2023年魔法祭において、リラやパールと共にリラデパールに乗り込み、アッコのご先祖様であるキタロー父さん(現在の目玉おやじ)と戦ったバーニッシュの鳥型妖精ジョニィ君が遂にルーナノヴァに入学したのを記念して、アッコが特別授業を行いました。

今回は、その模様を綴りたいと思います。

 

◆魔法祭篇エピローグからの続き

 

「僕は幼いトーマスと出会って、人間を信じることができた。生まれた時は皆天使だと思う。そこからどう育つかが重要だと思うので、学校の役目は大きい。君たちと出会えて本当によかった。トーマスと一緒に僕もルーナノヴァの学校生活を楽しみたい。」とジョニィが入学希望とも取れる言動を放った。

「やった、入学生が増えた! えーと、どの枠なのだろう。え、人間以外枠? ルーナノヴァがまた拡大を? アーシュラ先生に相談しなければ・・・」
アッコが思案する。

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魔法祭篇エピローグ(「2023年の魔法祭篇後の引っ越しエピソード」)にてルーナノヴァへの入学希望とも取れる発言を行ったジョニィ。

それを受けて、アッコはアーシュラ先生に相談を行い、新たに人間以外枠を設けることにこぎつけました。

 

といってもジョニィ1人しかいないので、ジョニィの相棒のトーマスのいる修士課程や、セシルのいる社会人リスキリング枠と合同で授業を進めることとなりました。

 

一方、魔法の研究は、意外にも思われるかもしれませんが、アッコの向こう見ずな数々の挑戦、さらにはそれに触発されたアッコの仲間たちによって、大きく進展しているという事実もありました。そして、日本にもルーナノヴァの分校ができたこともあり、今後の学校教育における魔法の役割というテーマで日本の文部科学省において講演をすることも決まったのでした。

 

その予行演習も兼ねて、ジョニィを迎え入れた人間以外枠の意義も含めて魔法教育に関する特別授業をルーナノヴァで行うことになりました。ジョニィや修士課程の生徒、社会人リスキリング枠を中心に正規課程の生徒の希望者も入れ、当初の予定より大きなイベントとなったことに、アッコは少しビビりながらも準備を進めていました。

 

◆魔法研究の現在

 

その前に現在、魔法の研究がどこまで進んでいるのか、紹介しておきましょう。

 

1.魔法の起源

 

古の偉大なる魔女/魔法使いが伝える話や「偉大なる魔法の時代」の営みから魔力は宇宙をつなぐ宇宙樹イグドラシルから発生していると考えられてきました。

しかし、産業革命を契機に科学の発達と共に魔力は衰え、魔女/魔法使いは時代遅れの職業とされるようになってしまいます。

魔法界の衰退は避けられないと思われましたが、2013年アッコ達の活躍によりブライトンベリー上空にイグドラシルの様なものが現れ、魔法の力で危機を乗り越えます。その時、魔法は「みんなの信じる心」によって生まれるということがわかりました。

イグドラシルはその信じる心を集め魔力に変換するものであって、単独で魔力を発生させるものではないということが見えてきた瞬間です。

 

よって、魔法とは人間とイグドラシル、すなわち宇宙における重要な要素と人間との関わりによって生まれる、とても奥深いものだと人類は理解するようになりました。そして、その研究は人類の未来にとって極めて重要だと認識されるようになり、本場の英国はもとより、米国の魔法研究所等でさかんに研究されるようになりました。ちなみに米国魔法研究所には卒業したコンスタンツェが所属しています。また、英国では魔法省が設立され、アンドリューは今はそこで活躍しており、魏怒羅騒動では大きな役割を担いました。

 

偉大なる魔法の時代では魔女たちはイグドラシルから直接魔力を得ていたと伝えられていますが、現在では魔導石が無いと魔力を得られない状況になっています。魔力を導く石、その研究も重要なテーマでした。

 

ただ、世界の皆が魔法を信じる心を持ち、その心を伝えてくれるように変わってくれば、偉大なる魔法の時代のように魔導石がなくとも魔法を使える世界に再びなるかもしれません。

 

2.人と魔法をつなぐもの

 

魔法を導く石に関しては、アッコのルームメートである魔道具屋のロッテが大活躍することなります。

ルーナノヴァで行われた起業に関する特別授業に触発され、ロッテは実家の魔道具屋を引き継ぎ大きな会社にすることを目指し、さらにはかつての偉大なる魔女たちが生み出した魔法神器に相当するものを自分たちでも創出することに挑戦したのです。

 

魔法神器の代表であるクラウソラスは、埋め込まれた7つの星(石)が魔法発現の鍵となっています。すなわち魔力を呼び込む石とその組み合わせが魔法神器の根幹を成すものと考えたロッテは、魔力を呼び込む石(魔法石)の探索とそれを使った魔法神器の設計に6年の歳月を捧げました。そして、それは2023年の魔法祭にマスタークラウン(月夜の王冠)として結実し提供されたのでした。なお、魔法石の探索にはアッコやスーシィも協力しています。なによりスーシィの故郷マンババラン島は魔法石の宝庫だったのです。

 

魔法石は、各機関の研究により、琥珀と同じ様に生命起源の宝石だと見なされるようになりました。生命起源とは宇宙樹イグドラシルのことだと考えられています。さらには他の鉱物起源の宝石とは異なり、結晶ではなく準結晶として形作られていました。準結晶は3次元空間では結晶化できない5回回転対称性や正20面体対称性を持ち、高次元空間の結晶の写像ではないかとも考えられているものです。

 

つまり、高次元空間とつながる可能性を持ったものとも言えます。魔法石はその様に高次元空間とつながることで枯渇しつつある魔力環境下でもイグドラシルとつながり魔力を得られるのではないかと推測されています。またレイラインルーターには無い魔力の蓄積機能も高次元空間と常時つながることで、そこに蓄積できるのではないかと考えられています。

 

3.人以外の魔法

 

魔力の起源にはまた別の説もあります。2014年の魔女パレードにてアッコたちはのちにバーニッシュと呼ばれる奇妙な存在と遭遇します。その時は魔法を危険視し反対する魔法使いだったトーマス父を媒体とした人類に危害を加える存在でしたが、同じくバーニッシュであることが判明したジョニィによって、彼らの故郷である異世界への道が開かれ、そこに還って行きました。

そして、バーニッシュであるジョニィは人の魔法使いとは違った特別な魔力を持っているようでした。アッコはそれはその異世界から来ているのではないかと考えました。異世界にはトーマスも入りましたが、そこで見たもの、それは太陽の様なものでした。その太陽の様な存在、プロメアがジョニィたちバーニッシュの魔力の源であることがのちにわかります。

 

これらのこれまで判ってきた魔法に関する知識を基に、その正しい使い方と正しい魔女/魔法使いになるための生き方、理念などをアッコがこれから講演しようとしているのです。

勿論、むやみに高尚な話をするのがアッコの真意ではありません。得意でもありませんし。ただ、これらに到達したのは彼女が辿った道でもあります。その仲間と共に歩いた道のりを自虐ネタも入れながら面白おかしく話をすると思われます。

 

では、楽しみに待ちましょう。

 

 

◆カガリ・アツコ特別授業

 

「みなさーん、おはようございまーす!! アツコ・カガリです。 「魔法でみんなを笑顔にしましょう」講座や「前向きに取り組む魔法修得学」など、魔法の楽しさや楽しく魔法を学ぶ方法を皆さんにお伝えしてきましたが、今回はちょっと集大成的に魔法がどこから来ているか、それを私たちはどのように使えばいいか、など少し掘り下げた話をしたいと思います。」

 

「えっと、ちょっとちょっと、ジョニィ君、もっと前の方に来て。」

 

はずかしそうに綺麗な青いトサカを揺らしながら、黄色・オレンジ・赤色の華やかな羽毛を纏った大きな鳥がスタスタと歩いてきました。

 

「えー、彼があの大変だった魔法祭で、あの美しい女性型ロボット、リラデパールの魔導エンジンを担っていた鳥型妖精のジョニィ君です!」

 

授業に参加している全員の視線が、華やかながらもちょっとオドオドした可愛げのある奇妙な生き物に集中します。

 

「今日から正式に彼はルーナノヴァ魔法学校に入学しました。人以外枠というちょっと変な名称で申し訳ないですが・・・。

ですので、えっと人じゃないのですが、みなさんと一緒に魔法を学ぶ者として仲良くしてあげてくださいね。それに彼の魔法はちょっと人が使う魔法とは違います。なので良い刺激になり勉強になると思いますよ。」

 

「では、彼の魔法の一端を味わってみましょう。では、ジョニィ君、皆に自己紹介してあげて。テレパシー能力で。。。」

 

*ジョニィの自己紹介

 

そうなる覚悟はしていましたが、やっぱりですか、との顔をして対応する鳥型妖精。アッコとはもはや無礼講状態の付き合いですが、ここは丁寧に対応しないといけません。

 

「あ・はい、さきほどカガリ先生から紹介にあずかりましたジョニィと言います。ジョニィという名前は物心ついた時から世話になっていた、そこにいるトーマスのおじいちゃんからもらった名前です。

しばらくは、おじいちゃんの声は聞こえていてもこちらの声を伝える方法がわからなかったのですが、トーマスと出会ってこのように話をすることができるようになりました。

最初は本当に6~7歳の子どもとしか話ができなかったのですが、今では普通に人と話をできるようになりました。

これもきっとカガリ先生のおかげだと思います。これも魔法の一種なので、魔法の技術が向上したのだと思います。

これから皆さんともっと魔法を勉強して、みんなが幸せになれる世界を作っていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。」

 

パチパチパチと拍手が沸き上がります。

「かわいいーーーっ」という声も聞こえてきました。ちょっとはずかしくなる反応ですが、確かにジョニィはカワイイ系イケメンの香りのする鳥です。笑

 

「えーと、出身はどこなのですか。中国から来たとも聞きましたが。」質問も出てきました。

 

「確かに中国で生まれたみたいなんですけど、あまり記憶が無いのです。中国では鳳凰と呼ばれていたみたいです。トーマスのお父さんとおじいさんの会話からバーニッシュだとわかったのですが、それが何かはトーマスのお父さんが魔女パレードを邪魔しに来た時に初めてわかりました。どうも異世界から来たみたいなんですね。」

ジョニィもやや戸惑いながら話をします。

 

「でも、困ったことに、他人事の様に言っていますが、正直自分でもあまりわかっていないのです。なので、この辺りも勉強したいと思っています。自分探しですね。」

正直に戸惑いの原因を打ち明けるジョニィ。

 

「そうでしたか。私たちも協力します。ジョニィ君の自分さがし。ルーツを見つけましょう。」

社会人リスキリング枠で学ぶ女性高校教師のカレンさんから声が上がります。ベテラン教師のカレンさんはこれからの学校教育には魔法が必要だと考え、魔法学校に入学してきた人です。ベテラン教師だけにアッコも逆に学びたいと思っている人でした。

 

「カレンさん、ありがとうございます!」 アッコがお礼を述べます。アッコも安心した様です。

 

*魔法の起源

 

「では、魔法の起源の話からします。」


「みなさん、魔法って何でしょう。みなさん、もう普通に魔法を使っていると思いますから、今更な質問だと思いますが、本当のところどう思っているか、現在は魔導石が無いと使えない魔法、なぜなのか?など、どこまで深く考えているか聞いてみたいと思います。じゃあ、当てますよ~~」

アッコは楽しそうに生徒たちに語りかけます。基本、アッコの授業は自分から喋りっぱなしということはありません。無茶振りも含めて生徒を巻き込み対話を楽しむスタイルなのです。
 

「では、トーマス君どうでしょうか。トーマス君が初めて見た魔法はジョニィの魔法と聞いています。人の魔法ではないものを最初に見たことから面白い意見を持っているかもしれません。」
 

アッコが最初に指名したのはトーマスでした。2014年の魔女パレードでアッコにトマトをぶつけた悪ガキ(当時11才)です。でも、そのイベントで、魔法を憎んでいた魔法使いの父をアッコたちが魔法を使って救ったことから、彼もまた魔法を学ぶ様になったのです。
 

ルーナノヴァが共学になる前は男子校のソルパテル魔法学院で学び、現在はルーナノヴァの修士課程で学んでいます。アッコたちに会いたかったのかもしれません。いや、本当は魔女パレードでモニター越しに見た、ルーナノヴァに入って魔女になりたいとアッコに訴えていたパールに会いたかったのでしょう。
 

「あ、はい、魔法とは何ですか・・ですか? いきなり難しい質問を投げかけてきますね。トマト攻撃のお返しですか。あ、いや、それが先生との出会いだったので、とても印象に残っているので。。。」


「ああ、あれはナイスピッチングだったわね。見事に可哀そうな魔女を演じられたわ。」
アッコも楽しそうに返します。あの魔女パレードはアッコにとって最初の魔法教育だったかもしれません。

 

トーマスはさらに5年前のジョニィとの出会いから話を始めます。
 

「ジョニィが初めて魔法を見せてくれた時はとても感動しました。この世のものではないとまで思いました。でも僕のおじいさんも使えたんですね。人間でも使える。なら、得体の知れないものではなく、使えるものなんだと思いました。」
 

トーマスが魔法との出会いを語ります。しかし、次は父から魔法の危険な側面を叩き込まれたことを白状します。
 

「でも、おじいさんは魔法の研究をする中で亡くなりました。父は、魔法は恐ろしいものだ、絶対触れてはいかん。魔法を使う者を根絶しないといけないと力説しました。」


トーマスは魔法の恐ろしい理由を語ります。
 

「魔法は人の精神エネルギーを使います。魔法は精神エネルギーを消耗し疲弊させます。魔法はその効果の大きさ故、麻薬の様に人を虜にし、やがてその人の命を奪うのです。」
 

トーマスが語る理由はある意味、真っ当な様に聞こえます。
 

「命を奪うだけではありません。魔法の虜になった人はその力を誇示したくなり、疲弊した精神状態で大きな過ちを犯す危険性が増します。事実、ブライトンベリー上空で起こった事は魔法の暴走でした。その暴走を止めるために魔女たちががんばったというのが真相です。」
 

実際、その通りなので、アッコもそれには意義を唱えることはできませんでした。
 

「なので、僕は父の主張は間違っていないと思っていました。あの魔女パレードの日までは。」
トーマスは2014年のアッコたちが行った魔女パレードに言及します。


「あの日、魔女の歴史を再現するパレードが行われました。そのパレードは前年のブライトンベリー上空の花の奇跡を受けて、魔法の素晴らしさを訴えるものでもありました。そう、そこで僕はカガリ先生と会うことになったわけですが。」
 

「父さんは魔女パレードを潰そうと異世界の者たちと結託していました。その者たちは人間の行いで異世界と異常な形でつながって人間界に来てしまい、不幸になった者たちでした。その行いとは人間活動がもたらした魔力の歪でした。昨年現れた魏怒羅もそれが原因ですが、同じことはずっと前からあったのです。」
 

「そして、その者たちの攻撃で魔女パレードを行っていた魔女に負傷者が出ました。僕はさすがに恐くなって・・まあ、まだ子供でしたし、別の方法があるんじゃないかと思い父さんに会いに行こうとしました。その少し前に実は声が聞こえていたのですが、それはそこにいるジョニィ君の声でした。ジョニィ君はその不幸な異世界の者たちと同じ存在だったことがわかるのですが、彼は人を恨んではいませんでした。」
 

アッコもそれを思い出しているのでしょうか、とても満足そうな顔で頷きながら聞いています。
 

「僕はジョニィ君と共に父さんのところに行きました。あ、それからカガリ先生も鳥に変身してついてきましたが。そして、ジョニィ君から教わったのです。父さんに異世界への扉があると。僕たちはそこに飛び込みました。そこはすごい世界で別の宇宙のようでした。太陽もあったのです。それは去年の魔法祭で判明したプロメアというものでしたが。」
 

トーマスは遂に異世界について言及し始めました。
 

「そのとき僕は感じたのです。魔法は人の精神力から生まれるものではないと。外からのエネルギー、いわば宇宙のエネルギーから生まれるものだと。だから、人を疲弊させるものではない。もっとうまく使えば素晴らしいことができるものにちがいないと。」
「ただ、それは魔法学校の皆さまはイグドラシルから魔力をもらっていたということでご存じだったのですが。」
 

アッコがここで口を挟みます。
 

「そう、イグドラシルからもらっていた。私もそう教わりました。偉大なる魔法の時代ですね。でも、それも真に正確なことではなかったのです。」
 

トーマスが続けます。
 

「でも、偉大なる魔法の時代と違い、イグドラシルは表からは消え、魔力は弱まっていました。その原因は何なのか。そう、ここでまた円環の様に元に戻ってくるのですが、人の心の力、それも魔法を信じる心が魔法の源だったことが、そこのカガリ先生のおかげでわかったのです。それがブライトンベリー上空に咲いた花、イグドラシルが蘇った理由でした。」
 

皆の注目がアッコに集まります。
 

「いやいや、あれは色んな幸運が重なり合ってできたわけで、私だけの功績じゃないですよ。そこはわかってくださいね。私はそんな立派な人じゃないですから。」
 

急に照れだすアッコ。意外と自意識過剰なのかもしれません。
 

「なので、魔法とは人と宇宙の共同作業で生まれる不思議な力ということです。」
と、意外とあっさりまとめるトーマス君でした。
 

勿論、まだここで終わりではありません。

言いたいことがある人はまだまだ沢山いるに違いありません。

考古学者の立場から魔法を研究しているセシルも。

光魔法を自然体で会得したパールも。

そして、フィネラン先生の娘にして新世代のダイアナ!リラも。

そして、もう一人の異世界代表のカリンも(おそらくユートも)。

さらに魔法祭を戦ったルチアやアルフレッドやメイビィやマンライバートルやアイナ、エリスも。

リラ組隠しネタの歌姫ユリコ(ユリカ)も?

 ・・・みんな出てきたら収拾がつかないかも。
 

~続く