写本
二十八章 3回目
いつもの所ではなかった。
侍女などを置いて目立たないように住みなさいという風に設えてあった。
女は、
(やはりそうだった)
と思い、
(なにも大袈裟に邸にあがることはない。かえって、いつあがったのだろうと人から思われた方がいい)
などと考えた。
夜が明けた。
女は櫛の箱を取りに侍女を家に行かせた。
敦道親王が部屋にいる時は、女は格子を上げなかった。
暗いことは怖くなかったが、ただ鬱陶しい。
敦道親王は、
「すぐ北の方に移してあげる。ここは人気が近いので落ち着かない」
と言った。
女は格子をすべて下ろした部屋で敦道親王の言葉を静かに聞いていた。
敦道親王は、
「昼は女房たちや院の殿上人などがいるので、このままここに住むのは難しいでしょう。邸にあがったばかりなのにあなたに失望されるのが怖い」
と言った。
次回は明日書きます。