リトルウィッチアカデミア続編構想。
TVアニメ版の10年後を描く物語。
LITTLE WITCH ACADEMIA Journey through the Decade の第9話です。

「宇宙樹の真理(前編)」

 

※往路だけで結構な量になったので前・後編に分けました。

 

◆NASAアームストロング飛行研究センターにて

 

「アマンダ、魔法研究所のコンスタンツェなんとか・・と言う人から電話が入っているぜ。お前の知り合いか?フルネーム語られたら長すぎて覚えられねえ。」

 

「ああ、知り合いも何もルーナノヴァ魔法学校時代のルームメイトだ。コンスがしゃべるとは珍しいな。もしかして大変なことなのか。」

 

アマンダは現在、NASAの航空機研究所であるアームストロング飛行研究センターにて或る航空機のテストパイロットを務めていた。ただし、アマンダ自身はNASAの所属ではなく、アメリカ海軍航空戦開発センター、かつてトップガンと呼ばれていた機関の教官だ。アマンダの様な少々問題のある人物が教官にまでなった経歴は少し複雑だが、ここでは語るのはやめておこう。まあ、魔法の効能が認められ、パイロットには飛行魔法習得が必要と考えられ始めたことも要因ではある。

 

或る航空機というのは極超音速飛行研究機ダークスター(*1)。元々海軍で開発されていたものだが、無人機開発を優先するため開発計画は中止となり、NASAがスペースプレーン開発のための研究機材として引き取ったものだ。ターボジェットとスクラムジェットエンジンを備え、自立発進して最大速度マッハ10で飛行する能力を持っている。構造的には殆ど宇宙船であり、少しの追加部材により大気圏再突入も可能と考えられ、ロケットエンジンを追加して宇宙、大気圏双方で使える機体を目指している。

なお、アマンダの意向により、名称はシューティングスターに変えられていた。

 

「なんだって! アッコが行方不明になったって!?」

 

アマンダはコンスタンツェからルーナノヴァ日本校、および淡路島の国生み神社における魏怒羅との戦いで、アッコが次元の彼方に放り出されてしまったことを知った。

 

「ちょっと、すぐにでも日本に行きたいのだが、何とかならないかな。シューティングスターの長距離飛行試験を繰り上げるとか・・」

スタッフにシューティングスターですぐにでも日本に行けないか聞いてみるアマンダ。

 

「そんなことできるわけないだろ、

  ・・・・といっても、似たようなことをお前さんはやってきたんだよな。」

「ま、そういうのも楽しそうで悪くない。魔法研究所からの緊急依頼で凄腕の魔女をすぐにでもよこしてくれ、との依頼があったということにして、飛ばしてやるか! あの機体が飛ぶのは何度見ても興奮するからな。」

 

◆ルーナノヴァ本校での新世代入学生

 

「いでよ、ホウキ!!」(*2)

カリンがホウキを出してどこかへ行こうとする。

 

それを見たユートが慌てる。

「カリン、どこへ行こうと言うんだ!?」

 

「おねえちゃんが大変なの。イグドラシルの変なところを通って、おかしな所に囚われているわ。」

 

「おねえちゃんって、もしかしてカガリ先生?」

 

「そう。」

 

「それは大変だ!すぐに行こう。って、でもどうやって??」

 

「以前もやったけど、空間の間隙に入るの。一旦ラスタバンに行って、実はそこは日本の国生み神社とつながっているの。そこからは一気にハイウェイの様に行けるわ。」

 

「どうして、そんなことを知っているんだ。そんなことができるのも驚きだが。。。。」

 

そう、以前にカリンは7年前のラスタバンでファフニールと共にアッコのドラゴンライダー修行を見守っていた。

ただし、アッコからもたらされた未来の情報によるパラドックスを避けるためその記憶は当時のカリンにはなく、時間が追いついた時点で意識されるようになったのだ。

そして、現在、イギリス政府が日本の国生み神社の魔女達と共同で或るミッションを行うために、ラスタバンと国生み神社に空間間隙のハイウェイを形成したこともイグドラシルを通じて直感的に悟っていたのだった。

カリンはイグドラシルとも会話ができる謎の力を持った、まるで異世界から来たような特別な魔女だったのである。(*3)

 

「ともかく、俺も行く、俺はカリンのナイトだからな。」

 

そう、ユートは想いと意地でナイト宣言をしていたのだが、実はカリンの本当のナイトたる力も持っていたのである。ただし、現時点では本人もその力に気づいていなかった。(*4)

 

「アイビークルネッタグルード 空間間隙の扉よ、開け!」

 

アイビークルネッタグルードは植物魔法発動呪文だ。イグドラシルと会話を開始したのだろう。

アッコがラモスの力を使っておこなった様にレイラインにも似た空間間隙の扉が開いた。

 

その中に進入するカリンとユート。

 

内気なカリンがこのような行動に出たことに驚くユートだが、まだ知らないカリンの一面を垣間見たことにワクワクするユートであった。

 

◆イギリス政府のとある機関において

 

「おいおいおい、アンドリュー、大変なことになったぞ!」

 

「どうした?」

 

「風見あつこからの報告で、カガリ・アツコが次元の彼方に飛ばされ、行方不明になったそうだ。」

 

「なんだって!」

 

◆国生みの神社でのみんなの様子

 

アッコが行方不明になったことで一時は悲しみに暮れていた面々だったが、そんなことではいけないと、すぐに気を取り直し、アッコ探索を始めていた。

コンスタンツェが所属するNASA魔法研究所ではイグドラシルの研究に膨大な予算を投じてきた。その成果の一つでレイラインを筆頭にイグドラシルの痕跡を探査する宇宙樹レーダーをコンスタンツェは持ち込んでいた。

作動させると、画面には国生み神社周辺の龍脈がはっきりと浮かび上がった。

それを見て驚く風見あつこを始めとする国生み神社の魔女たち。

探索範囲は極めて広く、中国地方から東海地方を覆うほどだった。

だが、それでもアッコを見つけることはできなかった。

 

探索範囲は空間次元に留まっていたからだ。

アッコは別の時間に行ってしまった可能性が疑われた。

時空間にまで範囲を広げるには現在の科学ではまだ足りないものがあった。

 

風見あつこが口を開く、

「実は私達は時間の間隙を抜けてきた者なの。私達の本来居る時間は今から400年前。そこからイグドラシルの力を使ってやって来ることができた。いや、イグドラシルに導かれたのかもしれない。その方法をもう一度使うことができたら・・・。」

さりげに重大な事実を暴露する風見あつこ。

だが、セシルは何か納得した様な表情だ。

 

「そのあたりのデータはイギリス政府が持っているはずだわ。」

別の魔女が口を開く。

「彼らの協力を得られたら、道は開けるかもしれない。」

 

風見あつこが答える。「アンドリューさんには報告済、そろそろ動き出していると思うわ。」

 

「え、アンドリューが絡んでいるの??」

驚くロッテとスーシィ。

 

「それは、それは、何が何でも来るわね・・」

 

セシルも口を挟む。

「あの政府の特殊部隊と思っていた魔女達の背後に君たちの知り合いが居たのか?」

 

「そうみたいね。アンドリューのやつ、そんなことに絡んでいたとは・・」若干憤慨気味に答えるスーシィ。

 

◆やって来たもの

 

コンスタンツェ、いやスタンボットが慌てた口調で報告する。

「宇宙樹レーダーに空間間隙を高速で移動する2つの物体!!!」

「マジョデス、マジョデス。イヤ、もうヒトリはオトコ??」

 

「え、どういうこと。誰?」

皆が怪訝な顔する中、アーシュラ先生だけがほくそ笑んでいた。

 

ほどなく国生み神社の近くの龍穴からその2人が現れた!

「えーーーー、カリンちゃん  に、ユート君!?」

驚く、アーシュラ先生を除くみんな。

 

「やっぱり来てくれたのね。カリンちゃん。」とアーシュラ先生。

カリンの手にはもちろんシャイニィロッドが握られていた。

 

「行くよ、おねえちゃんの元へ!」

「ええ、頼むわ。カリンちゃん。」とアーシュラ先生も応える。

 

「アーシュラ先生は彼女が来ることがわかっていたのですか?」

ロッテが尋ねる。

「ええ。それにカリンちゃんはロッテの様な存在よ。」アーシュラ先生が応える。

「え、どういうことですか?」

「カリンちゃんは植物の声が聞こえるの。あなたが精霊と話ができるようにね。そして、誰かを助けたい、支えたい、それが彼女の一番大切な想いよ。」(*5)

 

◆やって来たものⅡ

 

すると、スーシィが東の空から何かがやってくるのに気づいた。

「ほら、あそこ、明るい光の点がこちらに向かってきている。」

 

「なに、流星? 昼間に見える流星!?」 ロッテがちょっと驚きながら反応する。

「いつまでも消えないね。ほんとにここに来るみたいだ。」とスーシィ。

 

スタンボットが事務的に報告を伝える。

「コンスタンツェ、シューティングスター、ヒライ、シュウヨウジュンビ、カイシスル。」

 

「シューティングスターって何。」「結局、流星?」

国生み神社の近くの浜、多賀の浜に着水していたスタンシップⅡが離水した。スタンボットによる自動操縦だ。

 

「へっへっへ、まだ流星モードで上を通過するよ。」操縦席のアマンダがつぶやく。

皆の真上を昼間でも見えるくらいに明るい流星が驚異の速度で通過した。マッハ10で飛ぶと機体先端の空気は断熱圧縮で4000℃にも達する。そのため流星の様に輝くのだ。(*6)

近くに来るとさすがにその速度に皆は驚く。そして、遅れて音がやってきた。すさまじい轟音だ。

 

「こ・これは・・ジェット機??」

 

「ターボジェットに切り替え超音速飛行は終了。スタンシップに着艦する。」

流星が速度を落とし、輝きも消えた。現れたのは真っ黒い機体だ。それが、スタンシップの後を追う様に飛ぶ。

 

「着艦の前に少し遊ぶかな。」

シューティングスターは超高速試験機であって本来曲技飛行ができるようには作られていない。が、風の魔法で空力を制御することで驚くべき機動を見せつける。

 

「あんな飛び方する奴は一人しかいないね。」とスーシィ。

「なんだか揃ってきたわね、懐かしい面子が。」

 

ちょっと遊んだあとスタンシップⅡに収容されるシューティングスター。

そして、着水したスタンシップⅡから懐かしい顔がホウキに乗ってやってきた。

 

「よっ、久しぶり!」とロッテとスーシィに挨拶をするアマンダ。相変わらずのテンションだ。

 

「ホント、久しぶり、噂じゃエリートパイロット相手に教官をやっているらしいけど。アンタの様な問題児が教官だなんて、アッコが教師になった以上に驚きだね。」と、こちらも相変わらずの毒舌を放つスーシィ。

 

「へっ、へっ、こう見えてもパイロット向け飛行魔法の指導に関しては高評価を受けているんだぜ!」

「アッコが飛べる様になったくらいだからな。結局のところ全ての人間は飛べる!ってことみたいだ。」

 

◆異次元空間突入作戦

 

人間本来の力を引き出すことに関して、魔法は今では世間的にも高い評価を受ける様になっていた。10年前とは大きな違いだ。

 

科学がまだ及ばないところ、そこを補うのはやはり人間の力、その力を使って、NASAの最新技術でも届かないアッコの行方を、これから彼らは探ろうとしていた。

 

まずカリンが口を開く。内向的だった彼女がここまで積極的になるのは、彼女は幼少期にアッコと同じような経験をしているからだ。ただ、その話は長くなるので、ここでは省略し(*7)、彼女の話を聞くこととしよう。

 

「私がイグドラシルと会話をして、意図せず迷い込んでしまったカガリ先生の居場所を聞いてみるわ。おそらく時間の間隙に入ってしまったと思うから、パラドックスの件にも注意してかなり慎重にコースを選ぶ必要があると思うの。なので、きっと私にしかできない。でも、もし失敗したときに備えて、誰かがバックアップしてほしいの。」

 

「そ、そりゃ~~、俺、俺だろう。。。」

と少し躊躇しながらもユートが手を上げる。

 

「いやー、君だと不安だらけだ。」とスーシィが毒舌を投げる。

 

「私達でも大丈夫かしら。私達はイグドラシルの導きで既に形成された間隙の道を通って来ただけだけど時間間隙の経験はあるわ。」風見あつこが応えた。

 

コンスタンツェが何か言いたそうだ。

それをスタンボットではなく、アマンダが代弁する。

「コンスと私はNASAの最新技術でサポートする。端末を渡すからそれを持って行ってくれ、宇宙樹レーダーの延長機だ。時間を超えてつながるかどうかわからないが、つながれば、宇宙樹レーダーで追跡できる。」

 

カリンは風見あつこを見た時、少し驚きの表情をした。「あ・あなたは・・・・」

何か不安なことを感じ取ったのだろうか、(*8)

しかし、気を取り直し、

 

「みんな、ありがとう。ユートは私のナイトだから、とりあえず付いてきて。アマンダさん、ありがとう。端末持っていくわ。風見さんたちはもしかしてイグドラシルとある関係を持っている様な気がするけど、それがどう作用するかわからないのが不安なの。未知の時空間を行くのは危険に思えて・・・私とユートが道を拓いてから何かあれば協力をお願いするわ。」

 

テキパキと指示を出すカリンに目を丸くするユート(え、こんなキャラだっけ??と戸惑う。)

 

すこし圧倒されながら、カリンの言う通りにするユート。

端末も受け取り、一旦空間間隙に入ってバックアップ体制の検証を行った後、イグドラシルと会話を行い、時間間隙に突入する手はずとなった。加え、風見あつこが発動したグラントリスケルのイグドラシルへの影響を推察した上で、イグドラシルとの交信内容をカリンが組み上げて行った。

 

「アイビークルネッタグルード 空間間隙の扉よ、開け!」

再び植物呪文を唱え、空間間隙に入るカリンとユート。

 

「あんな呪文、聞いたことが無いわ。ルーナノヴァの授業にも無かった。」驚くロッテ。

スーシィが何か悟ったような言動をする。

「あの子、そもそもこの世界の子じゃないわね。」

「ええ?何それ、」意味不明なことを言わないでよ、と言った顔をするロッテ。

 

「現在のところ追跡はできている。まあ、こここまでは仕様上、当然なのだが。。。時間間隙に突入してくれ。」

アマンダが指示をする。いつのまにかNASA側はアマンダが仕切っている。

 

時間間隙に入るには照合座標が必要だ。

カリンはイグドラシルと会話を始める。

 

「アイビークルネッタグルード!~宇宙樹の意志のあるところよ。私の声を聞いてください。あなたの歪から生まれた穢れに対して人間が行った過ちを修復したいの。もう一度あなたの所へ行くわ。だから、お願い、誤って巻き込まれてしまったカガリ・アツコさんの所へ連れて行って。場所を、座標を教えてください。」

 

「うう~~ん?よくわからないところがあるんだけど、それでいいの?」とユートが尋ねる。

 

「私と植物の会話は普通、人間には聞こえないんだけど、ユートはおかしいわね。」

「ま、いいか。」

 

「じゃあ、行くわよ。」

 

時間間隙に入るカリンとユート。

 

「おおおっ、画面が変わった! 別の時間の地図だ!!

沸き立つ国生み神社に残された面々、宇宙樹レーダーはなおもカリンとユートを捉え続けていた。

 

◆アッコ vs 魏怒羅

 

--少し時間を戻し、アッコが魏怒羅を撒こうとしたところから始めさせてもらうとしよう。

 

「鬼さんこちらーーーー!」

 

国生み神社に帰るために開けた空間間隙に入ってきた魏怒羅を遠ざけるため、アッコは杖に光を灯し、囮となって魏怒羅の前に出た。まるで、ルーナノヴァに現れた古の竜を誘い出すアーシュラ先生の様に。←ただ、この話はダイアナの、アッコと出会った予知夢の中のお話なのだが。(*9)

アッコは空間間隙から十分に遠ざけてから、目くらましのため光魔法の呪文を唱える。

「ルルスス・ミラミス・アクディアス・・・シャイニィ・エナージア!」(*10)

 

効果が有ったと判断し、急旋回して魏怒羅から遠ざかるアッコ。

しかし・・・・魏怒羅は頭が3つもある。そのうちの一つは目くらましを逃れたようだ。

 

「な・・なんなの? 身体が引き込まれる!??」

引力光線を受けてしまうアッコ。

 

暴れる魏怒羅に対し、グラントリスケルを受けたイグドラシルが反応する。イグドラシルの枝が実体化したかのように現れ、魏怒羅に巻き付き、どこかへ連れ去ろうとする。大きな黒い穴が開き、そこに吸い込まれる魏怒羅、だが、アッコもまた吸い込まれてしまう。

「ええ、ええええええーーーーーーーーーーー!? 」

 

◆次元の彼方のアッコ

 

「ここは・・・どこ?」

 

全く様子の異なる世界に一人で取り残されたアッコ。

ラモスとテレパシーを交わし道しるべを探すが、探索範囲には一つも無かった。

 

「なんてこと!? こ・こういう場合、ドラゴンライダーたるもの、どう対応すればよいの?」

パニックになりそうな心を静めながら、冷静に対処方法を考えるアッコ。

 

しかし・・・・「うーーーーん、何にも思いつかない💦」

 

ラモスに助けを乞うアッコ。

「道しるべを見失った間隙に居てもどうしようもないから下界に出るしかないと思うよ。」

 

「下界に出る。どうやって? そうか、ドラゴンはそれができるのか。

 で、今ここから出たら、どこへ出るのかしら?」

 

「それはやってみないとわからないよ。知っている土地ならラッキーだけどね。

 でも、異なる時間に行ったら、パラドックスに注意しないと。」

 

「でも、それしかないなら、やるしかないわ。ラモス、行って!」

 

間隙から抜け出たアッコとラモス。

しかし、そこは見たこともない土地だった。生い茂る木の種類がすでに大きく違う。

 

「幸いにも夜なので、星の位置を確認して年代を知ることができるよ。」

ラモスはドラゴンなのに、とても賢い。アッコは感嘆するばかり。

魔法で星座盤を出して確認するアッコ。

「魔法天文学はちゃんと身に付けたわ。アーシュラ先生の専門だもんね。」

 

「えええええ、なんか全然違うよ!」

「うーん、これは少なくとも5000年は違う。」驚愕するアッコ。(*11)

ラモスも困惑する。

「5000年はボクの能力でも200回間隙飛翔を行わないといけない。とても大変だ。と言うより無理。」(*12)

 

「え、えええ、もしかして、もう戻れないの?」

 

途方にくれるアッコ。さすがのアッコも2度目の心が折れそうな危機に直面する。

 

◆カリンとユートの時間旅行

 

「イグドラシルの傷を見つけたわ。魏怒羅が付けたものみたい。これを追って行けば、魏怒羅とともにアッコも見つけられるかもしれない。」カリンが言う。なんだかとてもしっかりした子の様に聞こえる。ユートはいつの間にカリンはこんな子になったのか?と驚くばかり。

 

傷を伝ってイグドラシルの枝を進むカリンとユート。進むにつれ奇妙なねじれ方をしていく。

「これは時間間隙の特徴だわ。時間を逆行しているわ。それも異常なくらい。えーと、NASAとはつながっている?」

 

アマンダが応える。

「つながっているよ。君たちの周りの地図がどんどんと変わっている。世界が変わっているんだ。これはすごいよ。」

 

「もうすくアッコが居た座標に到達するわ。シャイニィロッドが反応するか見るわ。」

シャイニィロッド、正確にはクラウソラス、かつてアッコが持っていたことからアッコにも反応するとカリンは直感的に感じ取っていた。

 

「反応したわ! やった! でも、ここには居ない。外だわ!!」

 

「外に出ます。イグドラシルの枝からはずれたら、宇宙樹レーダーの圏外になるかもしれないけど。」

アマンダが返答する。

「仕方がない、後はよろしく頼む。」

「ルートが問題なければ、私たちも応援に行けるかもしれない。」風見あつこも力になりたい気持ちを表明する。

 

「ユート、外に出るよ。」

「あいな、何が居るかしらんが、危ないやつは俺が対処してやるよ。」

 

◆東洋と西洋の魔法神器

 

「君は誰だね?」

 

アッコは突然、誰かの声を聞いた。

こんなところに人が居たの? とおおいに驚くアッコ。

(ええ?5000年前よね。人が居るの。しかもちゃんとした日本語話しているよ。でも、安心した~~~ 人が居るなんて)

 

現れたのは白い装束を纏った老人だ。

 

「あ、あなたこそ、誰なの? あ、すみません、私はカガリ・アツコ、えーと、知らないと思うけどルーナノヴァの魔女です。」

 

「おお、魔女か。そうだと思った。この龍穴から出てこられるのは強い魔法を使える者だけだ。」

「私はこの国を治めている王のスサノオじゃ。ヤマタノオロチが復活したとの報を聞いてやってきたのだが。」(*13)

 

(スサノオ? なんか聞いたことのある名前?)

思い出そうとするが正確な情報にたどりつけないアッコ(歴史は苦手)。

 

「君はどこの国の魔女じゃ? 一緒に居るその竜も興味深い。時を渡る能力を持っているな。」

 

「そんなのがわかるのですか。あなたも魔法が使えるのですか?」驚くアッコ。

 

「当たり前じゃ、誰でも魔法は使える王であるわしの魔法はすごいぞ。証拠に魔法神器をいっぱい持っておる。ひとつ見せてやろうかの。」

と、謎の老人は奇妙な形の杖を取り出した。

 

「え、シャイニィロッド!! シャイニィロッドだよ。」

形は若干違うが、7つの宝石が埋め込まれたその杖は確かにシャイニィロッドを思わせるものだった。

 

「シャイニィロッド? なんじゃそれは、お前も魔法神器を持っておるのか?」

 

「い、いや、前は持っていたんだけど、今は無いの。」

 

「そうか、じゃあ、これをやろうかの。他にもいっぱいあるし。」

 

「ええ、くれるんですか? でも、どうして。。。」たて続けのサプライズを浴びるアッコ。

 

「いや、この杖がお前さんを気に入ったような気がしてな。しかも巨門星が反応しておる。巨門星は七つ星の柄杓の底の部分だ。一番重要なところ。お前さんの干支は丑かの?(*14)

 

「え、干支、そ・そうなのかしら?」意識したことのないアッコは大急ぎで計算する。

(それに七つ星、柄杓って、北斗七星?)

 

杖は魔法使いを選ぶ。そんな一期一会は一番大切にしないといかん。なので、お前にやろう。お前さん、見かけはパッとせんが、実はすごい魔法使いになる気がする。会えてうれしいぞ。」

 

「え、は、はい、ありがとうございます!!」

なんだか訳がわからない展開で、混乱するアッコだったが、最悪の状況でものすごい幸運に巡り合えたかもしれない気がして、気持ちは一気にポジティブ方向に揺り戻るのを感じていた。

 

それに輪をかける様に、別の声が聞こえてきた。

 

「おねえーちゃんーーー!!」

 

え!?カリンちゃん??

アッコは時間旅行先のラスタバンでカリンちゃんと会ったことを思い出す。有り得ない場所で会う、その再来だった。

 

「カリンちゃん、どうして?」びっくりしながらも嬉しさ満面の反応をするアッコ。

 

「シャイニィロッドが反応したよ!!」 カリンもとても嬉しそうに声を出す。

 

「ええっ、シャイニィロッドが!?」 またまた驚くアッコ。何回目か?

 

「おお、それか、シャイニィロッドとやらは?」と反応する謎の爺さん、いやスサノオ大王。

 

シャイニィロッドが一段と輝きだす。それに呼応してスサノオ大王からアッコが頂いた魔法神器も輝き出した。

 

輝きはぐんぐんと増し、辺り一帯を照らし出す。もはや夜とは思えない明るい世界になった。

 

「なんてことじゃ。神器同士が共鳴しておる。

  こ・これは世界改変魔法と同じ現象が発生しておるぞ願いが叶うぞ!!!

 

カリンはすぐに状況をのみ込んだ。

「おねえちゃん、今、一番大事な願いを唱えて!!!」

 

「ええ、わたし? わたしが唱えるの?・・・とにかく、みんなのところに戻りたいわ!!! ・・・こんなに強く思ったのは初めてかもしれない。」

 

二つの神器が交差して、さらに眩い光の玉に包まれる。眩し過ぎて目を開けてられない。

 

光がおさまり、ようやく目を開け始めると、そこに有ったのは意外にも車だった。しかも近代的、未来的なレーシングカー然とした車だった。

 

「おおお、かっこいいーーー✨ 」

ユートが声を上げる。

 

「なんなの、どうして車が現れるの? 元の世界に戻らないの?」アッコは困惑の声を上げる。

 

ユートが早速乗り込もうとする。手を触れた瞬間、ユートは衝撃の様なものを感じた。

「こ・これ、時間を渡れるよ。」(*15)

 

それを見て、スサノオが密かにつぶやく。「この少年、時の王か?」

 

・・・後編へつづく

 

 

 

◆次回予告

「宇宙樹の真理(後編)」

5000年前の世界でアッコが手にした魔法神器と、今はカリンが持つクラウソラスから生まれた『魔法を帯びたスーパーマシン ストライカー』それを謎多き少年ユートが運転する。異次元時間旅行の帰路だ。しかし、宇宙樹の意志は人にさらなる試練を課す。人が生んだ穢れは人が清めよ、と。一方、アッコは日本の魔法神器の力を得て新たなステージに立つ(*16)。 さらに、裏で活動していた政界組の面々がついに表に姿を現す(*17)。

~ドッキドキのワックワク~

 

◆今後の展開

10話「宇宙樹の真理(後編)」 5000年前からの帰還

11話「All friends gathered」 かつての仲間全員集合
12話「ウィッチ達のユニバース」 お祭り

 

◆主題歌

「Dream Flight」

2期(日本編)から変わりました。

これまたゲーム(リトルウィッチアカデミアVR ほうき星に願いを)からです。

 

 

◆注釈

(*1)トップガン マーヴェリックより。

    開発中止の命令を無視してピート・ミッチェル大佐が飛ばし、マッハ10を達成した。

(*2)らくだい魔女の魔女はホウキを呼びだすことができる。

    ただ、幼少のカリンはホウキで飛ぶのが苦手だった。

(*3)異世界=らくだい魔女 らくだい魔女の世界は日本やイギリスも無い完全なファンタジー。

    簡単に異世界や異次元に行ける。

(*4)ユートにはチトセ成分を少し注入してある。

(*5)らくだい魔女の出会いの物語より。特別な力を持つ者に関する良いテーマが描かれている。

    多様性の尊重。

(*6)成層圏温度にて。ΔT=(T0+273)×0.2×M^2 T0=-60 T0:大気温度 M:マッハ数

(*7)飛べないカリンがママのスパルタで空から落とされフウカとぶつかるエピソードなど、

    初期のアッコに酷似。

(*8)未来に行くことと過去に行くことは大きく違う。

    過去から未来に来た者には大きな制約がある。

(*9)アニメミライ版より。アニメミライ版の話はダイアナがアッコと会う前に見た予知夢として

    この物語に組み込まれている。

(*10)以前にも登場したが、少女漫画版リトアカ「月夜の王冠」でアッコが使う光の魔法。

(*11)5000年というキーワードはSSSS.DYNAZENON(大元は電光超人グリッドマン)を参照。

(*12)パーンの竜騎士より。この世界の竜が一回の時間間隙飛翔で飛べる時間差は25年が最大。

(*13)とりあえず、日本神話を参照のこと(笑)

(*14)日本の北斗七星信仰より。干支により守護星が決まる。

     アッコは1997年生まれ(2013年アニメミライ時16才)説を取り丑年。

(*15)デロリアンネタにも見えるが、ストライカーです。笑

(*16)アッコは誕生日を迎えます。

(*17)アンドリュー出ましたが、ハンナ、バーバラ、ダイアナも。

     (ダイアナは満を持して11話より)

     やはりエリート(貴族)組が担当していたという訳で。

(追加) アマンダ組の最後ヤスミンカも次回登場します。

     彼女らしいスーパーマシン、ローザヴィ・キートと共に。