リトルウィッチアカデミア続編構想。
TVアニメ版の10年後を描く物語。
LITTLE WITCH ACADEMIA Journey through the Decade の第2話です。
「レイラインと新たな出会い」

 

 

「さあ、流星丸、行くわよ!」
アッコは流星丸を、愛犬を散歩にでも連れて行くかの様なノリで空に押し上げる。
流星丸はと言えば、久々の散歩ではしゃぐ子犬の様に無邪気に空を飛び回る。


流星丸 TVアニメ第3話エンディングより

「はっ、エイヤっ!と」
アッコは高速で飛び回る流星丸に下から飛びつき、そのまま大回転でもするかのようにぐるりと身体を回して上に姿勢を取り、ド派手且つ華麗にまたがる。
ルーナノヴァ・ホウキリレーでも見せた驚異の身体能力は健在だ!!

これからまた危険な旅が待っているかもしれないのに、いきなり最初から楽しさMAXを身体全体で表現して発進するアッコ。

レイライン上の遺跡を調査し、イグドラシル復活のための手がかりを探る旅、今回の目的地は超有名遺跡、世界遺産のストーンヘンジだ。だが、普通には存在しない地下に下る道を見つけると広大な迷宮が広がり、一説にはイグドラシルの種があるとも言われる。地下への道を見つけるには、ストーンサークル内でイグドラシルの構造を模したと言われる石の並びに沿って厳密な経路を9回周る必要があるらしい(*1)

ルーナノヴァの図書館で古い書物を書かれていた俄か知識だが、アッコは不思議と何とかなる!という感覚に満たされていた。

ただ、ストーンヘンジに行く前に寄って行く場所があった。ファフニールさんが療養している病院だ。

 

◆魔法界を監視する者

 

病院はラスタバン遺跡のすぐそばにあった。やはり人間の住む所からはかなり離れた場所だ。魔女や魔法使いは人間だが、彼らが相対する魔法界にはまた別の種族が存在する。ドラゴンや多様な妖精たちだ。偉大なる魔法の時代の終焉とともに、一般の人々はそれらから遠ざけられ、特別な部隊による監視が行われるようになっていた。

病院に到着したアッコは警察より配布された許可証を見せて中に入る。病院というより刑務所の様でアッコにははっきり言って居心地のいい場所ではなかった。
監視員に案内された病室も、病人に癒しを与えられる場所にはとうてい見えない。
それでもファフニールさんがアッコに会えた喜びを全身で表すと、幾分気分はよくなった。

「よかった、元気そうですね。何があったかは知りませんが、もう大丈夫なのですか?」
アッコは本当は何があったかを聞きたいところなのだが、いかにも監視されている状況では、聞きにくい。


「ああ、大丈夫だ。お前さんも見違えるような立派なレディになったな。」

「いやあ、レディなんて言わないでください。そこは魔女と言ってください。笑」

「いや、すまんすまん、すごい魔女になる、と言っていたな。その夢は実現できたのか?」

「いやー、まだすごいかどうかはわからないんですけど、これからもそれに近づけるように、」
と言いかけて、この後することをここの監視員に聞かれたらマズイと思い、口をくぐもらせる。

「お話したいことは色々あるのですが、すぐに戻らないといけない用事があるので、すみませんが、おいとましますね。元気なお顔を拝見できてよかったです」

「いや、わしの方こそ、助けてくれて本当にありがとう。実はまだ頼みたいこともあるのだが、それはまた今度。」

この場では長話もできない。それは今度ラスタバンでやろう、と思い、怪しまれないように来た方向に戻って行く。

◆ストーンヘンジの迷宮

幾分、来た道を戻ったアッコだが、十分離れたところで、向きを変え、ストーンヘンジに向かう。

ストーンヘンジは政府の管理下にあり、観光のためにも許可が必要なのだが、今回は隠密行動ということで、夜に魔法の力も使って姿を消して侵入する。
魔法といっても古典的魔道具の透明マントを使い最小限の魔法エネルギーで遂行する。魔道具は一般の魔力が弱い人々でも魔法を使えるようにするものだ。

アッコは水晶玉を取り出し、事前に入手した古代イグドラシルの絵と相対する石の並びを確認する。水晶玉は様々な情報を蓄え可視化する装置で、ネットワークともつながり通信もできる今で言うスマホの様なものだ(*2)。今は現代魔法(マジトロニクス)の登場により、スマホに魔力をインストールする方法もあるが(*3)、アッコは古来の水晶玉の方が好きだった。

北東のヒールストーンからつづくアベニューは避け、南の小さな入口から入り、円陣に沿った後、中央の馬蹄形を中心にイグドラシルの構造を模したコースを飛ぶ。1回、2回、・・・9回と周ったが、何も起こらない。

ストーンヘンジMAP Drawn by Adamsan - Cleal, Walker, & Montague, Stonehenge in its Landscape (London, English Heritage 1995) Pitts, M, Hengeworld (London, Arrow 2001)

「うーん、やはり正確じゃないのか? すこし変えてみるか。ここは下手な鉄砲も数打ちゃ当たる作戦で行くしかないか。」

と、1時間くらい色々なコースで飛ぶが、何も起こらない。
透明マントをかぶっていると光の屈折のため、飛びにくい。その視覚の歪が原因なのかも、深夜に誰も見ていないだろうとマントを脱いで飛ぶ。
ところが、サークルの中央に突然の人の気配を感じて、あわててまたマントをかぶる。
急な視覚の変動と、少し疲れもあったのか、アッコは自己位置を見誤りストーンに接近しすぎてしまう。
「あ・あぶない!」と、流星丸を急旋回させたアッコは、その高機動性も災いして、あろうことか流星丸から落ちてしまう。

「あいたたたーーー」
「なんてこと、かっこわる~い   これじゃ全然すごい魔女じゃない・・」

一瞬情けない気持ちになるが、立ち上がり、改めて状況確認に努める。まあ、5mほど落ちて大した怪我がないのはさすがアッコと言えるだろう。
「感じた人の気配はなんだったのだろう。」
警戒魔法を展開するが、魔力の存在は認められない。

「ここは慎重に地上から調べるか。」

すると地上には少し周囲とは違った色合いの石が転がっていることに気づいた。空からはただの石っころで人の手で立てられたストーンとは全く関係ないものに見えていたが、近くで見ると何か意味のある言葉を発している様に感じられた。

「あれ、他にもある。」
地に足を据えてゆっくりと眺めると何か図形を形どっているようにも見える。

「これを辿ればいいんじゃ!?」
石を辿りながら、なおかつ事前情報と照らし合わしながらうまく行きそうな経路を歩いていく。
すると、次第に周囲が霧におおわれてきた。

9回周る頃には、すっかり霧におおわれ(*1)、ストーンも見えなくなるくらいだ。
すると、円陣の中央に何かが現れた。
古びた扉のようなものだ。

慎重に扉に近づき、開けてみる。すると下に続く階段が現れた。

「やった、迷宮につづく道が開いた!」

 

◆考古学者

階段を下りていくと魔力の高まりを感じた。ルーナノヴァ新月の塔の下にあるダンジョン探索実習用の迷宮(*4)を思い出しワクワクしてしまう。危険が待ち構えているかもしれないのにこの辺りがアッコの真骨頂だ。

ロッテから教えてもらった魔法で精霊を呼び出し灯りをともしてもらう。そして警戒魔法を展開し異質な魔力に警戒しながら進む。
ときおり、いたずら者の妖精を見つけるが、むしろアッコには楽しいものだった。

「妖精たちがたくさん居るくらい、ここは魔力に満たされているんだわ。これはイグドラシルが何らかの形で残っていそうね。」

事前に入手した地図では、中央に螺旋状の大きな地下回廊があり、そこから北東と南西に向けて地上とつながる道が伸びている。今は南西から進入していることになる。
地下回廊とストーンサークルの中心は合っておらず、地下回廊の中心はサークル中心とヒールストーンの中間付近に位置しているようだ。

「地下回廊には何があるんだろうか?やはりイグドラシルの種? わくわく」
安易な期待に胸をふくらませるアッコ。

下って行くと道も広くなり地下回廊への到着もまもなくのようだ。
すると、目も前に扉が現れた。それも5つもある。
 

「ええっ、ここから道は5つに分かれるの?」
どうも、地下回廊は5つの螺旋が重なったもののようだ。

「これはまた面倒な。。。そんなこと地図には書いていなかった。まあ、片っ端から調べるか。」
と、ついつい声に出して文句を言ってしまうが、突如、別の声が聞こえてきた。

「よくそんな曖昧な情報で、ここまで来たものだな。」

「だ、だれ!?」
アッコはただただ驚くばかり。これだけ警戒してきたのに人の存在に気付かないとは。

「君か、うろうろと空を飛んでいた魔女は。入る所からあれだけ迷っていたのに無謀にもここに入ってきたら、出られなくなるぞ。」


「あ・あなたは誰なの?」(そうか、あの人の気配はこの人だったのか)

「君こそ誰だ。俺はセシル・ニュート、考古学者だ。ストーンヘンジの考古学的意味を今はタブーになっている魔法の歴史からひも解くことを試みている。そういう意味では一応魔法界の人間とも交流はある。君の地図よりもっと詳しい地図も持っている。」

(おお、そうなの。それは助かる)と都合の良いことを考えるアッコだったが、こちらも自己紹介をしないといけない。想定外のできごとにあたふたしながらも、、
「ええと、私はカガリ・アツコ。ルーナノヴァで教師をしています。ちょっと課外授業の場所としてここを調べていたのですが、ついつい怪しいことも調べたくなる悪い癖が出ちゃいまして、深入りしてしまったようです・・・・あはは」
となんとかごまかそうとするが。

「ルーナノヴァで教師をしている魔女・・・。ああ、それはこちらにとっても好都合だ。可能なら魔法を使えた方が良くて、本当は知り合いの魔法使いを連れてくる予定だったのだが、急遽来れなくなったんだ。せっかくここまで来たんだ。一緒に付き合ってくれるとありがたいのだが。」

(それは私にとっても好都合。やっぱり何とかなるものね。)と心の中でほくそ笑むアッコ。
「はい、よろこんで。こういう冒険、学生の頃から大好きなんです!!」

「いやいや、そんな甘いものじゃないよ。どれだけの危険があると思っているんだい?僕も少しは魔法を使えるのだが、それだけにこの魔力が満ちている場で悪意のある魔法使いに出会ったりしたら一巻の終わりだと思っている。」

「そんな、悪意のある魔法使いが来たりするんですか?」

「ああ、ここは財宝・・・などないのだが、どういうわけかそれ狙いの輩が何度か来ている。ただ、やつらの大部分はこの地下回廊で消息を絶っているのだが。」

(ええ、そうなの?!

いや、あまりにも無警戒に見える私を脅かしているだけでしょ?)
 

◆中央地下回廊

とはいうものの、セシルも中央地下回廊の終着点に何があるかの情報は持っていないとのことだった。ただ、5本の道の構造と最下層に行ける道の情報は持っていた。1本以外は行き止まりだ。そして、イグドラシルの種があるという噂は否定された。

「イグドラシルはそもそも種からは成長しない。原点は枝だ。10年前ブライトンベリー上空に出現したイグドラシルも元は枝だったはずだ。ただ、あれは仮想イグドラシルだ。だが、現れた経緯を知っている者がいれば有益な情報を得られるはずだ。あれを起こした人間はルーナノヴァの魔女学生たちだと聞いている。もしかして、君は何か知らないか?

え、え、え、それ、私なんですけど😲・・・ でも、うーん、有益な情報? なにかあったかな。グラントリスケルを起こしたらシャイニィロッドと枝が一体化して、最後は消えて北斗七星になってしまったのよね・・・) 

考え込むアッコ。でも、彼が期待するようなことは言えそうにない。こんな私があれを起こした人だとわかったら、がっかりさせてしまいそうだし、信じてもらえないかも。
と、何も言えず、「ごめんなさい、何も知らないの・・・」と答えるしかなかった。
(それにしても、あれの情報はやはり秘匿されているのね。アンドリュー達はあれが私たちの仕業だとちゃんとわかっていたけど。)

「ああ、それは残念だが、ここにも期待するものは無いかもしれないし、それに、そもそも長居はできそうになさそうだ。」

「え、どういうこと?」

「招かれざる客のお出ましだ。」

彼が持っている魔力をインストールしたスマホのレーダーに異常な魔力の揺らぎが表示されていた。

「おそらく政府の特殊部隊だろう。魔力をほぼ持っていない僕ではなく君に反応して来たのだろう。前言撤回だ。好都合じゃなくて、厄介なことを持ち込んでくれたようだ。」

「ご、ごめんなさい。」
アッコの周りにトラブルが発生するのは、学生時代の常だったが、今もそうなってしまうとは・・・

でも、流星丸と一緒に来たのはこのような事態を想定してだ。流星丸より速いホウキは存在しない。とりあえず、厄介なものから遠ざかろう。


「とりあえず、逃げたらいいのね。」

「ああ、と言ってもここは地下だ、自由に飛べる空とは違う。やつらと遭遇しないとなると地下回廊に突っ込むしかない。そして反対側の地上に出る道から脱出できれば良いが、当然両方の道から来ていると想定すべきだろう。」

「道をつくればいいのね。ちょっと考えがあるわ。」

アッコは流星丸にセシルを乗せ、中央地下回廊の最下層につながる道を進む。螺旋の回廊を回りながら、地下にもぐっていく。

「最下層に何があるかが問題だが、そこを抜ければ反対側に行ける。」
セシルは冷静に経路を指示するが、反対側からも来ていたら遭遇してしまうことには変わりはない。

下へ行くほど、空間は大きくなっていた。どうも、下には何か大きなものがあるようだ。

螺旋の回廊を抜けると釣り鐘状の大きな空間に出たが、そこにはなんと仁王様!?が居た!!

「きょ、巨人!?」驚くアッコ。

どこかで見た覚えがあるような・・ないような、巨人が鎮座していた。

「マズイ、これが狙いか? 奴ら、こいつを目覚めさせるぞ!!」セシルが叫ぶ。

巨人に魔力が注入されるのが、セシルのレイラインルーターの数値にも表れた。レイラインルーターは魔力の通り道であるレイラインを探索して接続し、魔力の供給を受けるための装置だ。
厳密にはレイラインではないが、多大な魔力の流れを感知し、反応したのだ。

巨人が動き出した!(*5)




消息を絶った盗人たちはこいつにやられたのか。

 

◆2人の戦い

「しっかりとつかまって!! 加速します!」

アッコは流星丸の性能に賭ける。加速して巨人の掴みにかかってくる手から逃れる。
セシルはアッコの後ろから流星丸の柄をしっかりと握り、力いっぱい引き付けるのでアッコとセシルの密着度は半端ない
別の意味のドキドキを覚えながらも、それは精神を活性化させアッコの戦闘力向上に役立っている様だった。

手の攻撃を逃れ、一気に下までダイブすると、底に花のようなものが目に入った。
とても気になったが、今はそれどころじゃない。巨人の背丈は30mくらいはありそうだ。

股の間をくぐり抜け、巨人の背後に出る。そのまま今度は上昇して反対側の出口の回廊に入ろうとするが、そこにはすでに奴らの別動隊が来ていた。
アッコは彼らの動きを確認する間もなくベルガ・ヴィーダを唱え、反射壁を形成、攻撃を弾き返す。
そして、出口側の回廊には入らず、釣り鐘の最上部に到達すると。

「みんな、力を貸して・・(といってもセシルしかいないか?) 光の魔法でレイラインを作るわ。

アッコはルーナノヴァ入学1日目にアルクトゥルスの森に迷い込んでしまい、始業式に絶対間に合わない状況下、シャイニィロッドの言の葉魔法「ノットオーフェ・オーデン・フレトール」を発動させ、ルーナノヴァへの(人工)レイラインを無理矢理作り、間に合うというビギナーズ・ラックにもほどがある芸当を成し遂げていたのだ。

同様のことをここで行い、地上への道を作ろうというのだ。
しかし、シャイニィロッドは消えてしまい、今は無い。言の葉魔法もシャイニィロッドと紐づくものだ。
使えるのは原始的な光魔法だ。力は弱い。

「アッコ、シャイニィアルクを出すのかい?」とセシル
「そうじゃないけど、それに近いもの。」
「じゃあ、タンデムで行こう。僕も念じるよ。まだまだ弱いけど。」

「ルルスス・ミラミス・アクディアス・・・シャイニィ・エナージア!」(*6)

杖はノーマルのままだが、光の矢が放たれた。地下の天井を貫き、地上まで届いたような手ごたえは感じた。
ただ、弾が小さい、人工レイラインの直径はマンホール程度しか無い。
2人は身を縮めて通り抜ける。

「やった!!地上に出たわ。」

「しかし、やつは追ってくるぞ、有利な位置から攻撃態勢をつくるんだ!」

幸いにもここはストーンサークルとヒールストーンの中間だ。遺跡への被害も抑えられる。

地上を突き破り、巨人の手が出現、ほどなく全身も姿を現した。

(こんな大きな巨人を倒すには通常の光魔法ではダメだわ、やはりシャイニィアルクが必要。
シャイニィロッドなしでシャイニィアルクを出す方法は?
もっと原点の、原体験したような、何かあったような気がするんだけど・・・・)

それは、ダイアナの予知夢にあったものだった。
そして、ダイアナから受け取ったメッセージの中からそれを思い出す!
あれだ!

「マクミル!


  ミクミル!!


   メクトラル!!!!」(*7)

ノーマルの杖が弓に変化した!!
光の塊をつかみ、弓を引くと光の矢になった。

「アッコ、今度もタンデムで行こう」セシルが呼びかけ、一緒に弓を引く。

「シャイニィーー! アルクーーーーー!!!」

光の矢が巨人の攻撃をスパイラル軌道を描いてかわし、心臓を貫いた。

巨人の動きは止まり、崩れ落ちる。

「やったーー」

「でも、このままじゃマズイよね。」

「ああ、修復魔法いくぞ、これは僕も使えるんだ。現在を過去でオーバーライドする魔法、これは考古学者としては最も魅力的な魔法だ。
でも、まだ初心者だから、君が合わせてくれ、合体魔法で増幅してもらいたい。」とセシルも杖を出す。

君が合わせてくれ」--なんか、聞いたことがある、というより私がダイアナに言ったセリフだ!)(*8)

アッコはいきなりの出会いで(何このコンビ?)と可笑しさをこらえながら、
「ええ、合わします。やりましょう!」
「イェラ・ハトーラ!!」
杖を交差させると、何倍にも増幅された修復魔法が発動した。
巨人は地下に吸い込まれ、いくらか壊れたストーンヘンジのストーンも元通りに戻った。

「一件落着ですかね」

「いや、やつらが居る」とセシル。

政府の特殊部隊とのことだったが、アッコには何か自分に近いものを感じていた。一瞬目にした彼らは魔女の学生っぽかったのだ。それもなぜか馴染みを感じるような。(*9)

「でも、この状態になったら、手を出してこないようだね。気配もレーダーからも消えた。」

 

 

◆セシルとアッコ

「ところで、君はなぜシャイニィアルクを使えるんだい? あれはシャリオか10年前のブライトンベリー上空の奇跡を起こしたルーナノヴァの学生しか使えなかったと思うのだが。」

ぎくっ、これは言うしかないか。。。

「ご・ごめんなさい、10年前それをやったのが私と同級生のダイアナなんです。でも、それなのに全くイグドラシルこともわかってなくて、はずかしくて言い出せなくて・・」

「やっぱり君だったのか! カガリ・アツコと聞いた時からそうだと思っていたが、やはり伝説の東洋の魔女は君だったか。」

「え、え・・? その情報は出ていたのですか?(何?伝説の東洋の魔女って??)」(*10)

「ああ、僕も魔法を少し使えると言っただろ、それはロッテ・ヤンソンが開発した魔法教材のおかげなんだけど、そこに副読本として「魔法を使えない魔女が世界を救うまで」というのがあって、明確には誰とは書かれていないのだけど、日本人だし、どう見たってロッテのルームメイトだったアツコ・カガリだとわかるものだったので。」

「え、え、え、そんなのがあるのですか?!」
(ロッテのこと、ナイトフォールみたいに意味不明に風呂敷広げた美化され過ぎの話になってないよね?やばいやばい。
そうか、それで、シャイニィアルクを出すのかい?と聞いてきたのか。なんてこと、最初からわかっていたとは・・)

セシルは続ける。
「でも、本当にこんなところで君に会えるとは思わなかったよ。
神様に感謝だ。その本を読んで、アツコ・カガリは僕にとってのシャイニィシャリオになったんだ。

「え、何、シャリオ・・・私が!???」

「本当だよ、本に書いてあった君が憧れるシャリオと今の君は全く同じだそして、シャリオに憧れていた君と今の僕は同じだ。魔法を学びたいという想いもそこからだし、魔法のことだけじゃない、そこで描かれていた素晴らしい人間性に心底惚れたんだ。僕が目指すべき人物像だってね。
「で、ところで、実は今年の新学期から僕はルーナノヴァに通うんだ。なので、君からも魔法を教えてもらうことになると思うよ。」

アッコはたて続けの衝撃に呆然としていた。

(私がシャイニィシャリオ?? 10年前、例の不幸なできごとの件もあってシャリオにはなれないと思ったのに・・なれなくてもいいって思っていたのに・・・・・これってなれたって思ってもいいの?😢 それから・・・あと何を言っているのかわからない?同じって何と同じなの?誰を目指すって??😳 それから、ルーナノヴァに来るってどういうこと???)

アッコは涙目になりながら、「ルーナノヴァに来るんですか?魔女学校ですよ?」

「あれ、聞いていないのかい?ルーナノヴァは今年から共学化且つ学び直し枠設置で男子生徒も学び直し目的の大人も入れる様になったんだよ」

「えええ、そうなの?! そんなの聞いてない!・・・。アーシュラ先生に問い詰めないと・・」

「だから、君からは魔法だけでなく、それ以外もいろいろと学びたい。これからもよろしくね。」
(ああ、だから、魔法は教えるけど、それ以外って・・・??)

と、タイミングよくアーシュラ先生から水晶玉にメールが届いた。

「状況どうですか? アッコに言っていなかったけど、ロッテとスーシィが戻ってきているの。帰ったら相談したいことあるので、よろしく。」

「えええ、ロッテとスーシィが・・」

今日は何という日だろう。衝撃的な出来事とニュースが多すぎる。
私も相談&聞きたいことが多すぎる。急いでルーナノヴァに戻らなくちゃ。

涙をぬぐいながら「これから私はルーナノヴァに戻りますが、セシルさんはどうされますか。近くまでお送りしましょうか」

「じゃあ、ブライトンベリーまで。」

「え、ブライトンベリー?ほとんど一緒じゃないですか。」

「そう、僕らは寮生活じゃないんだ。で、すぐそばに家を借りたんだ。」

結局、最後まで流星丸に2人乗りすることになったセシルとアッコ。

衝撃が多すぎて、アッコはこの後どういう会話をすればいいのか、わからない。

またトンデモナイこと聞かされては心がもたない。それと心の整理に努めるため、不本意だけど沈黙を貫いてルーナノヴァへの帰路を急ぐアッコ。風の精霊魔法で風圧を逃がし(*11)、流星丸の最大速度、時速960kmで飛行する(*12)

高速で飛ぶ流星丸の後には飛行機雲が作られるが、朝日と干渉してそれは虹色に輝く彩雲となった。それはドキドキとワクワクにもほどがある1晩を過ごした2人のこれからの進路を象徴し、祝福しているかの様でもあった。

 

◆次回予告
「眠れる夢のアッコと闇の魔女」
アッコがルーナノヴァに戻る途中、赤い目をした少女に呼び止められる。少女から腕輪をもらったアッコは世にも奇妙な病にかかってしまう。スーシィをはじめとした仲間たちはアッコを救うためにアッコの夢の中に入って行く。
~ドッキドキのワックワク~

 

◆今後の展開

3話「眠れる夢のアッコと闇の魔女」 眠れる森の魔女の病にかかったアッコ 

4話「チーム復活」   ロッテ、スーシィとの再会

5話「新世代入学生」  セシルとユートとカリンが入ってくる

6話「愛と育児 夢の5年間」  ドラゴン子育てと何か

7話「ルーナノヴァ日本校」 開校祝いと日本ならでは展開

8話「魔法と怪獣」   日本に怪獣はつきもの

9話「宇宙樹の真理(前編)」 海を越えたら次は世界を超え、次元を超える

10話「宇宙樹の真理(後編)」 5000年前からの帰還

11話「All friends gathered」 かつての仲間全員集合

12話「ウィッチ達のユニバース」 お祭り

 

◆主題歌
「時のミラージュ」

リトアカのゲームの主題歌なのですが、テーマ/コンセプトに合っていると思い、借用しました💦
時間と幻影は扱っていきたいテーマ。

 

◆注釈

*1 小説版「でたらめ魔女と妖精の国」より

*2 TVアニメ4話より

*3 TVアニメ2期でクロワがそういうアプリを作っていた。

*4 アニメミライ版より

*5 アニメミライ版続編 映画「魔法仕掛けのパレード」より

*6 コミック 少女漫画 りぼん版「月夜の王冠」より光魔法発動呪文

*7 アニメミライ版および「魔法仕掛けのパレード」でのシャイニィアルク発動呪文(「魔法仕掛けのパレード」ではシャイニィバリスター)

*8 コミック YJ版 第3話より

*9 ヒントは、コミックス・エース版コミックの最終話

*10 コミックス・エース版 第3話「東洋の魔女」より

*11 TVアニメ最終回 ホウキ連結多段ロケット打ち上げ時にロッテが使用

*12 ジェット機より速いという設定より

   翼で揚力を得る飛行機と違い音速に近づいても衝撃波が発生しないため

   パイロブースター(*13)を使えば音速も超える

*13 TVアニメ最終回 ロッテとスーシィが使った複合魔法 物理的にはロケットエンジンと同じ