「begrifen(ベグライヘン)概念的に把握する」
大学の読書会で先生から、この言葉の意味を説明された時のことをよく覚えています。
『 「概念的に把握する」 様々な表象に惑わされずに本質をつかむ。』
いい言葉だなと思いました。
40年近くたった今でも、ベグライヘンというドイツ語とともに覚えているのは、
折に触れ、思い出す機会がよくあったからです。
1年生のひき算の文章題の学習。
ひき算の言葉はいろいろあります。
「食べたら、残りは」
「帰りました」
「あげると」
「どちらがいくつ多いですか」
「男の子は女の子より3人少ないです。」
これらの言葉をいちいち、ひき算の言葉として覚えようとしてもきりがありませんし、
とりとめがないので、結局ひき算と決定できないままになってしまいます。
「食べたら、残りは」 「帰りました」 「あげると」 は
「少なくなる場合」
「どちらがいくつ多いですか」 「男の子は女の子より3人少ないです。」 は
「二つのものを比べる場合」です。
1年生でも、「少なくなる場合」 「二つのものを比べる場合」 は理解できますし
そうした、まとめる言葉で視点をもつことによって
いろいろな言葉をひき算と決定づけることができるようになるのです。
また、「あわせて」 「ぜんぶで」 と言った、たし算の言葉と対比することで、
より鮮明に把握できるようになります。
これも、ひき算を 「概念的に把握する」 一例だと思います。
こうして、ひとそろい、ひき算の文章題の学習ができたころに
1年生にひき算の文章題を作ってもらいます。
ひき算の言葉を概念的につかめた1年生は
得意げに自分の生活から、それは自由に言葉をつむぎだします。
自分の好きなキャラクターや動物や虫が出てくる出てくる。
書かれた文章を読むと
「少なくなる場合」 「二つのものを比べる場合」 を
よくこんな場面で見つけたなとか、楽しいものです。
でも、1年生が夢中になって書いたものだから
てにをはが間違っていたり、いろいろあるものです。
今度は、評価する大人の側が
『 「概念的に把握する」 様々な表象に惑わされずに本質をつかむ。』
ことを求められる番です。
「てにをはの間違い」といった「様々な表象」に惑わされずに
1年生がつむぎだした「ひき算の言葉」の「本質」をこそ評価することが求められています。
「少なくなる場合」 「二つのものを比べる場合」 概念を頭に置きながら文章をつむぎだす
ひき算の文章題を作るは1年生にとって一生懸命の行為です。
内発的な能動的な思考があってできることです。
正解をおしつけることでは実現できないことです。
その内発的な能動的な思考を評価してあげることは
なによりのエネルギーになると思います。
そうして、「てにをはの間違い」 は別建てや別の機会に学習するのがいいのです。