『くまとやまねこ』 湯本香樹実著 | ■ふむふむミーティング■西東京なう■

『くまとやまねこ』 湯本香樹実著

さすらいのディスクジョッキー、お久しぶりにブログを更新です。
(※最近お友達にターンテーブルを頂いたので、DJ気取りで調子に乗りまくった上でのネーミングです♪)

ついこの前まで、生牡蠣を食べまくったおかげでウイルス性胃腸炎にもがき苦しんでいたのですが…完全復活!!
また牡蠣が食えるようになったかと思うとウキウキです☆(募集要項「学習能力が極端に低い人もしくは猿」という企業を探してます♪)

2月2日にLIVEを控え、ひたすら歌詞を書き殴り、ギターをかき鳴らし
牡蠣にヤラれている間に溜めこんだモヤモヤを、かき消す勢いで楽曲を制作中です。

そういう訳で最近は新しい絵本に出会ってませんので、今年のお正月に出会った本を紹介したいと思います。

『くまとやまねこ』
くまとやまねこ
くまとやまねこ
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湯本 香樹実
河出書房新社
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著者は湯本 香樹実さん。
東京音楽大学卒業作曲科を卒業され、オペラの台本執筆から、ドラマ・ラジオの脚本家、そして児童文学作家。
数々の賞を受賞され、経歴や能力の多彩さだけで凄すぎる彼女ですが
なんと…更に!めちゃんこお美しい方で、彼女が人間ならば、僕は生物学上人間よりは猿、もしくはナマケモノの方に近いんじゃないかと思える程です。
(木のぼりさえ下手糞です(笑))

この作品は、僕がお正月、まさに怠けてゴロゴロしていた時に、実家の本棚で出会ったものです。
時間にすると数分寄りそっただけの短いお話なんですが、この中に描かれている時間は、短いものではありませんでした。
そんな「時間」と「死」にまつわるお話です。

物語の冒頭、主人公のくまは、大切な友達を亡くしてしまうのです。
痛切すぎるくまの心の内が、彼の行動を通して、読み手の心を絞めつけます。
くまさん、もうやめて!もう悲しまないで!こっちまで悲しくなっちゃうよ!と、痛々しいまでに悲しい時間に誘いこまれます。

大切なものを失った時、今まで平凡に、普通に過ぎていた時間から落っこちたように、日常に取り残されたような気分になります。
大切なものを失ったと同時に、今まで空気のように存在していた「時間」というものまで失ってしまったような、そんな気分。

でも、壊れてしまったのは自分の心であって、時計ではないのです。
太陽は昇り、風が吹き、明日が来ます。
日常で何度も繰り返すであろう、別れを経験するという事は、また新たな出会いを経験する事になるのです。
生きているから。
そしてくまの心はやがて、時間に癒され、やまねことの出会いに癒され、大切なことを見つけるのです。

僕らが「死」というものに出会う時は、自分の「死」か、他者の「死」その二つの瞬間しかありません。
しかし、「死」を見つめる為には、自分が死んではだめなのです。
現代、特に僕らの住む安心して暮らせるような国では、科学や医療が発達し、「死」を見つめる機会はすごく少なくなってきました。
昨日楽しくお喋りをした友達や家族が、今日死ぬような事はめったにありません。
それは幸せな事なんだと思いますが、「死」が軽視される世の中であってはいけないと思います。
時々、テレビの中で、新聞の中で、人が自ら死にます。
子供も死にます。

目の前で、誰かの為に必死に生きている人が死なないから、辛くても必死に生きている人が死なないから
「死」が痛みや悲しみを超えた世界の入り口になってしまうのでしょうか。

生きているから、笑う事もあり、泣く事もあります。
感謝してやまない恩人がいれば、殺してしまいたいぐらい憎い人もいたりします。
居心地の良い心の置きどころを上手に見つける事で、悲しんだり憎んだりせずに生きていけるのかもしれませんが
そんな器用な人間がいるとは思えないぐらいに、少なくとも僕は不器用です。

不器用ではありますが、ひとつ幸せな事は、大切に思える友達、家族がいます。
そして、そうでない人がいる事も、彼らや僕を取り巻くあらゆる物事に教えてもらいました。

他者の存在によって理解を得た事がたくさんあります。
もちろん、その他者は生きている人ばかりではありません。
僕が得た理解は微々たるものでしょう。
微々たるものとはいえ、時間はかかりました。
その時間は誰かより少ないかもしれないし、多いかもしれません。

そして、僕にとって友達や家族、テレビの向こう側の人は他者です。
そして彼らにとっては僕はまた他者です。
「時間」と同じで、当たり前に在るものです。

いつの日か、くまさんのように悲しみに打ちひしがれるかもしれませんし
またいつの日か、やまねこさんのように誰かの希望になりうるかもしれません。
当たり前に過ぎゆく日常でさえ、くまさんが1歩踏みだす理由になれました。
今すぐに、やまねこさんのように大きな希望になれなくても良いと思います。

人は「死」を見つめながら、生きるものだと思います。
「死」を見つめる事は楽な事ではないでしょうが
見つめる事で、「死」を選ぶ事が、楽な事ではないと学ぶ事ができます。

僕はこの本が児童書である事が素晴らしいと思います。

『くまとやまねこ』イチオシです!!
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