リトルウィッチアカデミア続編構想。
TVアニメ版の10年後を描く物語。
LITTLE WITCH ACADEMIA Journey through the Decade の第11話です。
「All friends gathered」(*1)

 

 

 

「ヤ・ヤスミンカ!! ヤスミンカなの!?」 驚くアッコ。

 

「ヤスミンカ、ついに来やがったか! やっぱりスゲーなローザヴィ・キート! 世界最大の潜水艦だけのことはある。」とアマンダ。アマンダはヤスミンカの状況について知っているようだ。ローザヴィ・キートは海中に居て見えないが、ロケットの噴出範囲の広さから大きさが実感できる。

 

ヤスミンカは母国ロシアに戻ったあと、強烈な食べ物への愛着から予想通り料理研究家の道に進んだ。魔法をも使ったヤスミンカの料理は大変な評判を呼び、さらには健康やストレス軽減への効果が多方面から注目を浴びた。

 

そこに注目したのがロシア海軍だった。ストレスが尋常でない潜水艦乗組員の健康問題に頭を悩ましていたロシア海軍はヤスミンカの料理と癒しの力に注目し、彼女を料理人兼健康管理責任者として起用したのだった。平和主義者のヤスミンカは軍で働くことに多少の抵抗はあったが、既に時代は、大国同士の争いはなくなり、ロシアとアメリカも友好国となり(ダイアナの活躍もある)、世界は一つになりつつある時だったので、受け入れたのであった。

 

潜水艦部隊に着任すると、ヤスミンカの料理と癒しの力はたちまち乗組員達から絶賛され、そして、大変な人気者となり、とうとう艦長を務めるまでになってしまう。

 

そんな中、異常気象の頻発、特に巨大台風の発生が全世界的に問題となり、安全に台風を観測でき、さらには台風制御の研究にも使えるプラットフォームとして潜水艦に注目が集まっていた。ロシアでも異常気象対策のための機関は発足しており、そこが注目したのは大国間の対立解消から用済みとなり解体を待つばかりの巨大潜水艦だった。

 

そういう経緯で世界最大の戦略ミサイル原潜は異常気象対策のための観測船、兼、台風制御研究船となったのである。

そして、ある意味至極自然な流れでヤスミンカがその船長となった。そして、ヤスミンカは自身の趣向でローザヴィ・キート(ピンクの鯨)と名付けたのである。ただし、船体をピンク色にまではしていない。

 

◆大阪湾 魔獣vs魔法 大戦争

 

ローザヴィ・キートが打ち上げる台風制御インパクト物資散布ロケットの効果で、次第に魏怒羅の台風は弱まっていった。

 

この状態だと大阪湾周回レイロード魔法円に魔女を展開し、機能させることができる。

 

さっそく、風見あつこが号令をかける。「みんな、配置について、魔法円を機能させるよ、守護者を勧請するよ!!」

アッコも風見あつこと連携を取る。広大な魔法円上で魏怒羅を挟むようにフォーメーションするには、目で見てもできない。魔法の力を信じて、見えないものでつながっていることを感じ取り、なおかつ魏怒羅の動きも感じ取り、確実・精密に進める必要がある。

 

国生み神社の魔女達が次々とレイロードに進入して行く。風はまだ結構あるが、風を操る魔法を使い、道を切り拓いて行く。

 

アッコは南側、風見あつこは北側のレイロードを飛ぶ。

ヘキサグラムの頂点にて守護者勧請の儀式を行い、守護者の力を得る。その状態で魏怒羅を挟む様にフォーメーションを組み魔力を照射、あたかも放射線治療で癌を焼き切る様に焦点を合わせるのだ。

 

各自、ヘキサグラムの頂点にて配置を完了し、歓請の儀式を開始した。

だが、魏怒羅が異変を感じて急激に移動速度を上げた。しかも近くのヘキサグラムの頂点に突進してきたのである。あろうことか、そこに居たのはアッコ!

 

「アンタ、またもや、私にかかってくるというの?」身構えるアッコ。流星丸を急上昇させようとする。

 

と、眩いばかりの光がその場を貫いてきた。

青白い光線が魏怒羅を包み込む、古史羅のアトミック・ビームだ。今回は核融合パルスエンジンのサイクル数を上げたのか、威力はさらに増していた、が、魔力が足りないのか収束が不十分だ。包み込むような光線だが、密度が低く、魏怒羅の魔力バリアを貫通できない。

 

「これはもっと接近する必要があるね。どちらにせよ、魏怒羅を魔法円の中心におびき出さないと・・」スーシィ(古史羅)がコンスにスタンシップⅡを魏怒羅に接近させるように指示する。

 

魏怒羅の眼の前に降りて行くスタンシップⅡ、超近接射撃なら貫通可能だろう。

魏怒羅からの攻撃があった場合に回避し、さらにおびき出すための即応態勢も取りながら接近するドラゴンモードのスタンシップⅡ。その船底部分に埋め込まれたようなアーマード古史羅の中身のスーシィは相当の覚悟だ。

今度は古史羅のアトミック・ビームだけでなく、スタンシップⅡの全砲門の射程内だ。

 

三たび古史羅の口から青白い光線が放たれると、同時に

「スタンシップⅡ、フルバースト!!!!」 超珍しくコンス自ら攻撃を号令する。

前方だけでなく側方の砲門も下方に向けて発射され、10以上のビームが魏怒羅に集中した!!

 

今度は相当な量のビームが収束したまま魏怒羅の魔力バリアを貫通し、魏怒羅本体を直撃した!

 

さしもの魏怒羅も相当のダメージを受けたのが見て取れた。なにしろ身体のど真ん中に背中まで貫く穴が開いたのである。

まるで勝ったような光景にアッコも狂喜する。

 

・・・が、その喜びもつかの間に終わってしまう。みるみるうちに穴がふさがれていく様を見せつけられたためである。

 

「え、えええ、なにそれ、反則じゃない・・・」 理不尽さに驚き、単純な怒りをぶつけるアッコ。

 

「再生能力を持っているのか? そのエネルギーはどこから来るんだ?」とアマンダは見て取り、コンスに解析を指示する。
コンスは既に行っているようだ。このあたりはアッコより頼りになる。

「魏怒羅は、この一帯のイグドラシルから魔力のエネルギーを得ているようだ。奴もイグドラシルから生まれたもの。ただ、異端なみたいなものだ。が、強制的に栄養を奪っている。まさに癌だ。」とアマンダがコンスの解析結果を解説する。

「そうか、だから魔法円が必要なんだ。我々がこの一帯の魔力を掌握し、奴へのエネルギー供給を止めて、そうして我々が掌握した魔力で浄化・消滅させるんだ。」
「おーい、アッコ、しっかり頼むぜ!」
 

「アマンダ、ありがとう。わかったわ。」納得し、応えるアッコ。

「風見あつこさん、国生み神社の魔女さん、よろしくお願いいたします。」

 

傷を癒した魏怒羅はスタンシップⅡに憎悪をむき出して追ってくる。

「射撃を続けながら、退避する。奴を魔法円の中心におびき出す。」 とうとうコンスも自分で喋りまくっている。

スタンシップⅡの全砲門が射撃を続けるが魏怒羅にはさして効いていない様だ。

 

魏怒羅は引力光線でスタンシップⅡの動きを止め、一気に距離を詰める。覆いかぶさるように絡みつき、電撃攻撃を行ってきた。空中で放電させる所がない。スーシィにも電撃が伝わってきた。「ぐわああああ、」の古史羅になっているスーシィも悲鳴を上げる。スタンシップⅡの電子機器にも異常が起き、スタンシップⅡは墜落して行く。

 

「プレスカパーマ!!」(*2)

誰かが呪文を唱えた。巨大な光の球が現れ、スタンシップⅡを包み、ゆっくりと海上に着水させた。そして、巨大な潜水艦が現れた。ヤスミンカが唱えた呪文だった。アッコ組、アマンダ組の6人の中でも最大馬力の魔力を誇るヤスミンカのパワーあふれる魔法だ。普通は人間用なのだが。

そして、潜水艦の中央のミサイル発射筒が開いた。ドミートリー・ドンスコイ時代に20基あった弾道ミサイル発射筒は半分が大型ロケット用として残され、残りは各種小型ロケット用に改造された。そこから大量の対空ミサイルが発射された。平和目的に改造された船だが、今回は特別に武器も積んでいた。

それでも、魏怒羅にさしたるダメージを与えることはできない。が、魏怒羅の動きを止めておく程度の効果はあった。

 

その間に魔女達はフォーメーションを整えていた。

 

◆魏怒羅の謎

 

「守護者勧請の儀式を再開!!」

古代より伝わる魔法円を開く浄化の儀式が東に配置した魔女から始まり、時計方向に1周すると、東西南北の守護者を招き入れる儀式が始まった。それぞれ特別なエレメンツが召喚されるが、根本的にはイグドラシルから魔力を分け与えてもらう儀式だ。

 

それぞれの魔女が十分な魔力を得た状態で、穢れの浄化の儀式を開始する。

魔法円上であらかじめコンビを組んだ魔女同士が円の中心を挟んで向かい合う、そして魔力の通り道を形成する。それを何人もで行い、中心で重なるようにすると魔力が集まる焦点ができる。それを魏怒羅に重ねるのだ

 

動き回り、抵抗し、反撃してくる魔獣に焦点を合わせ続けるには相当の技術と忍耐が必要だ。

 

最初の魔力の通り道が形成されていく、すぐには魏怒羅を捉えられないが、徐々に焦点の重ね合わせに成功しつつあった。

だが、魏怒羅は魔女達に引力光線を放ち、魔法円から引き剥がそうとする。

このかなりの遠距離戦を国生み神社の魔女達は巧みにこなしていた。

 

「すごい・・ 」アッコは感嘆するが、自分達もしっかり仕事をしないといけない。

風見あつこと形成した魔力の通り道は魏怒羅を捉えていたが、集中力を少しでも欠くと外してしまう。極めて忍耐の居る仕事だ

しかも、こちらにも引力光線はやってくる。よけると魔力の通り道が外れてしまう。が、すぐさま反対側の風見あつこがフォローしてすぐに照準を戻してくれる。このコンビネーションが大切だ。

引力光線につかまると、魏怒羅とは十分遠いので餌食になることはないにしても、大きく配置を崩され、脱出できたとしてもかなりの時間のロスになる。

 

この大変な作業を続ける魔女達だが、なにかおかしいことに気づき始めた。

魏怒羅への効果がなかなか現れないのだ。

 

「なにか、おかしい。」風見あつこが叫ぶ。

「アンドリューさん、これはやはり免疫ステルスでしょうか?」アンドリューに何かを問う。

なお、アンドリューやアーシュラ先生たちは国生み神社から淡路島東岸に場所を移し、淡路市役所前の広場に陣取っていた。

 

アンドリューが苦虫をつぶしたような表情で状況判断を見定めていた。

「魏怒羅め、奴にはイグドラシルの力は到達しないのか。まさに癌細胞みたいなやつだな。癌の免疫逃避機構のような能力を持っている様だ。」

 

「イグドラシルの力に頼ることはできない。我々、人間の力だけで対処しなければならないのか? それがイグドラシルが言う『お前たち自身の力で清めよ』なのか?」

 

◆蘇る古代魔法文明の魔神機

 

「ええ!イグドラシルの力が効かないの? それじゃあ、前提が崩れてしまうじゃない!?」

アッコが叫ぶ。

 

「アッコ、もうしばらく我慢してくれ、全く効いていないわけでもない、なんとか魏怒羅をそこに留めておいてくれ!」

アンドリューがアッコに伝える。

 

「もうしばらくって、何か手はあるの?」とアッコ。

 

「ああ、今、ルーナノヴァ本校でとんでもない作業が行われている。古代魔法文明の魔神機の再生だ。」

 

セシルも絶句する。「そんなことがいつの間に!?」

 

「申し訳ない、これも極秘作戦だったのだが、日本で発掘された古代の魔神機と思われる遺物をルーナノヴァに持ち込み、異次元の修復魔法で再生させる作業を進めていたんだ。かつての古代文明の民は魏怒羅を倒したはず、少なくとも封印した。魔神機にその鍵があると睨んでいる。というか正直言うとそれに賭けるしかない。」

 

「えええ、アーシュラ先生も知っているの?」とアッコ。

 

「もちろんだ、ルーナノヴァで陣頭指揮を取っているのはフィネラン先生だ。」

 

「え、え、え、そんなこと聞いていない・・・💦」 あっけにとられるアッコ。

 

そう、ルーナノヴァ本校ではとんでもない作業が行われていた。

クロワが発掘された遺物を解析し、修復工程を導き出し、修復を実現する魔法の設計を行った

その魔法には桁外れの魔力が必要だった。そのため、フィネラン先生は全校生徒、だけではなく、卒業生たちにも協力を求め、1000人もの魔女を集めたのだった。

そして、その魔法オーケストラとでも言うべき集団の魔法を束ねて発動させる指揮者は今、この時点、この世界において最高の魔女と言われているダイアナ・キャベンディッシュ、その人だった!!!

 

1000人の魔女達、その中にはアッコと学園生活を共にした面々も多数居た。エイブリー、イライザ、プリシラ、アリス、ブレア、メアリー、ケイティ、シャオイー、モリー、サラ・・・。

魔神機の特性に合わせてクロワによりカスタマイズされた修復魔法をクロワが設計した所定の手順で1000人の魔女を同期させて発動させる。魔法発動だけでもとんでもない作業だ。

 

だが、それがこの世界を救うための極めて重要で崇高な使命であることをフィネラン先生は全員に伝え、想いを一致させた。そして、ダイアナは具体的な方法・手順・技術を皆に伝え、訓練を積み重ねてきたのである。

 

そして、ついに異次元の修復魔法が実行された。

 

1000人が放つ「イェラ・ハトーラ!!!!!!」

 

石の様だった遺物は、見事な最新鋭のメカとして蘇ったのである。

 

ダイアナはさらに古代ルーナ文字からその能力と使用方法を解読していた。魔力を持っているものなら、直接魔神機から使い方は教授されるとのことだった。ただ、適性はあるようだった。

 

1つは恐竜型の戦闘メカだった。戦士然としたその機体はソルジャーと名付けられた。

2つ目は翼竜型の飛行メカだった。素直にウィングと名付けられた。

3つ目は潜水艇型のメカだった。素直?にダイバーと名付けられた。

これらは先行して日本で古代からそのまま持ってこられたストライカーと同種のメカであり、合体して最高の能力を発現させることも示唆されていた。

 

蘇った魔神機を日本にまで届けるのは、ダイアナ、クロワ、そして、フィネラン先生だった。

ダイアナはソルジャーに搭乗し、そのまま、これらの魔神機を束ねるリーダーとして戦闘に参加する。世界最高の魔女と古代の魔神機のシナジーはどのようなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。

クロワはウィングに搭乗したが、戦闘時の搭乗者はアマンダが担うことになっていた。

フィネラン先生はダイバーに搭乗したが、戦闘時の搭乗者はヤスミンカが担う。さらにフィネラン先生の娘のリラも同乗していた。

 

◆フィネラン先生の想い

 

フィネラン先生がブツブツと文句を言う。

「もう、そろそろ引退したい時期なのに、こんな大仕事をさせるとは。しかも、私が魔神機を運ぶとはね。」

 

「でも、日本に行きたいのでしょ。カガリさんと話をしたいことが沢山あるのよね。」と娘のリラが言う。

 

そう、フィネラン先生はそろそろ引退したいと考えていた。校長先生は若き新世代のアーシュラ先生に世代交代した。既に多くの改革を先導し、目に見える成果も出していた。しかし、細かい運営実務の指揮を担う教頭先生はまだフィネラン先生が担っていたのである。多量の実務をこなすための適切な制度設計を行い、それを効果的に機能させる様に人を動かす。そのため、時には厳しい指導力も求められる職種だ。

ただし、引退するためには後継者を用意しなければいけない。

その後継者としてフィネラン先生が考えていたのは、なんと!アッコだったのだ。

 

私も賛成よ。カガリ先生はお母さんの後継者として立派にやっていけると思うわ。

 表面的にはお母さんとは全然違うタイプだけど、心の奥底に持っているものは同じだと思うの。」

リラが意見をする。リラとアッコとの関係は極めて良好だったのだ。というより以前にも述べた様に(*3)アッコが逆にリラから学ぶ所も多かった。もうすでにリラを通じてフィネラン先生の指導が入っていたのかもしれない。

 

「でも、お母さんもたいしたものだわ。一時期は退学させようとしていた人を後継者に選ぶとはね。笑」リラが言う。

 

「ああ、そんなこともあったわね。私はそうそう間違いを犯さない人間だと思っていたけど、あれは、本当に人生最大の過ちだった。きちんと謝らないとね・・・」 フィネラン先生が反省を口にする。いつも厳しいことを周囲に言っているだけに珍しく思うかもしれないが、フィネラン先生は自分にも厳しい人だった。

 

「アーシュラ先生に救われたわ。アーシュラ先生もアソコまでなるとは思っていなかったけど・・。私の人を見る目もたいしたことはないわね。」とさらに反省を口にする。

 

「そういえば、お母さんはアーシュラ先生にも最初の頃はボロクソに言っていたと聞くわ。お母さんにボロクソに言われた人ほど、すごい人になる、という法則があるのかしら。笑」

 

「そうかもね~ 笑  カガリさんにどう伝えようかね~? きっと驚くわよね。」

 

「きっと、目が飛び出るほど驚くと思うわ。そして固辞するでしょうね。」笑いながらリラが答える。

 

「でも、どんな無茶ぶりにも真正面からぶつかっていったカガリ先生だから、最終的にはやると思うの。」リラは自信を持って断言した。

「カガリ先生が、お母さんが今回見せた様な力(組織力)を持ったら、まさに鬼に金棒よね!」期待に胸を膨らませるリラ。

 

「でも、まずは魏怒羅を倒さないとね。」

 

◆ユートの戦い カリンの悟り

 

「古代魔法文明の魔神機って、ストライカーもだろ。古代から持って来たんだから! ついに俺の出番がやってきたか----!!!!」

 

ストライカーに乗るユートがはしゃぎまくる。

「さーて、こいつの力はどれくらいだ。」

 

ユートはストライカーとの交信を試みるが、最初はあまり芳しくない、だが、カリンが手を添えるとストライカーから情報が濁流の様に入ってきた。

「な、な・・ちょっと待って・・」 まだ交信の仕方に慣れないユート、情報の流れに溺れ、掴めない。だが、カリンは比較的冷静だ。

 

お前は何者だ!? お前の力を見せてくれ---!!!(*4) 相手が意志を持ったヒトの様なモノであるかのように、感情を込めて問いかけるユート。

 

「道だ!!道が見えた。こいつは道を作れるぞ!!」 ユートが叫び、海に向かってストライカーを走らせる!!

緑の光条とそれに挟まれた白い道路状のレイロードにも似た道が形成され、海の上、いや、空中を走るストライカー!!!

 

「い、いや、これは・・・ダイナ・・・ストライカー・・・」

ユートの頭の中に、この機体の名称とも思われる情報が入って来た。

ダイナストライカー!!!、こいつの名はダイナストライカーだ!! やっぱり合っているじゃん!ストライカーで。」

いや、おそらく、ユートの思考との共鳴作用だろう。だが、ダイナは古代魔神機の本質を表したキーワードかもしれない。

 

空中に架けられた道を走り、魏怒羅に向かうユートとカリンを乗せたダイナストライカー!

 

海上からその光景を見るスーシィ(古史羅)、コンスタンツェ、ヤスミンカが驚きの目で見守る。アマンダも空中から凝視する。

「す・すごい、間隙でもないのに空を飛べるんだ、あの車!!」 搭乗経験のあるアッコも驚愕する。

 

「えーと、武器は・・・?」

正面の8連装砲がメインの武器のようだ。

「撃て----!!!」

エネルギー弾が発射された。

凄まじい連射速度で弾が魏怒羅に吸い込まれていく。まるでバルカン砲だ。

これは科学技術ではない、明らかに魔力によるものだ。

 

「このエネルギーはどこから来ているんだ?」 アマンダが疑問を呈する。

 

「イグドラシルからじゃない。イグドラシルと交信はできるけど、従属するものじゃない。対等の、人が作ったオリジナルの、魔力の創出マシンよ!!!」 カリンが叫ぶ様に答える。大人しいはずのカリンが、ここまで興奮するとは相当だ。というか、この空中に架けられた道を猛然と走りながら魏怒羅の攻撃をよけ、エネルギー弾を叩き込む、戦いの描写が、状況が、まるで勢いが半端ないロボットアニメを観ている様だ!! 状況を見守る全員が興奮に包まれていた。これは同時に人々の深い所に内在する魔力を解放して行く効果もあった。魔法円から魔力を投じる魔女たちの行為も効果を見せ始めていた。イグドラシルに頼らない人間起点の力が発揮されてきたのである。

 

 

大阪湾ヘキサグラム 白い航跡はダイナストライカーの進入経路 円はアンドリュー達が居る待機場所

 

◆勢揃いする魔神機

 

そして、ついに・・国生み神社の方から報告が入った。古代魔法文明の3機の魔神機が届いたとのことだ。

 

龍穴を出た3機はアンドリュー達が待機している淡路市役所前の広場に向かう。

 

ここで、ようやくスタンシップⅡの修理が完了し、再び離水の準備を始めた。スタンシップⅡにはヤスミンカも搭乗した。魔神機への搭乗のためである。基本的な作戦はアンドリューからコンスタンツェを通じて、大阪湾で戦うメンバーにも伝えられていた。今度はストライカーと魏怒羅の戦いを避ける様に飛び、さらにシューティングスターも収容して、魔神機との合流地点に向かう。

 

合流地点には既に3機が到着していた。

アーシュラ先生とアンドリューが3人を出迎える。

 

「ダイアナ! 本当にご苦労様、魔神機を蘇らせる大変な魔法の実行をよく指揮、遂行してくれました。本当に我が校の誇り、いえ、世界の誇りだと思います!!」アーシュラ先生がダイアナに労いと絶賛の言葉を送る。

 

「いえ、私なんかより、現場で身体を張って頑張っている人達の方が素晴らしく尊いです。特にアッコ、魏怒羅に身体を張って立ち向かい、次元の彼方に飛ばされる危険な目に合いながらも、生還してまだ戦っているなんて。今すぐに助けに行きたい気持ちです。」

そう、ダイアナは、アッコが行方不明になった時は、アンドリュー以上に動揺し、ダイアナらしからぬ取り乱し方をしたと密かに伝えられていた。それでも生還を信じ、自分のやるべきことに集中していたのである。

 

クロワはウィングから降りると、これら魔神機を扱うための方法をアマンダとヤスミンカに教授するための準備を始めた。

 

そして、フィネラン先生とリラがダイバーより降りてきた。

フィネラン先生が来ると、どんな時でも、どんな状況でも場が引き締まる。これは長年の努力と実績から来る「場を制する力」というものだろう。場の空気を支配する力、これも一種の魔法かもしれない。

ただ、この様な厳しい状況では却って頼もしい。なにしろ1000人もの魔女の力をもたらした人なのだから。

 

「フィネラン先生、本当にありがとうございました。フィネラン先生のおかげで蘇った魔神機、きっと、戦っている子たちに福音をもたらすに違いありません。」 アーシュラ先生が深々とお辞儀をして感謝を伝える。

 

スタンシップⅡがアーシュラ先生たちが陣取る広場の前の海に着水した。

アマンダとヤスミンカ、そしてコンスタンツェ、スーシィもやってきた。スーシィは変身を解いている。

 

「こいつが噂の古代魔法文明の魔神機か。私を乗せたくてウズウズしているんじゃないかな。話によると魔神機が搭乗者を選ぶらしいからな。」 アマンダがすぐにでも乗って飛ばしたい衝動にかられていた。

 

ヤスミンカは美味しいかどうか、といった観点でダイバーに歩み寄る。見ようによってはケーキにも見えるダイバーを割と気に入った様だ。

 

2人はクロワよりレクチャーを受けたが、基本の交信方法がわかれば後は直接やり取りした方が早いと、さっそく乗り込み動かし始めた。

 

そして、いきなりウィングを自在に飛ばすアマンダ。「さすが、大人になって正攻法のやり方も身に付けたようね。対応力が目覚ましく進歩している。彼女の才能のほとばしりが見えるようだわ。」 アーシュラ先生も感心する。フィネラン先生はさらに感慨深く眺める。問題児との付き合いも長かったからだ。でも、その付き合いの中でも確かな成長を感じ、アマンダの将来性を見て取っていた。アマンダが退学処分を覚悟した時もそうしなかったのは、もしかしたらアッコでの経験があったからかもしれない。(*5)

 

「アマンダ、ソルジャーと合体してみて!」ダイアナがいきなり実戦モードの訓練を呼びかける。

 

ソルジャーが猛然と走り出した。この4体(ストライカーも含む)で唯一、2足歩行のできる機体だ! そして、魔神機の動きにも搭乗者の性格や能力が表れる。無駄のないスムーズな走り、恐竜型であるにも関わらず、優雅ささえ感じられる。しかも速い!! 

そのソルジャーの動きに合わせて接近するウィング! 「行きますわよーー! ダイナソルジャー、ウィングコンバイーーン!!!」ダイアナが躊躇なく叫ぶ。既にこれらの魔神機の情報を全て掌握しているかの様だった。

アマンダもすぐにダイアナと息の合った連携を見せる。ジャンプしたダイナソルジャーに合わせてダイナウィングをその背中に見事に合体させる。そのまま、大阪湾の戦いの場に飛んでいくソルジャーとウィング。即、実戦だ!

 

一方、ダイバーも動き出した。潜水艇型ながら、海上をホバークラフトの様に疾走して行く。

 

「オラオラオラーーー !!!」 戦場では、ダイナストライカーに乗るユートが勢いだけを頼りに攻撃を続けていた。バルカン砲の連射に加え、バンパー部分からシールドを発生させ、そのまま魏怒羅に体当たりを試みる。それなりに善戦しているようだが、魏怒羅は余裕の表情を見せているかの様に思われた。

ついに魏怒羅が遊びは終わりとばかりに全身を震わせ、怒りを露わにしたかと思えば、その巨体を信じられないスピードで動かす。今度は魏怒羅からの体当たりで大きく吹き飛ばされるダイナストライカー! クルクルと回転しながら海にたたきつけられる。中で目を回すユートだが、それでもカリンが怪我をしないようにかばう。

 

そこにコンバイン形態のダイナソルジャーとダイナウィングがやってきた。ウィングが翼に装備された光線砲からビームを発射する。「なんとかビーーーーーム!!(*6) アマンダはまだ装備の名称を憶えきれていないようだ。

ビーム受けた魏怒羅の注意がダイナストライカーから逸れた。その間にダイナストライカーは体勢を整える。

そして、ダイバーもやってきた。ミサイルハッチを開いて多量のミサイルを発射する! 小型のローザヴィ・キートの様だ。実は通常装備の火力は4機で最も大きい。まさに最大馬力の魔力を誇るヤスミンカの乗機に相応しい機体だ!

 

◆ダイナゼノン降臨

 

ミサイルとビームの爆炎に包まれる魏怒羅。若干ひるんだとみるや、ダイアナは一気に畳み込みをかける。

「みなさん、用意はいいですか? 合体、行きますわよーーー!!!!!

 

「え、合体!? 」 ユートは驚く。ユートはクロワからこの魔神機の全体像を教授されていない。

「ええ、そうよ、みんなの心がひとつになれば、なんでもできますわ。ユート君、みんなと心を重ね合わせて!!」(*7)ダイアナが優しくも力強くユートにアドバイスを送る。

 

すると、ダイナダイバーが車体の中央から2つに分離した!驚愕するユート。カリンも驚くが冷静だ。

そして、ダイナソルジャーとダイナウィングの所に向かう。この両機も一旦合体を解き、フォーメーションを変える。ウィングがソルジャーに覆いかぶさるような位置についた。その際ウィングの後部のエンジン部分も分離した。ソルジャーは腕と脚を折り畳み、頭部と胴体のみの様な形態になる。そして分離したストライカーがドッキングし腕となった!

さらに海からダイバーが空中に躍り出る。ダイバーも2つに分離してドッキング、脚の部分になった。ウィングは前と後ろからソルジャーを挟み込む様にドッキングし、肩から胸部と背中を覆う鎧のようになる。さらに先ほど分離した後部エンジン部分がまるで兜のようにソルジャーの頭に覆いかぶさった!!!

さらに、ソルジャーの口が開き、その中から顔が現れた!!!!

 

「合体竜人! ダイナゼノン!!!!!!!!   降臨ですわ 」

ダイアナが優雅にも・・・しかし、力強く宣言する!

古代魔法文明の超絶魔神機、ダイナゼノンがここに降臨した。

 

まるで、神話に出てくる巨人!空耳か?「ダイナゼノーン、ダイナゼノーン」と神を称える歓喜の歌声が聞こえる錯覚に見舞われる。

これを観た誰もが、湧き上がる喜びに心が満たされ、自身の中に眠る魔法の力が火山の様に噴出してくるのを感じた。

そう、なぜ、古代の魔法の民がこれを建造したのか!? 今、その答えをこの合体シーンを見た全員が理解した。

合体は単に能力の向上や機能の転換ではない、合体プロセス自体が魔法の民の魔力を飛躍的に高める崇高な儀式だったのだ!!!

実際、魔法円に陣取る魔女たちの魔力がぐんぐんと増大して行くのが見てとれた。アッコもそうだ。

魔法円から魏怒羅に注がれる魔力も飛躍的に増大した。今度は効いているようだ。人間由来の魔力だからだ。魏怒羅が明らかに弱って行く。

 

「行きますわよーーーーー ダイナゼノン バトルGoーーーー!!!!!!!!」 

 

ダイアナが闘志をむき出しにして魏怒羅に立ち向かって行く。ダイアナは名門貴族の魔女家系のお嬢様、上品で優雅な大人の女性に成ることを求められていた。しかし、本当の彼女は違った。子供の様に純粋で、華やかで楽しいものに憧れる少女の様な心の持ち主だった。その心は長らく封印されていたが、アッコのおかげで解放された。だが、まだ他にもあった。平和の使者として国連で活躍し、対立する大国さえ友好国にするなどの目覚ましい活躍をした平和を愛する心の持ち主、と思われていた。だが、実際は、いざとなれば業火の如くに燃える魂を持った戦う人でもあったのである。

 

ダイナゼノンはリーダーとなるソルジャーの搭乗者で実は全体をコントロールすることができる。ダイアナは、両手からフィンガーフォトン弾(エネルギー弾)を連射して魏怒羅の動きを止め、さらに手から剣(ダイナセイバー)を出して斬りつける!!

裂かれる魏怒羅の身体。ダイアナの絶え間ない連続攻撃に再生している暇も無い。他の機体の搭乗者もダイアナの気迫に驚愕する。

「これじゃあ、ダイナゼノンというよりダイアナゼノンだ!!」ユートが冗談めいたことを言う。

ちなみにゼノンはゼウスに由来する。あの最高神だ。そしてダイアナも月の女神(ディアナ)だ。最高神と女神の合体!これぞ、古代魔法文明の魔神機と世界最高の魔女のシナジーか!!!

 

手の部分の武器はダイナストライカーのものだ。ユートが喜ぶ。「すげーな。ダイナストライカー!!」

 

他の機体も負けていない。脚の部分に当たるダイナダイバーから大量のミサイルが発射される。バーストミサイルだ!!さらにミサイルを発射しながら、回し蹴りを見舞う!バーストミサイルキックだ!!

倒れ込む魏怒羅。完全にダイナゼノンが押している。

 

ダイナウィングに装備された光線砲、正式名称ペネトレーターガンも肩に当たる部分から砲身を前に向けた。そして、手、脚の砲とミサイルも含めて全身の砲門を魏怒羅に向ける。

 

「ダイナゼノン フルバーストーーー!!! ・・ですわ 」

 

全身から出た砲弾が、ビームが、ミサイルが、魏怒羅に降り注ぐ。

爆炎に包まれ、その中でもがく魏怒羅。

勝利は間近に思えた。

 

「あと少しですわ。」

 

だが、魏怒羅も何かのタガが外れた様だ。全身から爆発的に電撃を撃ち放ち始めた。まるで荒れ狂う雷神の様だ。

凄まじい電撃に阻まれ、これ以上の攻撃ができなくなるダイナゼノン。

 

さらに、翼を広げ、大きくジャンプし体当たりをかましてきた。巨体に似合わぬ素早い動き、実は魏怒羅は格闘戦も得意だったのだ。そして三つの首がなりふり構わず噛みつき攻撃を行ってきた。

思わぬ反撃に虚を突かれ後退するダイナゼノン。そのまま押し倒されそうになる。

 

「ここが、踏ん張り所ですわ。 こうなれば、最後の手段、真の姿をお見せしましょう!!! 」

 

「みなさん、一旦、散開! フォーメーションを変えますわ!!!」

 

合体していた竜人が、またバラバラになった。そして、合体フィールドに包まれる!! 合体は魔法の聖なる儀式、そこは強力な結界となる。何者も合体を邪魔することはできない。

 

ソルジャーの脚が上にスライドし、横に大きく広がる。鋭い爪を持った脚が今度は腕になった!!! 脚の部分は今回もダイバーが担う。が、足からはダイナゼノン時には無かった爪が生えてきた! そして、ウィングは今回は素直に背中にドッキングし、さらに翼を大きく展開する。まるでドラゴンの翼だ。そして、エンジン部分はソルジャーの首の方に移動し頭部を後ろから覆って強靭な姿に変える。そして、最後に元の姿に戻ったストライカーがまるで尾の様に最後尾にドッキングした。ダイナゼノンは竜の要素を持ちつつも人型だったが、これは完全に獰猛な恐竜型だ!!!!

 

「これがダイナゼノンの真の姿!

 合体強竜ーーーーーーーーーーーー 

 ダイナレックス!!!!!!!!!!!! ですわ」

 

ダイナレックスは噛みつき攻撃のお返しとばかり魏怒羅の首に噛みつく。

レックスファングだ!!!

 

「デヤーーーーー!!!!!! 」  これまで誰も聞いたことのないダイアナの雄叫びが響く。他の搭乗者は度肝を抜かれる。その姿はまさに美しき野獣!!!!!

 

ダイナレックスは噛みついたまま、首を大きく振り、魏怒羅を投げ飛ばす!!

 

吹き飛び、空中で倒れ込む魏怒羅。

魔法円からの魔力もさらに増大し、魏怒羅はもはや動けない。

 

「トドメ行きますわ!必焼大火炎 レックスロアーーーーーーー!!!!! 」

 

ダイナレックスの口から放たれた凄まじい業火!! そのボリュームは古史羅のアトミック・ビームの10倍以上だ!! 魏怒羅の全身を包み込む大火炎に、魏怒羅は溶解を始めた。そして粒子の様になって、消滅していく。

 

全てはこれで終わるかに見えた。

 

 

◆魏怒羅の謎PartⅡ

 

ところが・・・・溶解していく魏怒羅の背後の空に黒い穴が開き始める。

 

そして、溶解する魏怒羅の身体が、粒子状にバラバラになっていきながら吸い込まれて行った。

 

「な、なに、あれは!?どういうこと?? ダイアナ、どういう現象なんだ?」とアマンダが尋ねる。

 

「別の・・・世界に行った・・・・ 」 カリンがつぶやく。

 

空がスクリーンになったような錯覚を皆がした。空に巨大すぎる魏怒羅が映し出されたのだ。

翼を広げたその大きさは30km以上! 空を覆いつくす。

 

「どひゃー!!! なんだ!これは!? 」アマンダが叫ぶ。

 

「何ということ? この理解しがたい状況では、通じない気がしますけど、やってみるしかありませんわ。」

 

ダイアナは再び、レックスロアーを放つ。

さきほどは魏怒羅を包み込んだ大ボリュームの火炎も30kmの魏怒羅の前には小さい。

そもそも虚空に吸い込まれていくように、通り抜けたような、届いていないような、全く手ごたえがなかった。

 

と、空に黒い穴が開いた! そこから魏怒羅の首が現れ、電撃攻撃をかけてきた。

虚を突かれ回避できないダイナレックス。電撃の威力も倍増しているようだ。ソルジャー部分を直撃され、ダイアナに電撃が伝わる。「きゃあああ 」と珍しく悲鳴を上げるダイアナ。だが、すぐに気を取り直し、反撃にでる。スパークバルカンとペネトレーターガンを発射する。が、首はすぐに穴の中に引っ込み、穴も消えてしまう。と同時に別の場所に穴が開き、同様の攻撃をしていくる。しかも、穴は一つではなく、どんどんと増加していった。(*8)

「な・・なに!? 3つ首じゃないの? 」 そう、まるでヤマタノオロチのように8つくらいある様だ。

 

広い空から神出鬼没の攻撃をかけてくる魏怒羅に完全に守勢に回るダイナレックス。これでは逆にやられてしまうのも時間の問題だ。

「ダイアナ、どうするんだ!? 」アマンダは相変わらず質問してくるばかりだ。

そんな中でもやけに落ち着いているヤスミンカ。

 

「こちらも魏怒羅の居る次元に行くしかない 」 カリンが答えた。

 

カリンの緑の瞳が光る!!! そして手を大きく広げた。その姿は何かを召喚しているかのようにも見える。スーシィが言うようにカリンは別次元にも行ける別世界の人なのか??

 

すると、反応したのはアッコの使い魔のドラゴン! ラモスだ!!

 

ラモスはファフニールが言う様に特別なドラゴン。時間と空間の間隙を飛翔する。しかし、秘められた力はそれだけではなかった。青銅色のドラゴンだが、間隙飛翔の時はときおり金色に輝く。しかし、今回は明白に黄金色に染まり始めた。

それだけではない、身体も大きくなり始めたのである。

黄金はまるで燃え盛る炎のようでもあり、爆発しているようでもあった。

 

「な・な・な・なんだーー!? あれじゃあ、まるで、まるで・・・・・」ユートが息をのみながら、或る名が口を突いて出てきた。

 

「ゴルド・・・バーーン!!!!!!!!!??」

 

そう、ラモスは黄金竜、ゴルドバーンに進化したのだ!!!!!!

 

「おねえちゃん、ゴルドバーンのところに行って。そして、ロッテさんも連れてきて!!」

カリンがアッコに呼びかける。その呼びかけは水晶玉を介せず、直接アッコの頭の中に入ってきた。ラモスと同じテレパシーのように。

 

◆アッコの進化

 

「え・・え・・、ゴルドバーンのところに?? ロッテもいっしょに!?」

戸惑いながらも魔法円からラモス、いや、ゴルドバーンの居る淡路市役所前の広場に流星丸を飛ばす。

 

指名されたロッテもおおいに困惑する。

「え、わたし、どうして?? 」

 

それにアーシュラ先生が答える。

「ロッテ、あなたはカリンちゃんと同じ力を持っているわ。前にも話をしたように。その力が必要なの。」

 

「え、何の力? そんな力、持っていません。」さらに戸惑うロッテ。

 

精霊と話をする力よ。」

「それにあなたはアッコの物語の続きを書くのでしょう。なら、クライマックスはその目で見ないと。」優しく話かけるアーシュラ先生。

 

「ロッテ、行こう!!!」

ゴルドバーンに乗ったアッコがそこにいた!!

 

「アッコ・・・・!!!!!」 ロッテもアッコの姿を見て、共に行くことを決意する。ロッテはアッコと出会えたことを・・・これまで何度も何度も繰り返し想ってきたことだが、神様に感謝し、アッコの傍にいて支える事こそが自分の役目であり幸せだと改めて心から思えたのだった。

 

アッコはロッテを乗せ、再び飛び立つ。すると、アッコにも変化が現れてきた。スサノオ大王から頂いた魔法神器が輝き始めたのだ。7つ全ての星が輝き、目も開けられないくらいの輝きにアッコは包まれる。

 

その輝きが収まると、現れたのは進化したアッコだった。それはまさにリボーン・アッコ究極体を呼べるものだった。

 

アッコの魔女服は沢山の装飾が施されたゴージャス且つ洗練された美しさを持つものになっていた。帽子のルーナノヴァの教師を表す羽も赤く煌びやかに変わっていた。アッコの髪も赤く輝き、まるでシャリオの様。長髪なだけにシャリオより華やかなくらいだ。そして、魔法神器も大きく変わっていた。もはやロッドとは呼べないアッコの背丈ほどもある所謂スタッフと呼ばれる巨大な杖に変貌を遂げていた。そしてなにより変わったのはアッコの風貌だ。さらに大人っぽくなり色気さえ感じさせるくらいの絶世の美女に進化していたのである。(*9)

 

これにはロッテも驚愕し、近寄り難い存在になってしまったかと、戸惑いを隠せない。

だが、そんな心配もアッコが口を開いたとたん、消え失せた。

「さーて、私も、楽しい、合体ショーに混ぜてもらうよーーーーー  行こう! ロッテ!!!

快活で子供っぽい口調はアッコそのものだ。

なお、進化したリボーン・アッコ究極体の名はマジカル・ミラクル・メリーーーーー・アッコ(M3アッコ)という。

魔法で奇跡を起こす楽しいアッコと言う意味だ。このマとミとメから始まる言葉の並びも実は重要なのだが、それはのちほど(おそらく次回)わかることになる。

 

◆超絶全員合体!!

 

アッコとロッテを乗せたゴルドバーンは一直線にダイナレックスに向かって飛翔する。

 

「みんなーーー、私もよせてーーーーーーーー!!!!! 」

 

アッコが叫ぶと同時にゴルドバーンはダイナレックスの下側に潜り込み、前方に出て、垂直に立ちはだかる。そして、ダイナレックスの胸部にそのままドッキングした。ダイナゼノンの時のダイナウィングと同様にダイナレックスの鎧となったのだ。アッコとロッテはダイナレックスにめり込む形になったが、そこは魔神機の魔力か、いつの間にかコックピットの様な空間ができ、アッコとロッテはそこに居た。

 

「やったーーー、合体成功!!! やっぱ合体は楽しい 魔力も倍増だ!!」 子供の様にはしゃぐアッコ。一段と大人っぽくなった容姿とのギャップがすごい。ロッテはどう反応していいかわからない。

 

すると、「私たちだけ置いてけぼりなんて、ひどいんじゃない? 」とスーシィの声がした。

 

スーシィとコンスタンツェが乗るスタンシップⅡもダイナレックス目がけて突っ込んできた!!!

 

「えーーー?? アンタら、合体仕様になってないんじゃ・・・ 」アッコが疑問を呈す。

 

しかし、コンスタンツェは自信まんまんの顔で、サムズアップする。

 

スタンシップⅡの船底が開いた。そこに収容されていたスーシィ古史羅は落ちそうになるが、かまわずダイナレックスの背中に古史羅を押し付け、開いた船底でダイナレックスを掴むように無理やりドッキングした。

 

「ちょっと、強引すぎるんじゃ・・・・ 」 苦笑するアッコ。

 

これで、ダイナレックスにゴルドバーンとスタンシップⅡが合体した。翼はダイナウィングとゴルドバーンとドラゴンモードのスタンシップⅡで3つもある。まるで三葉機だ! 顔はダイナレックスと古史羅の双頭竜だ。超弩級の超絶全員合体がここに完成した。

 

するとアッコの隣にダイナストライカーからどのように移動してきたかわからないが、カリンちゃんが居た。

 

カリンは、両手を前に突き出し、

「ゴルドバーン、協力して・・」と呼びかけ、

「アイビー・クルネッタ・・グルードーーーーーー!!!!!」

と(万能植物魔法?の)呪文を唱える。

 

すると、ゴルドバーンから2本の螺旋状のツタが出てきた!!

ツタは一気に空を駆け抜け、魏怒羅を映し出す空のスクリーンに突き刺さった。そして、強引に次元の扉をこじ開ける。

空に黒い穴が開いた!

 

「行けーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!! 」

 

アッコが号令し、全員が合体した魔神機が突っ込んでいく。

前から、カリン、アッコ、ロッテ、ダイアナ、アマンダ、ヤスミンカ、スーシィ、コンスタンツェ、ユート!!

 

「やった!9人いる。9人だよ。今回もニュー・ナイン・ウィッチだ!!!!(1人は男だが)」はしゃぐアッコ。

 

「ニュー・ナイン・ウィッチ-

 -カイゼル・グラン・シャリオン(NNW-KGS)だ!!!!」

 

アッコの口からほとんど思いつきで全員合体魔神機の名前が命名された!!!

 

「やっぱりグランシャリオンなのかい?? 」スーシィが突っ込む

 

9人を乗せた魔神機は空に開いた黒い穴に突っ込んでいった。

 

「とうとう、行っちゃいましたね。アンドリューさんはどうされるのですか?」ハンナが尋ねる。

 

「ナイトか? あの魔法はまだ完成していない。ここは彼女たちに任せるしかないだろう。」冷静に答えるアンドリュー。

 

 

クロワがアーシュラ、いや、シャリオに尋ねる。

「あなたも、だんだんとウッドワード先生に近づいてきたわね。」

 

「え、なんのことかしら?」と返すアーシュラ先生。

 

「彼女たちをここまで動かしてきたのはアナタでしょう? 全てはアナタの計画。。」とクロワ。

 

「いやん、勘違いしないでよ。」と笑うアーシュラ先生。

「そんなことは私には無理。彼女たちは私の想像のはるか向こうを行っているわ。私は彼女たちが動きやすいように、ほんの少しお膳立てをしただけ。。。 」

 

その後ろには満足そうな顔のフィネラン先生とリラ。

「彼女はいったいどこまで伝説をつくるのかしら?」あきれた顔でつぶやくフィネラン先生。

 

そして、お手上げ・・・と言った顔で肩をすくめるセシル。

 

 

◆次回予告 ついに最終回!

「ウィッチ達のユニバース」

別次元、マルチバースの世界に行ったアッコたち、果たして魏怒羅を倒し、元の世界に戻って来れるのだろうか。イグドラシルの本当の意志にロッテが歌声で応える。時をつなげたイグドラシルの意志を風見あつこが言葉にする。真の正体を明かした風見あつこは400年を超えたメッセージをアッコに届けた。そのメッセージに涙するアッコ。そして、追い打ちをかけるようにフィネラン先生からも試練のメッセージが・・・・。そんな中ルーナノヴァ日本校開校を祝うハイパー・ハッピータイムが始まった。

~ドッキドキのワックワク~

 

 

◆注釈

(*1) 「映画大好きポンポさん」の挿入曲より。再撮影のため再び結集する仲間たちを讃える曲。

(*2) TVアニメ6話にてアーシュラ先生が落ちて行くアッコとアンドリューに使った。

(*3) 第7話、ラモスと共に降りてきた時にリラと会話している。

(*4) SSSS.DYNAZENONの第1話にて、ガウマの言葉。

(*5) コミックスエース版コミック第11話より。

     退学を申し出たアマンダに下したフィネラン先生の処分は、

     いつもの”みんなで仲良く”掃除当番だった。

     驚くアーシュラ先生に向けた言葉は「比べるべくは過去、貴方の言葉でしょう。」

     見事なTVアニメ第7話の返しになっていた。

(*6) SSSS.DYNAZENON第4話にて、夢芽の言葉。

(*7) SSSS.DYNAZENON第3話にて、ガウマも同様の言葉を言っている。
(*8) 虚淵玄によるアニゴジ3部作に出てくるギドラの戦い方。

     首以外の本体は異次元に隠れていて結局出てこない。
(*9) 塚原春海_Zkahara_Harumiさんのこの絵のイメージ。感謝!