リトルウィッチアカデミア続編構想。
TVアニメ版の10年後を描く物語。
LITTLE WITCH ACADEMIA Journey through the Decade の第8話です。

「魔法と怪獣」

 

 

「ロッテ、スーシィ、お疲れ様。ルーナノヴァ日本校にようこそ!!💗」

アーシュラ先生が到着したロッテとスーシィを迎える。

 

「ズルいですよ。アーシュラ先生とアッコはドラゴンでアッと言う間に行くなんて。」

とスーシィが小言を言う。

 

「久々の飛行機の長旅だったよね。まあ、それもいいんじゃない。」とロッテ。

 

「ごめんなさいね。そ・それじゃあ、今からみんなで祝いましょう。ついに我らが魔法学校がアッコの故郷、日本に誕生しました! 日本でも魔法の素晴らしさを広めて行きましょう!! アッコは勿論ですが、皆さんも協力してくださいね💛 」

とアーシュラ先生がカフェテリアにみんなと現地の職員を集め、景気付けをしようとする。

 

「でも、まずはこれを何とかしないといけないよね・・・・。」

とスーシィがカフェテリアに置かれたイベント用プロジェクターの映像をTVに変える。

 

そこでは臨時ニュースが放送され、あり得ないスピードで日本に接近する台風のことを伝えていた。

あまりに異常なため、政府も観測機を発進させたとのことだった。

 

「ちょっと危ないかもね。コンスタンツェもそっちに向かっていると思うけど。」

とスーシィは何やら色々情報を持っているようだ。

 

◆日本と怪獣

 

「どういうこと? スーシィ。」

とアッコが尋ねる。

 

「アッコを襲った魔女が言っていただろ、『ぎどら』って、きっとそいつだ。」

とスーシィ。

 

「ぎどら・・・」

アッコは思い出す。アッコそっくりの魔女の言葉を。

 

「そいつは何なの? どうしてスーシィはそんなことを知っているの?」

アッコはスーシィがなぜそんなことを知っているのか?不思議で仕方なかった。

 

「アッコは日本の歴史で習っていたかと思うけど、日本には大昔、ヤマタノオロチという魔獣が居たんだ。」

 

「ヤマタノオロチ?! 確かに聞いたことはあるわ。でも、大昔のおとぎ話・・じゃない、神話だよね。そんなのが実在するの? 

 それにどうしてそんなことまで知っているの? きのこだけじゃないのね。スーシィがそんなに物知りだなんて、びっくりだわ。」

スーシィの博学ぶりに驚くアッコは、同時に自分の知識の薄さに焦りも感じ始めていた。

 

「ルーナノヴァでも東洋魔法史の授業があったと思うけど、そこでも出ていたと思うよ。それにドラゴン学Ⅱでも。」

とスーシィが知っていて当たり前のように言う。

 

「げっ、そうだっけ。」

(こんなことじゃ、またフィネラン先生に怒られるわ。専門外のことはまだまだ(教師になっても)わからないのよね。いや、ドラゴンを使い魔にしているのにドラゴンのことがわかっていないとバレるとちょっとヤバいわ💦)と焦り出すアッコ。

 

「それから、故郷に戻ってから、東洋の魔法や魔法動物、さらには魔獣についてすごく調査・研究はしたけどね。

 モフモフとの合体魔法で魔獣の能力を手に入れられないか?とかね。その能力でぎどらを倒せないか?とかね」

となにやらヤバそうなことをアッサリと言うスーシィ。

 

「ぎどらは、ヤマタノオロチとして神話化されているけど、古代日本人に呼ばれていた本当の名は『魏怒羅』(*1)で、非常に恐れられていたらしい。でも、魏怒羅は古代日本のおそらく魔法を使う民によって倒された(*2)。その記録に基づいてコンスと一緒に対策を練っていたのさ。」

とコンスタンツェとの秘密研究のことを明かすスーシィ。

 

「え、でも、魏怒羅を倒すって、そんなことできるの? 危険じゃないの?」

と心配になるアッコ。

 

 

◆魏怒羅

 

と、スーシィの水晶玉が緊急連絡の報を告げる。

 

「コンスから連絡が来たようだ。」

 

スーシィが緊迫感を持ちながらも水晶玉に向かって冷静に尋ねる。

「コンス、ついに魏怒羅に接触したのか?」

 

懐かしいコンス・・・ではなく、スタンボットの声が聞こえてきた。

(大人になっても自分で喋るのは苦手なようだ)

 

「ギドラ、マスマス速度をアゲテイル。ヒキツレタ雷雲が周囲に稲妻を放ち始めている。ア、観測機がヤラれた。」

 

「え、攻撃されているの?」真剣な顔になるスーシィ。アッコも驚く。

 

「観測機は雷雲の中にヒキコマレタ。スタンシップⅡは耐電撃シールドをテンカイ、トツニュウする。」

 

「無茶しないでよ。」 さっきまでヤバイことを言っていたスーシィだが、心配している。それを見て、さらに心配になるアッコ。

 

「雷雲にトツニュウ、電撃が襲ってくるが問題ナイ。このまま中心に向かう。中心まで推定300km。」

 

「300km!! なにそれ、でかすぎる?!」 驚くアッコ。

 

プロジェクター画面のニュースも緊迫度を増してきた。観測機が連絡を絶ったことを知らせていた。万が一に備えて自衛隊も待機させるとのことだった。

 

「えーー、戦争みたいになってきた。こわい」

いつもは威勢のいいアッコも、戦争はとても嫌な様だった。本来は戦いを好まないタイプなのだ。

 

「コチラ、スタンシップⅡ、ギドラの姿トラエタ、映像を転送する。」

 

スタンシップも速い!!もう中心に到達したのか。スタンシップⅡは風をコントロールする魔法を使い、台風の力を利用して中心に急速接近したのだった。映像が水晶玉に転送される。さらにそこからプロジェクター画面に転送、映し出された。

 

吹きすさぶ嵐の中で姿は鮮明には捉えられない。だが、3つの首と巨大な翼、2つの尾を持った恐ろしげな竜の影が映し出されていた。

 

「推定体長、首から足まで100m 尾を入れて170m 広げた翼の幅は300m 

スタンボットの音声が、魏怒羅の巨大さを伝えてくる。

 

「気ヅカレタ。電撃降り注ぐ。だが、全て受け流している。シールド性能はスバラシイ。もう少し奴の力を探る。」

 

だが、次の瞬間、画面が大きく揺れ、画像が乱れる。

 

「だ、大丈夫??」声を上げるアッコ。

 

「肉弾攻撃ウケタ。奴ノ身体能力アナドレナイ。スタンシップのままでは不利。いったん脱出スル。」

「アレ、脱出デキナイ??  引力光線ウケテル??」

 

「だ、だ、大丈夫なの??? 」 アッコがさらに心配になる。

 

と、コンスがついに声をあげる。

「ドラゴンモード!!」

 

「え、なにそれ??」驚くアッコ。

 

どうもスタンシップから翼が生えたようだ。魔力と科学の合わせ技だ。莫大な推力を得て、魏怒羅の引力光線から逃れるスタンシップⅡ。雷雲から飛び出し、日も落ちた空を飛ぶスタンシップⅡの姿を見れば、神話の世界に来たものと誰も勘違いするだろう。

 

無事脱出できたことを知り、ホッとする日本校の面々。

 

◆コンスタンツェとスタンシップⅡ

 

夢洲沖合、スタンシップⅡが姿を現す。

 

「なにあれ、でかい、前のスタンシップとは比べ物にならない。あれがコンスタンツェの自家用機? 冗談もほどほどに・・だよね。」

 

巨大な飛行艇型のスタンシップⅡ。ドラゴン形状の翼が魔法を帯びた巨大機械を体現している。全長は100m、全幅は150mを超え、現代のどの航空機より大きい(*3) だが、それでも魏怒羅よりは小さい。

 

「コンスタンツェ~~~ お疲れ~~、大丈夫だったーーーーーー」

着水したスタンシップⅡから降りてきたコンスをアッコが真っ先に駆け寄り、抱きしめる。

 

「うー、」嫌そうな顔をするコンス。

 

コンスタンツェ、身長は変わらないが、以前よりかなり大人っぽくなった様だ。

それは知性を感じさせる面からだろうけど、でも、一番の驚きはとても可愛くなっている(*4)ことだ。洗練された美しさと言ってもよい。言葉だけでは全く想像し難いと思うが。。。。。💦

 

スタンボットも以前より洗練されたデザインになっている。NASAで働いてきたことが良い影響を与えているのだろうか。

そう、コンスタンツェはNASAで宇宙開発に携わっているのだ。そして、深宇宙探査用ロボットの開発も行っているらしい。

今回は他にも秘密兵器を携えてきているとのスーシィの話だ。

そして、なにより、イグドラシルに関する秘密の研究を膨大な国家予算を使って行ってきたらしい。

(そろそろアメリカの底力が垣間見えてきたようだ。なお、これまたルーナノヴァ魔女達の裏コミュニティの情報だが、アメリカにはルーナノヴァ出身の凄腕魔女が海軍航空隊に居るらしい。(*5)

 

◆対魏怒羅作戦

 

「でも、あと何時間で魏怒羅はここに来るの?」アッコがコンスタンツェに尋ねる。

当然、魏怒羅はスタンシップを追って、というより、最初からここを目指してやってきている、とアッコも直感的に感じていた。

 

「きっと、魏怒羅は、国生みの島を目指しているのよね?」

アッコは自身のつたない推理、でも確信できる仮説を披露する。

 

「魔力のあるところ、魔獣あり、これは私も習ったわ。膨大な魔力を放出している国生み神社、それに引き付けられているのよね。でも、どうして国生み神社から膨大な魔力が出ているのかしら?」

 

「そう、そこがポイントね。」アーシュラ先生がやっと口を開く。

 

「おそらく、イグドラシルが異常状態になっていると思われるわ。それが最近の異常な現象の大元の原因だと推測しているの。遠い国の魔法界の民、それも現代ではなさそうな民が活動したり、太古の魔獣が現代に現れたり。でも、私の推測なのだけど、その謎の魔法界の民も何とかこの状態を正そうとしていると思うの。イギリス政府も密かに関わっていると思うけど、悪いことをしているわけではないと思うわ。だから、魏怒羅に対しても良い方向の対応をしてくれると思うわ。」

 

アッコが口をはさむ。

「そういえば、スーシィがぎどらみたいになった時にとても驚き、対抗心をあらわにしていました。」

「あ、でも、私達がぎどらと同じ側と勘違いされたかもしれませんよね。え、もしかしてそれはヤバイかも。。。。。」

 

プロジェクターに映し出されていたTVが新たなニュースを伝える。

NASAの魔法研究所から派遣された部隊が日本に到着したようです。この台風には魔法が関わっているようです。」

 

「え、これって、コンスタンツェのこと!? 私たちニュースになっているの?」

驚くアッコ。

 

「そりゃ、そうでしょ。こんだけ派手なものを人知れず持ってくる方が大変だよ。」とスーシィ。

 

「では、いよいよ、対魏怒羅作戦開始ね。」とスーシィがニタニタしながら何やら怪しいことをコンスタンツェと始めようとしていた。

 

スーシィはまたもや、ラスタバンで見せた謎の魔獣モフモフを出してきた。

「ここじゃ、狭いから屋外に出るね。」

とグラウンドの方に向かうスーシィ。

 

コンスタンツェもまたスタンシップⅡに戻って行った。

 

グラウンドに出るとスーシィは、モフモフを前に置き、精神を集中するかのように凝視する。

何か、モフモフに変身する姿を強力な思念で送り込んでいるようだ。

 

モフモフも身震いを始めた。何か恐ろしいものでも入り込んできたかの様にかわいい魔獣が怯え出す。

強烈なストレスを浴びているようにも見える。

 

アッコ達は、何やらスーシィがヤバいこと-黒魔術でも始めたか?といった目で固唾をのんで見守る。

 

数分が経っただろうか、精神集中のMAXに達した様な形相で、スーシィが呪文を唱えた。

モフモフはものすごいストレスに耐えている様にも見える。

 

「インスタンシア・・・・・・アブリアクション!!!(*6)

 

突如、ピンク色の光線にあたり一帯が包まれた。そして爆風とピンク色の爆炎がグラウンドを覆う。

 

グワーッ

 

グラウンドのど真ん中に巨大な怪獣が出現した。

 

以前の似非ぎどらではない。

巨大な直立不動型のイグアナのような生物だ。

なにより特徴的なのは背中の巨大なギザギザの背びれ。

背丈は80mに達しようか!

 

「なにこれーーー!!!!」アッコが叫ぶ。

 

「とんでもない、本格的すぎる怪獣じゃない!? スーシィはどうなったの、大丈夫なの??」

 

古史羅か。」ここでセシルが口を開く。(*7)

 

「え、なに、ご・・じ・・  」

 

「古代日本の魔法の民が魏怒羅を倒すために使った魔獣だ。」セシルが回答する。

 

「え、そんなのが居たの? なに、日本って怪獣だらけ?」 驚愕するアッコ。

 

「まだまだだよ~ 」古史羅になったスーシィが話かけてくる。改めて驚くアッコ。

 

スタンシップⅡが離水した。

 

「レッツ、メタモル・フォーメーション!!」スタンボットがコマンドをつぶやく。

 

「へっ、へっ、今度はグランシャリオンじゃないよ、アッコ、見ときな・・・」

スーシィが自慢げにつぶやく。

 

スタンシップⅡの船体が割れ、内壁が中世の鎧のようなものに変形する。

兜はまさにハウンスカルだったが、犬型というより爬虫類の姿に近い。

それが剥がれ、古史羅に向けて落下してきた。

 

「インスタンシア・・・・・・ドミネーション!!!」魔獣になったスーシィがまた呪文を唱える。(*8)

 

これは鎧を自在に動かすための魔法なのか!?

 

鎧が生き物の様に動き、古史羅と合体した!!

「こ・これは・・・・メカ(ロボ?)ゴジ・・・?💦」誰かが謎のつぶやきを・・・

 

「これで、魏怒羅の電撃にも十分耐えられる。肉弾戦のためのパワーも得られた。迎え撃つ準備完了。」スーシィが宣言する。

どうも、スタンシップⅡから放たれたものは古史羅のアーマー兼アシストスーツ的なものらしい。

動力源はグランシャリオン同様、魔力のようだ。

 

唖然とする、アッコ他、日本校の面々。

 

そんな中、

「うーむ、ここまでやるとは! ルーナノヴァの魔女、すごいな・・・」とセシルが感嘆しながらも冷静さを保つ。

 

「僕も古代魔法文明の存在を信じる側になりつつあるが、ここにまた実証実験のこれほどの成果を見ることになるとは!」

独り言とも重大な秘密の暴露ともつかない言葉をつぶやくセシル。

 

さらに、プロジェクターに映し出されているTVニュースでもこの状況を伝え始めた。
「夢洲に出現した怪獣型のロボットですが、情報によりますとこれは自衛隊が秘密裏に開発していたもので機龍と呼ぶそうです。」
「え、なになに、どういうこと」 ロッテが困惑する。
「まあ、世間的にはそういうことにしておくのが一番安心するということで・・・」とアーシュラ先生が説明する。
アーシュラ先生も裏でいろいろ活動していたようだ。

 

◆国生み神社の魔女たち

 

一方、国生み神社を監視している部隊からも報告が上がってきた。

 

「国生み神社から莫大な魔力が立ち昇っています。もはや肉眼でも確認できます。まるで光り輝く竜巻の様です!」

 

「魔女たちも確認できます。その数40以上。」

 

「え、魔女たち!? もしかして・・・・」

アッコは、ラスタバンでファフニールさんが倒れていた時に遭遇した光の魔法を使う魔女、続いてストーンヘンジで遭遇した政府特殊部隊と言われた魔女達、そしてブライトンベリーからラスタバンにホウキレースをしたアッコそっくりの魔女のことを思い出す。直感的に彼女たちだと判断したアッコは、大胆不敵な申し出をする。

 

「私が彼女たちのところに行きます。今度こそちゃんと話をします。私達が今回のこんな出来事の元凶ではなく、ましてや魏怒羅とは関係ないこと、そして、できれば一緒にこの事態に立ち向かうことを話合ってきます。」

 

アーシュラ先生に直訴するアッコ。しかも、今回は単身で乗り込み腹を割って話し合う覚悟とのこと。ラモスもドラゴンなので刺激してはいけないと思い、連れて行かず、流星丸で行くとのことだった。

 

「アッコがそこまで言うなら大丈夫だと思うわ、さっきも言ったように彼女たちも悪い人達じゃない気がするの・・・」

 

あっさりと楽観的な見解とともに許可するアーシュラ先生。

それにはロッテが驚愕する。

 

「ええええ、アッコを殺そうとしていた魔女ですよ、そんなの絶対だめ、しかも相手は40人ですよ。危険すぎます!」

必死で猛烈に抗議するロッテ。

 

アッコが声をかける。

「ロッテは本当に優しいね。でも、大丈夫、よね・・・セシルさん。」

 

「ああ、おそらく、あの魔女は君を殺すつもりは全くなかった。あわてて退散したため残して行った証拠品、あの刀では人を殺すことは不可能だ。あくまで脅しのつもりだったのだろう。」

 

「そう、それにね、私は何か血のつながりを感じるの。似ているだけじゃないの。ホウキレースの時に感じたのよね。本当に別の世界の私だって・・・」

 

ロッテは訳のわからない論理で丸め込まれているような感覚は持ちつつも、少なくとも相手の魔女に殺すつもりは無かったことを知り、少しは安心した。が。。。

「本当に1人で大丈夫なの?? 何かあればすぐに連絡してね。」

 

「ああ、何かあればすぐに連絡する。でも、ロッテ、大丈夫だよ!! こんなに自信満々に言えるのも珍しいよ。」

 

(いや、意味不明な自信はいつも有ったような気がするけど・・・)とロッテは素直に同意できなかったが、そこまで言うなら、もう止めてもムダということは重々理解していた。

 

*******

 

流星丸に跨り、夢洲のルーナノヴァ日本校から飛び立つアッコ。淡路島の国生み神社に一直線に向かう。

 

国生み神社に近づくと立ち昇る魔力が肉眼ではっきりと見え、その巨大さに圧倒される。しかもそれが渦を巻きながら立ち昇る。本当に竜巻のようだ。そこに巻き込まれるとどうなるか想像もつかない。その先は宇宙につながっているかの様に、高さは確認不能だった。

 

その竜巻の周りに魔女たちは居た。一瞬ためらうも気合を入れ直し、向かうアッコ。

アーシュラ先生直伝の魔法のマイクで魔女たちに呼びかける。

「私はルーナノヴァ魔法学校のカガリ・アツコです。あなた方と今回の件について話をしたくてやってきました。話合いに応じてくれますでしょうか。私は1人です。敵意などは全くありません。どうか、よろしくお願いいたします。」

 

何も反応はない。。。。

 

さらに接近するアッコ。

 

すると魔女達の中から、アッコに一直線に向かってくる者が。とてつもなく速い、流星丸そっくりのホウキに乗った例の魔女だ!

 

「あ、あなたね」とアッコが声に出す間もなく、その魔女が刀を取り出し、アッコに斬りかかってきた。

 

だが、アッコも武術と忍術を鍛えていた。一瞬の早業でアッコも日本刀を取り出し、受け止める。

 

「フッ、私の正体に感づいたのかしら。それに腕も上げた・・・」

例の魔女が何かを悟ったように語りはじめた。

 

「なら、いいわ。この事態を収束するために、あなたにも協力してもらうわ。

 魏怒羅が来たら、奴をこの魔力の渦に誘い込んで欲しいの。」

 

「渦の中に入ったら、どうなるの?」

 

「次元の彼方に放り出される。」

 

「イグドラシルの隠された力が表出されたものだ。星々をつなぐだけではない。時をもつなぎ、さらには次元をつなぐ力だ。今回の魏怒羅出現もこれが原因だろう。だが、これを制御できる者は残念ながらまだ居ない。だが、今は毒を以て毒を制す、それしか無い。とにかく今は、どこか別の場所・次元に放り出すしかない。」

 

「わかったわ!」

 

◆魏怒羅襲来

 

大阪湾の天候が急激に悪化しだした。

 

TVのニュースが台風の状況を伝えていた。

「謎の台風は形を変えながら、関西に上陸しようとしています。大阪湾の形に合わせて蛇の様に南北に延び、すさまじい雷を伴いながら湾内に進入してきました。」

 

   2023/7/10実際に巨大雷雲が大阪湾に到来

 

あっという間だった。

ルーナノヴァ日本校周辺の風景が、暴風が吹きすさび、無数の稲妻が走る地獄のような光景になってしまった。

 

「ぐわー、これは想像以上ね。」 スーシィ古史羅も、この凄まじい魏怒羅のプレッシャーにやや押される感じだった。

 

魏怒羅は、淡路島の国生み神社ではなく、夢洲のルーナノヴァ日本校を第一標的にしているようだった。

古史羅に反応したのかもしれない。

 

無数の稲妻がスーシィ古史羅に襲いかかる。

 

だが、メカ古史羅のアーマーが全ての電撃を受け流し、地上に放電しているようだ。スーシィにダメージはない。

 

その様子はNASAの魔法研究所でもモニターされていた。

物理的な力と魔力との関係を導きだすためのデータを取得するのが主な目的だ。

 

特に魏怒羅の気象を操る能力は注目されており、宇宙空間をバサード・ラムジェット推進で航行するための技術にも役立つと考えられていた。なお、バサード・ラムジェットのエンジン部分となる核融合ロケットエンジンは密かに完成していた。あとは宇宙空間でその燃料を集める引力機構が必要だったのだ。しかも核融合ロケット技術を応用したアトミック・ビーム砲がこのメカには装備されていた。データを収集した後はそれで魏怒羅を葬る手はずだった。

 

「魏怒羅の魔力を感じる。こちらも気合を入れるよ!」スーシィが本気を出してきた。いつも斜に構えるスーシィだが、本気になると恐いのは、アッコの危機にもう一人のアッコと対峙した時にも見られたものである。

 

ついに姿を現した魏怒羅、その怒りに満ちた眼でメカ古史羅を睨みつけ、金色の身体を輝かせながら、体当たりをかませてきた。3本の首と2本の尾を絡ませ、巨大な翼で包み込み全身から電撃を浴びせる。

 

メカ古史羅のアーマーの放電容量を超え、一部の電撃がスーシィ古史羅に届いたようだ。それでもスーシィは痛みに耐えながら反撃する。

「メガイラにやられた時みたいだが、まだまだ今の方が余裕がある。コンス、アレをやるよ。」

 

********

 

「え、魏怒羅はこちらじゃなくて、ルーナノヴァ日本校に向かったの!? スーシィは大丈夫?」魏怒羅襲来に備えて身構えていたアッコだが、ルーナノヴァ日本校に向かったことを知って、一気に心配になり、戻ろうとする。

 

「ダメだ、ダメだ、戻るんじゃない。こちらの魔力を魏怒羅に向けるんだ。餌がこちらにあることを知らせるんだ!」

「それから、間隙飛翔できるドラゴンを呼んでくるんだ。イグドラシルの深部に入って制御するにはその力が必要だ。」

 

「ラモスのことを知っているの? 」意外な言動に驚くアッコ。

 

「ああ、当然だ。我々もそのドラゴンを手に入れようとしていたのだから。だが、ファフニールの親父に邪魔をされた。」

 

「そういうことだったの?!」

いろいろ問い詰めたい衝動にかられながらも、今は、彼女らの指示が最も有効に思えたことも確かだ。

 

アッコはラモスを呼び、暴走した?イグドラシルが吹き上げている魔力の竜巻を制御するため、その中のイグドラシルの枝を目指して飛翔するための準備を始めた。

 

********

 

「カクユウゴウ パルスエンジン シドウ!!」 スタンボットがコマンドを告げる。

 

古史羅のメカアーマーの尾部に装備されたエンジンが作動を始めた。これは核融合炉ではなく、超小型の水爆みたいなものだ。このエネルギーを収束させたものが、アトミック・ビームだ。

なお、収束には今のところ魔力が必要となる。そのため、魔力を持った者との合体が必要だったのだ。

 

だが、まずは魏怒羅を引き剝がさないといけない。

「スーシィ、衝撃に気を付けて!」コンスタンツェが自分の声でスーシィに注意を促す。コンスも本気モードだ。

「アトミック・パルス撃つよ!!」

体内放射とも言われるアーマー全身から出す衝撃波だ。

 

衝撃波と言いながら発せられた時は古史羅から眩い光が放たれた。

魏怒羅は衝撃で吹き飛ばされる。思っていた以上の威力だ。だが、スーシィもダメージを受けたようだ。

 

「うーん、悪いけど長時間は持たないね。こんなにハードだとは。。。コンスの奴・・・私をモルモットにするとは・・」

不満を言い出すスーシィ。まあ、いつものことだが、本気で頑張っている今は実際その通り厳しいのだろう。

 

********

 

道しるべを見つけたわ!!!」アッコが叫ぶ。

 

魔力の渦の中に間隙飛翔に必要な道しるべを発見したアッコ。間隙飛翔は空間にしろ時間にしろ、それが重要だ。その照合座標を特定することで制御された飛翔が可能となる。それを失うと間隙の中で迷子になり、最悪戻って来れなくなる。

 

「でも、イグドラシルの隠れた力を制御するって、どうするの?」アッコが肝心なことを問う。

 

「それを実際にできた者は居ないが、今回は私が試す。一緒に行くわよ。それに魏怒羅と万が一戦うことになったら、経験の無いあなたには無理があるわ。」アッコそっくりな謎の魔女が応える。

 

「ありがとう、そろそろ、できれば、あなたの名前も教えてもらいたいな。」

 

「はは、私の名は風見あつこ。アッコって呼んでもいいよ。笑 」(*9)

 

「え、ええええ、!?」

 

魔力の渦に向けて間隙飛翔に入る、アッコとアッコ

 

垂直に立ち昇る渦に横方向の渦のような道が開いた! ちょっと強引過ぎる気もするが、その中に突っ込むラモスと2人のアッコ!!

 

◆宇宙樹イグドラシルの真理

 

イグドラシルはかつて星々をつなぎ、無尽蔵の魔力を生み出してきた。

その源泉は星々それ自体の中を流れる巨大なエネルギー、日本に伝わる言葉で言えば「龍脈」を流れるエネルギーだった。

 

星、ここでは地球、それ自体が持つエネルギー。古代の人々は大地に流れるそのエネルギーを星の生きる力と捉え、最大限の敬意をもって利用してきた。そのための技術(秘術)が魔法と呼ばれるものだった。

 

だが、産業革命以降、魔法は衰退の一途を辿り、人類の力は地球の環境にも看破できない影響を与えるまでになった。星と人類の調和が崩れ、大きな災害が頻発するようになってきた。

 

今回の騒動もその流れの中で起こったものと考えられた。

 

これを是正するために星はイグドラシルの神秘なる力を発動させた。時をつなぐ力である。古代人の知恵を現代人に教えるために。

 

*********

 

魔力の竜巻の中に来たわ。すさまじい魔力だわ! こんな感覚は初めて。」

 

「竜巻を出している大河の中、龍脈の中だ。魔力に溺れるなよ。それから噴出する場所を龍穴と言う。その噴出口を魏怒羅の方へ向けることができればいい。」風見あつこが続ける。

世界改変魔法が適しているかどうかわからないが、今はそれしか手が無い、やってみる。」風見あつこが方法を明かした。

 

「え、世界改変魔法!?  そ・それなら・・・私、も・・・ というか、イグドラシルの枝、持っているの??」

アッコが驚いて尋ねる。
 

「ああ、長年にわたる龍脈探索の旅でようやく手に入れた。」答える風見あつこ。

 

「7つの言の葉を見つけたの?」アッコはかつての世界改変魔法に辿りつくまでの道のりを思い出す。

 

「それは西洋の国の話だろう。こちらはまた違った・・・しかし大変な苦行の末、手に入れたものだ。」

 

風見あつこが、世界改変魔法を唱える。

「龍の神よ、お前の中の穢れたるもの、お前自身の力で清めよ。」

 

アッコは認識した。

そうだ、世界改変魔法-グラントリスケルは唱える者の想いを実現する魔法だ。

魏怒羅がイグドラシル=龍脈の生み出した負のパワーが実体化したものなら、その願いは龍脈自身に解決をさせる-今回は魏怒羅を吸い込むことになるだろう。

 

◆魏怒羅ビーコン

 

スーシィはとんでもないものを見た。

 

魏怒羅の背後に虹色の光の柱が立ち昇ったのだ。

明るく輝く光の柱。それはまるで、ちょっと例えがおかしすぎるのだが、害虫を集める誘虫灯(ビーコン)の様だった(*10)

 

そして、その通り、魏怒羅はくるりと向きを反転させ、もはや古史羅には興味が無いとばかり、飛び立って行った。

 

あっけにとられるスーシィとコンスタンツェ。そしてルーナノヴァ日本校の面々。

 

「あ、アッコは? うまく行ったのかしら?」ようやくアッコのことを心配し始める。

 

***********

 

「魏怒羅が来たわ!!」

風見あつこが叫ぶ。

 

「大成功ね。すごい勢いでここに向かっているわ。確実に入ったことを確認したら退散ね。」

 

魏怒羅が魔力の竜巻の中に入ってきた。渦に吸い込まれ、アッコ達が居るイグドラシルの枝、龍脈の大河にまでやってきた。

 

キィー!!、ピロロ

 

間近で聞く、魏怒羅の鳴き声にアッコは耳を押さえる。

「これはなんて嫌な音。」

 

「照合座標を確認して、間隙の外に出るよ。」と風見あつこ。

 

「ラモス、行くわよ。」 アッコが叫び、空間間隙が開く。

ラモスが2人のアッコを乗せて間隙に突っ込む。

 

だが、魏怒羅が感づいた。魏怒羅の眼は同じドラゴン族のラモスを捉えていた。

そして、魏怒羅までが空間間隙に入ってきた。

 

「え、魏怒羅がこっちに来る!魏怒羅を連れ帰るわけには行かないわ。」アッコが叫ぶ。なにか覚悟したような声だ。

 

アッコは流星丸(そっくりのホウキ)を持ってきた風見あつこを

「出口は見えたわ、行って!!!」と押し出す。

 

「え、あなた、どうするつもり??」

「速く行って、閉じる前に!」

「どういうこと?」

「私はラモスが居るからまた戻れる魏怒羅を撒いてから戻るから安心して!!」

 

虹色の光の柱、まるで害虫を吸い寄せるビーコンに吸い込まれた魏怒羅を見て皆が安心する中、ロッテはとてつもない不安にかられていた。

 

もうすでに夜は明けようとしていた。

 

地獄のような光景から、一変してまた平穏な風景に戻った夢洲周辺、大阪湾、そして淡路島の国生み神社。

 

ロッテをはじめ、ルーナノヴァ日本校の面々はスタンシップⅡに乗って、アッコを迎えに国生み神社に向かった。

 

しかし、そこにアッコの姿は無かった。国生み神社の魔女たちもずっとアッコの帰りを待っていたとのことだ。

風見あつこは残されたイグドラシルの枝を使ってグラントリスケルの再発動を試みていたが、魔力が絶対的に足りていなかった。

 

「なんてこと、アッコまでもが次元の彼方に飛ばされてしまったのかもしれない。道しるべの探索範囲には限界がある。それを超えてしまったら戻っては来れない。」

力なく声を落とす風見あつこ。

 

アーシュラ先生に申し訳ない気持ちで一杯の様子で話すアッコそっくりの国生み神社の魔女のリーダー。それを見て、ロッテをはじめルーナノヴァの面々は悲しみに打ちひしがれていた。

特にロッテは、「アッコがいなくなった!?そんなのイヤ、どうして、またアッコが。。。」 泣き崩れるロッテ。

 

今度の失踪は手強い。今度ばかりはダイアナでも見つけられないだろう。

 

 

◆次回予告

「宇宙樹の真理」

次元の彼方に放り出されたアッコ。もはや彼女を連れ戻すことは不可能なのか?

途方にくれるルーナノヴァ日本校の面々の前に現れたのはドラゴンの力を使わずに本校から空間間隙を移動してきた「ネイティブ」異次元少女だった。植物と交信できる不思議な力を持った少女と少女のナイトを自認する少年が驚異の活躍をみせる!!(*11)

~ドッキドキのワックワク~

 

◆今後の展開

9話「宇宙樹の真理(前編)」 海を越えたら次は世界を超え、次元を超える

10話「宇宙樹の真理(後編)」 5000年前からの帰還
11話「All friends gathered」 かつての仲間全員集合
12話「ウィッチ達のユニバース」 お祭り

 

◆主題歌

「Dream Flight」

2期(日本編)から変わりました。これまたゲーム(VRホウキレース)からです。

今後、空飛ぶシーンが増えそう。

 

◆注釈

(*1) 名称は「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」に登場するギドラより。実体はモンスター・ヴァースシリーズの「ゴジラ・キング・オブ・モンスターズ」のギドラに近い。どちらも電撃を主要武器とし、後者は気象を操る能力も持つ。

(*2) 実際は封印されただけ。

(*3) 現代の航空機で全長はムリーヤの84m、全幅はロックの117mが最大。

(*4) ファンのイラストにとても可愛いのがあった。探してみてください。

(*5) 飛行魔法が超得意な魔女。

(*6) SSSS.GRIDMANより。微妙に変えています。意味はストレス解放実体化。怪獣を創り出す。

(*7) ゴジラS.Pより。日本的、且つ、現代的、且つ、魔法的だと思ったので。

(*8) SSSS.DYNAZENONより。微妙に変えています。意味は実体支配。怪獣を操る。

(*9) アニメミライのシナリオ第1稿時のアッコのフルネーム。イメージイラストは今よりぐっと大人っぽく物語世界も神話的な印象。アッコの先祖的な意味合いも込めて。なお、26才になるアッコの方もこのイメージを引き継いでいる。

(*10) ちょっと「シュガーラッシュ」の影響を受けているかも。

(*11) もしかしたら「ルル子」の影響を受けたかもしれない。らく魔女には申し訳ない。