リトルウィッチアカデミア続編構想。
TVアニメ版の10年後を描く物語。
LITTLE WITCH ACADEMIA Journey through the Decade の第5話です。

「新世代入学生」

 

TVアニメ第1話より或る場面(正確には第2話冒頭の回想)

「アイビークルネッタグルード!」←いや、これは別作品💦(*1)

 

 

入学式ももうすぐだ。この季節になると、アッコはいつも入学当時の自分を思い出す。

ホウキにも乗れず、学校に辿り着くことすらままならない中、優しいロッテに助けられ、それにも関わらず、自分が持ってきた梅干しのせいで正規のレイラインからはずれ、もう一人道中で会ったスーシィをも巻き込んでアルクトゥルスの森に行ってしまった事件。

 

「ホント、何やってたんだか。」

 

でも、そんな絶望的な状況においても諦めず、前に進み続けていたら、現れたんだ。シャイニィロッドが!!

 

「神様に大感謝だわ。どうして、私なんかを選んだのだろう。」

 

そして、アーシュラ先生と出会った。

 

「アーシュラ先生には感謝してもしきれないわ。こうしてルーナノヴァで教師を目指せたのも先生のおかげ。魔女を目指せたのもシャリオだった先生のおかげ。」

 

アッコは、自分に魔力が無い原因がシャリオにあったことが分かった後、アーシュラ先生と向き合えたあの時も思い出す。

 

「シャリオ やっと会えた。」

 

シャリオへの憧れから魔女を目指したこと。でも、何よりも言いたかったのは、みんなのおかげでここまで来れたこと。そして、先生のおかげで来れたこと。

 

アッコの魔力を奪ってしまったことで自分を責める先生に(もうそのことはいいんです)私は(シャリオではなく)私になるのですから、と自信を持って言えたこと。

でも、魔法をもっともっともっと教えてください、だからアーシュラ先生でいてくださいと、お願いできたこと。ありがとう、大好きと言えたこと。

 

 

◆入学の日 繰り返される歴史

 

「ついに、ついに、来たぜー!! 魔法使いの聖地に!」

 

ブライトンベリー駅に、まるで、10年前のアッコのようにはしゃぐ少年がいた。

 

彼の名はユート・ミナヅキ(*2)、10年前の奇跡を起こした日本人魔女アツコ・カガリに感化され、魔法使いを目指してやってきた少年だ。ただし、本当の理由は、幼なじみのカリン(*3)が、アッコに憧れ、私も魔女になりたい!と夢を語るのを聞いたためだった。カリンの夢を叶えてあげたい、そのためにできるだけのことをしたい、との思いで自分もルーナノヴァでカリンのそばにいたいと思って来たのだった。

 

「よし、行くぞ、カリン」

 

ユートは一つのホウキにカリンと2人乗りをして、ルーナノヴァにつながるレイラインを飛ぶ。

 

 

だが、彼の手には梅干し(*4)が携えられていたのである。

 

ユートはカリンの夢を叶えたいと言いながら、自分もひそかな野望を持っていた。アッコの様に、伝説の杖シャイニィロッドを手に入れ、それをカリンに渡して、自分が英雄になることだった。

そのためにはまずはアッコのやったことをそのままトレースしようという単純極まりない発想をしたのだった。

なお、アッコのやったことは、ロッテが書いた「魔法を使えない魔女が世界を救うまで」にこと細かく書かれていたのである。

 

 

******

 

アッコの部屋はかつてアーシュラ先生が使っていた部屋だ。

そのため、魔法天文学のプラネタリウムもそのままおいてある。

なので、ルーナノヴァ周辺の地図も映し出されていた。

 

そこに異常なシグナルが灯される。

禁断の森、アルクトゥルスに誰かが迷いこんだ警告のしるしだ。

 

「え!こんな入学式の当日に・・・・始業の儀に間に合わなければ退学だわ。(このあたりの厳格なルールは変わっていないのね。)」

 

「まさか、10年前の私みたいな子が出てくるとは😲」

 

あわてて、かつてのアーシュラ先生の様に助けに飛び立つアッコ。

 

◆アルクトゥルスの森 再び

 

想定通りと言えば、想定通りか。レイラインの調子が悪くなり、飛べなくなったタイミングでわざとレイラインからはずれてみせるユート。だからと言って、カリンに怪我をさせるわけにはいかない。カリンを抱きしめ、自分がクッションとなって地面に落ちた時のショックを防ぐユート。

 

「いてえーーーー」

 

痛いのも想定通りだが、やはり痛いのは嫌だ。

 

「おっ、この暗い雰囲気は、うまくアルクトゥルスの森に来れたようだな。」ほくそ笑むユート。

 

そして、近くに落ちたはずのホウキをさがす。

10年前のアッコとちがい、2人とも一般家庭出身だが、ホウキで飛べるようにはなっていた。

それも、ロッテが開発した魔法教材のおかげだ。

 

アッコの時代は(魔力を集める)魔導石は自分で調達する必要があり、魔女家系の人か、その人とつながりのある人でなければ、実際に魔法を発動しての実習は困難だった。

 

ロッテは、クロワ先生不在時にやって来た臨時の現代魔法教師が進める起業推進プログラムに魅了され、実家の魔道具屋を発展させた魔法教育会社を設立したのだった。そして、進化したマジトロニクスを駆使した誰でも実習可能な安価な魔法教材を開発し、普及させていった。加えて、アッコの成長過程を大いに生かして組み立てられたカリキュラムが評判を呼び、ロッテの魔法通信教材は大ヒットとなった。

 

それにより、一般家庭からも多くの魔法習得者が現れ、魔法学校も一般家庭の子供が多く入学するようになった。

ルーナノヴァも一時期の経営危機が嘘のように名門としての輝きを取り戻して行った。

 

そして、女子学生だけでなく、魔法を学びたい男子学生や、さらには大人になってからも、魔法の価値が見直されたことから学び直したいという希望者が多数現れ、ルーナノヴァも彼らに門戸を開いたのである。

 

 

********

 

ホウキを見つけ、移動手段を手にした2人は次の目的のために飛び立つ。

 

それは魔獣コカトリスを見つけ、怒らせることだった。

コカトリスは鶏を巨大化させたような怪物だ。尾は蛇になっている。

そして、その危機に立ち向かう中で、諦めない心意気を見せ続ければシャイニィロッドが現れるだろうとの算段だった。

 

そんな危険なこと、ヘタすれば痛いじゃすまないことを平気でやろうとするユート。

 

カリンも不安になってよさそうなものだが、彼女はとても純粋無垢な女の子だった。

そのため、ユートができると言えば、それを信じてしまう子だった。

 

「クチュル・カテラ・フラーラ」(*5)

 

コカトリスを挑発する言葉を思いっきり叫ぶユート。

下はマンドレイクの生息地だ。うまくそこにおびき出せればOKだ。

 

遠くからコカトリスの鳴き声が聞こえてきた。

こちらに向かって飛んできているようだ。

 

◆コカトリスとの戦い

 

「くるぞ!」

 

ユートはいったん安全な場所にカリンを降ろし、自分はコカトリスを迎え撃つ態勢を整える。

コカトリスの石化作用のある息を出す攻撃動作を見切り、それを避けながら、マンドレイクの生えた地に誘い出す。

それが作戦だ。

 

コカトリスが迫ってきた。

 

クワーッ

 

息・・そんな鈍い攻撃を避けるのは簡単だ!

と思いきや、息じゃない、炎を出してきた。

 

しかも、攻撃範囲が予想より広く、しかも速い、

 

「熱い!!」

ユートをかすめる炎。

 

見ると、ホウキにも燃え移っていた。

飛行不能になり、マンドレイクの生息地に落ちていくユート。

 

それを見たカリンが、びっくりして、ユートが落ちる方向に走り出す。

 

「カリン、来ちゃだめだ、そこはマンドレイクがいるんだーー」

 

マンドレイクは食人植物だ。

 

カリンに襲い掛かるマンドレイク!

 

「ああああ、魔法を・・・」

何か助ける魔法を出そうとするユートだが、慌てすぎてうまく出せない。

 

「アイビークルネッタグルード!」

 

「な・なに・・・」

 

ユートは信じられないといった目をする。

 

マンドレイクがカリンを襲うのを止め、カリンに従うようなしぐさを見せたのだ。

 

そして、落ちるユートをマンドレイクが優しく受け止める。

 

「な・なに。。カリン、今のは?」

 

「私の植物とお話する魔法よ。」

 

花が大好きだったカリンは植物と話して仲良くなる魔法を会得していたのだった。

 

だが、しかし、

 

クワーッ 

 

そこにコカトリスが突っ込んできた。

すさまじい、風圧に吹き飛ばされる2人。

 

2人して崖まで吹き飛ばされ、落ちそうになる。

 

ふたたび「アイビークルネッタグルード!」

 

またも植物魔法を唱えるカリン。

すると、今度は手からツタが出てきた。そして、木に結びつけて落ちるのを防ぐ。

 

だが、今度はそれだけじゃなさそうだ。

 

カリンがユートをも連れて、ツタを引き寄せて、なんとか崖を登ろうとする。

ユートの後を付いてばかりだったカリンが、今度は自分の意志で前へ進もうとする。

それに合わせて、近くの植物が成長し始めたのだ。

 

ピカッ、ピカッ、ピカッ、ピカッ、ピカッ、ピカッ、ピカッ

成長しながら植物の中から何かが光る。

 

「オイオイ、嘘だろ。アレは・・・・」

 

なんとか崖を登り切ったそこにあったのは、

7つの光輝く宝石が埋め込まれた杖だった。

 

「シャイニィロッドだーーーーー!!!」 唖然として叫ぶユート。

 

シャイニィロッド-正確にはクラウソラス。ナインオールドウィッチの九つの魔法神器の一つだ。

かつて、シャリオの元に現れ、次にアッコの元に現れた。

7つの宝石は北斗七星を表し、同時に7つの「言の葉」魔法を発動させる鍵だった。

そんなクラウソラスの持ち主は、皆、純粋な心の持ち主だった。

ユートではなく、カリンの行為によって現れたのは必然だったのかもしれない。

 

◆目指せ、理想の場所へ(*6)

 

とはいうものの、近くにはまだコカトリスが居た。

 

マンドレイクに絡まれながらも、暴れまくり、ついには断ち切って2人に向かう。

 

ユートのホウキは穂先が焼かれて飛べそうにない。

が、カリンの魔法なら再生できるかも。

 

「アイビークルネッタグルード!」

もう万能魔法だね。💛

 

なんとか、再び飛び立ち、コカトリスから逃げようとする。

が、やはり万全ではなさそうだ。

コカトリスを引き離すことはできない。

 

****

 

と、そこへようやくアッコが到着した。

 

「あなたたち、早く、急がないと始業の儀に間に合わないわ。

 私が、元のレイラインに連れて行ってあげるわ。」

 

しかし、弱ったホウキではスピードが出ない。

コカトリスの脅威もまだ続いている。

 

「やはり、近道をつくらないとダメか・・」

 

と思案するアッコだが、カリンが持っている杖が目に留まる。

 

「えっ、えっ、ええええ!!! あれは・・・」

 

「シャイニィロッド?!」

 

「なんてこと、10年の月日を経て、また復活したの? 持ち主を見つけたの?!」

 

「ええと、君たち、呪文を唱えて! 言の葉の呪文よ!

 

と、今度はユートが叫んだ。

 

「おおおお、アツコ・カガリさんだ。あの伝説の!!!」

「よっしゃー、わかっているよ、あれだよね!」

 

アッコが唱える! 「ノットオーフェ!」

ユートとカリンが斉唱する。 「ノットオーフェ!」

続けて 「オーデン」「オーデン」

最後は3人一緒に!

「フレトーーーーール!!!」

 

シャイニィロッドが弓に変わった!!!

 

「ルーナノヴァはあっちよ!!!」

アッコも手を添えて、3人で光の矢を放つ!!

 

「シャイニィーー! アルクーーーーーー!!!」

 

理想の場所!ルーナノヴァに続くレイラインがつくられた!!

 

「行くよーーーーー!!」

 

アッコも一緒にレイラインに突っ込む。

 

 

◆始業の儀 繰り返される珍事

 

厳かに行われようとしていた始業の儀式。

アーシュラ先生はアッコが現れないのを心配していたが、予定通り始めないといけない。

 

「これよりルーナノヴァ新学期の始業の儀を・・・」

 

と開会の言葉を述べようとした瞬間、

会場が爆炎におおわれた

 

そして、どよめきの中、3人の人影が現れた。

 

ユート、カリン、そして、アッコ

 

皆が唖然とし、アーシュラ先生も口をあんぐりさせる。

 

アッコ💦・・・・2回目よ・・・・

 

フィネラン先生が、

「こ・これはなんですか!」

と困惑と怒りの混ぜ合わさった表情で叱責する。

 

校長は若きアーシュラ先生に変わったのだが、教頭先生は伝統と規律を守っていかないとダメとのことで、まだフィネラン先生が務めていたのである。

 

まさか、教師になってからもこんな形でフィネラン先生に怒られるとは、アッコも想像できなかったことだろう。

 

だが、アーシュラ先生もカリンが持つ杖を見て非常に驚く。

「え!シャイニィロッドが復活したの??  いったい、この子は・・・

 

そして、ユートが高らかに宣誓を始めた。

 

「誉れ高きルーナノヴァ魔法学校に入学できたことをここに感謝いたします。ここで僕たちは諸先輩方、特に憧れのカガリ・アツコ先生の様になれることを目指し、精進することを誓います。」

 

(おいおい、急に何を言い出すのよ・・💦)

アッコはあきれながらも、ユートの非常識な勢いに何となくかつての自分を重ねていた。

 

 

◆新世代入学生とアッコの決意

 

「すごかったね。今年の新入生は・・・」

 

スーシィがアッコに声をかける。

 

「ホント、私までトンデモナイことに巻き込まれて、いい迷惑だったわ。」

 

「いやー、なかなか居ないよ。あんな形で2回も現れる人は。笑」 スーシィにはかなり受けたようだ。

 

「ホント、まさか、教師になってからもフィネラン先生にあんな形で怒られるとは、絶対想像できなかったよね。」

 

「でも、あの子、カリンちゃん、なんかすごくない?」とロッテ。

 

「すごい、すごい、アッコとちがって、純粋無垢だし、余計なものが無いだけ最強かもね。」

「これはもうアッコからバトンは渡されたってことよね。シャイニィロッドが現れたんだから。次のマジカルスター、シャリオの後継者はカリンちゃんね。」

なぜか、楽しそうに言うスーシィ。

 

「えーーーっ、そんなのいやだ! まるで私は終わったようじゃない。」

「私ももっと頑張る。あんな子らに負けてたまるかってものよ。」

「うーん、やっぱり、私もシャリオを目指す!!!

 前にシャリオになれなくてもいい、なんて言ったけど、前言撤回、目指すわ!!」

 

パチパチパチ  と拍手が聞こえた。

 

「さすが、アツコ・カガリはそれでなくちゃね。

 君の様な才能ある魔女が、教師だけで終わるなんて勿体ない。

 ぜひともシャリオを超えるマジカルスターになってくれ。

 僕も応援するよ💛」

 

セシルだった。楽しむような語りで、アッコはおちょくられている気がして少しムっとするが、

セシルはさらに続ける。

「なにしろ、Evangelistic計画があるからね。」(*7)

 

「え、なに、エヴァ・・」 「2年生の時のハッピータイム計画よりカッコよさそうじゃない。」(*8)

 

「そう、魔法のすばらしさを全世界に伝道するプロジェクトさ。」

「その中心にはマジカルスターが必要だからね。」、と応えるセシル。

 

「え、もしかしてアーシュラ先生の野望ってやつですか?」 アッコの聞きたかったことだ。

 

「それもその一つさ、ただ、その前にもたくさんあるけどね。」

「まずは、君の使い魔の件だ。次は使い魔を育ててもらうよ。」

 

アッコにはまだ使い魔がいなかったのだ。

 

「使い魔を育てるのですか? カラスでしょうか?」(*9)

 

「いや、ドラゴンだ!」(*10)

 

「ド・・、ドラゴン?!」

 

 

◆次回予告

「愛と育児 夢の5年間」

ラスタバンの謎を解いたセシルは、そこがここ最近の事件の鍵と睨んでいた。

そして、ファフニールがアッコに頼みたかったことを携えてきた。

それは特別なドラゴンの赤ちゃんを育てること!

そして、アッコにもある感情が芽生えていく。

~ドッキドキのワックワク~

 

◆今後の展開
6話「愛と育児 夢の5年間」 ドラゴン子育てと何か
7話「ルーナノヴァ日本校」 開校祝いと日本ならでは展開
8話「魔法と怪獣」   日本に怪獣はつきもの
9話「宇宙樹の真理(前編)」 海を越えたら次は世界を超え、次元を超える

10話「宇宙樹の真理(後編)」 5000年前からの帰還
11話「All friends gathered」 かつての仲間全員集合
12話「ウィッチ達のユニバース」 お祭り

 

◆主題歌

リトアカのゲームの主題歌なのですが、テーマ/コンセプトに合っていると思い、借用しました💦
時間と幻影は扱っていきたいテーマ。

 

 

◆注釈

*1 らくだい魔女より カリンの魔法。

*2 コミック りぼん版(少女漫画)より アッコのことが好きな男の子。

   ただし、実体はらくだい魔女のチトセ。

*3 らくだい魔女の世界では植物をつかさどる緑の国のお姫様。

*4 アッコの好物 にしてレイラインにとっては有害なもの。

*5 馬鹿め、悔しかったら私を食べな かつてスーシィがだましてアッコに言わせた言葉。

*6 "言の葉" 魔法「ノットオーフェ・オーデン・フレトール」の意味

*7 ブログ記事 "「リトルウィッチアカデミア」との出会い "  における続編構想で語られた計画。

*8 劇場版「魔法仕掛けのパレード」にてアッコが目論んだ計画だが、この物語では2023年の魔法祭第2話「魔女パレード」でフィネラン先生の提案から実施されたもの。

*9 アーシュラ先生の使い魔がカラス(アルコル)。

*10 パーンの竜騎士と同じ能力を持つドラゴン。パーンの竜騎士はファンタジーSFの名作。