい。眉毛まで真っ白の老僧が、庭を掃いていた手を休め、南朝の昔のことを説いて聞かせてくれた。

★竹外が芳野を訪れたときの体験を詠ったもの。花見をするつもりで芳野の山寺に来てみたものの、春も過ぎ花は散り、おろから落花を掃いていた老僧が、その手を止めて南朝の話をしてくれた、という静寂な内にも温かい心を感じる詩です。芳野をよんだ傑作の一つです。