リトルウィッチアカデミア続編構想。

TVアニメ版の10年後を描く物語。

LITTLE WITCH ACADEMIA Journey through the Decade の第1話です。

「ラスタバン再び」

 

 

「アッコ、もう、そろそろ降りてきたら?」

アーシュラ先生が、空高く舞い上がり、生徒たちを見送っているアッコに声をかけます。

 

「はーい、生徒たちとの別れが惜しくて、ついついずっと見ていてしまいます。」

 

アッコは、今やルーナノヴァのれっきとした教師だ。

しかも、非常に人気のある教師。彼女の授業にはたくさんの生徒たちが押しかける。

 

今日は1年の終業式、アッコは帰っていく生徒たちを最後まで見送っていた。

 

降りてくるアッコ、残酷な呪いも克服し、飛行魔法も全く問題ない。

 

しかも、驚きは、垢抜けた美人に成長していることだ。

それには、変身魔法だけは得意だったアッコのこと、実は変身しているんじゃないかと、冗談を言う人もいたが、素のありのままを好むアッコがそのようなことをする訳がないことはみんなわかっている。

それにしても魅力的だ。10年の歳月は恐ろしい、いや、素晴らしい。

 

(10年後のアッコのイメージ アニメミライ版第1稿シナリオイラストより)

 

アッコは生徒たちを見送りながら、改めて自分を振り返る。10年前の自分を。

今思えば、全くダメダメの人間だったのに、よくもあんなに図々しくも、意味不明な自信を持てていたものだとあきれて笑うしかない。今になってダイアナの心境がよーく理解できる。

それでもシャリオへの強烈な憧れで、自分でも驚くくらいの情熱を持てていた。

果たして、今、そこまでの情熱を持てているだろうか?

確かに生徒たちを教えるのは楽しい。過去の自分を自虐ネタにして、どんな人間でも輝くことはできる、と伝え、共感してもらえるのはとても楽しい。

 

でも、そろそろ新たな挑戦もして行きたい。

 

そう、これから、そのドキドキだけど、とてもワクワクの話をアーシュラ先生とするの。

 

◆レイライン遺跡調査

 

アーシュラ先生は今やルーナノヴァの校長だ。30代で校長となり、慈愛の教育とともに、さらなる魔法界の発展のために積極的な改革も進めている。

でも、その中でも大っぴらに進められないものもあり、それについてアッコに相談していたのだ。

 

それはかつてのイグドラシルの痕跡、レイライン上にある遺跡の調査だ。今は限られた魔力の通り道になっているレイラインだが、かつて無尽蔵の魔力を創出していたイグドラシルの秘密が隠されてる場所だ。

5世紀、ナインオールドウィッチが魔法を限られた人間の秘術から学問へと昇華し、誰でも学べるものとしたことで、魔法は広く普及し、偉大なる魔法の時代が訪れた。その一方、社会への影響力が増したことにより、権力者による管理・規制も強化されることとなった。時代によっては差別・迫害もあった。

その後、産業革命により魔法の必要性が薄まり、魔法不要論、否定派も出てくるようになった。そのため、魔法に関する研究は徐々にタブー視され、レイラインの遺跡のことも忘れられていくだけでなく、規制対象となり自由な研究ができなくなっていた。

 

10年前、このルーナノヴァのあるブライトンベリー上空に蘇ったイグドラシルは、世界の危機を救った奇跡として記憶に留められていたが、残念ながら定常的に存在するものではなかった。この事件の後、魔法を見直す機運は高まったものの、どういうわけかレイラインの遺跡研究の規制は解消されなかった。

これには、何か・・・もしかしたら陰謀めいた理由があるかもしれない。が、それらも含めて極秘の調査が必要だった。

 

「アッコ、これは危険が伴うかもしれない。それでもやってくれるの?」

 

「もちろんです。誰もやったことのない、皆できないと思っていることをやるのが私なんだから。昔の私だったら、何も考えずに突進していたと思うけど、さすがにそれはダメですよね(笑)。それでいっぱい失敗しているのだから。」

「先生の言われたように、遺跡に関する事前勉強もたくさんしました。うまくやりますよ!」

 

◆ラスタバン遺跡再び

 

まず、アッコが向かったのはルーナノヴァの最も近くにある遺跡、ラスタバンだ。

10年前も魔導石を奪ったドラゴンを追って遺跡内部にまで入った場所だ。

ここはそういう意味では新しい要素はないが、ちょっと挨拶代わりに寄っておきたい場所だった。

ここの主はファフニールというドラゴンだが、魔法の時代の終わりを悟り、デイトレーダーになって金を稼ぐ俗物に成り下がった輩だ。その彼にアッコは「魔法は終わらない、私がすごい魔女になってみせる!」と宣言していたのだった。

そのすごい魔女(?)になったところを見せておきたかったのだ。

 

遺跡に近づくと、そろそろ防犯セキュリティシステムに引っかかるかな? ロボットドラゴンが出てくるかな?と期待していたが、何も出てこなかった。

あっさりと入口まで到着してしまい、私だと認識していたのかしら?と怪訝に思いながらも、インターホンを押す・・・が、反応がない。

しかも入口の鍵はかかっていなかった。

 

ただならぬ事態を感じたアッコは警戒魔法を展開しながら中に入って行く。

昔、侵入したときと同じような巨大な部屋を通っていくと、奥にはデイトレード用の巨大な(笑)ドラゴン用PC、モニター群が見えてきた。幾分新しくはなっているようだがスイッチは入れられてはおらず、ファフニールの姿もなかった。

 

「でも、よく考えたら、10年前は借金問題が片付いたらさっさと帰ったので遺跡そのものの調査はしていないわね」

「それにファフニールが昔していたことも知らない。ここにも何らかの秘密はあったのかも。なんとか見つけ出さないと。。。。」

 

アッコは10年前には入って行かなかった部屋にも入っていく。

 

と、警戒魔法に反応が現れた。それも複数。

「誰かいるの?」

アッコには見覚えのある連中だった。知恵の妖精グレムリンだ。いたずら者だが、科学技術を伴う作業には知恵を授けてくれる妖精だ。ファフニールも科学技術を積極的に導入していたから住み着いているのだろう。

とすると、この近くにファフニールは居るはずだ。

 

しばらく進むと、床に倒れているファフニールを発見した。

「どうしたんですか?ファフニールさん」

巨大なドラゴンの耳元で叫ぶアッコ。

だが、反応はない。

 

「た、大変、死んでいるわけではないよね? しまった、ダイアナからもっと医療関係の魔法を教えてもらっておくべきだった。」

とりあえず、知っている医療関係の魔法を試してみる。若干の動きがみられ、死んでいるわけではなさそうだ。

 

「えーと、ドラゴンだけど、やはり、病院に連絡しないとね。救急車は大丈夫かしら? ごついけど・・、もしかしたら事件? とすれば警察も・・・」

「魔法の管理も規制もやってんだから、ちゃんとやってくれるよね?」

 

アッコは救急車の手配を頼むが、窓口ではドラゴンの相手などできないと言われてしまう。魔法界関係の事案は警察担当ではないか?と言われて、今度は警察に連絡する。

ここでも最初の担当者には露骨に面倒くさがられるが、だいぶ時間が経って出てくれた担当者は実に専門的に状況を聞いてくれた。どうも専門部隊が存在することは確かのようだ。ここに来た理由を問われると厄介だが、適当にごまかすしかない。

 

◆光の魔法の使い手

 

とりあえず、安心するアッコだったが、しばらくして不安に襲われる。警戒魔法に反応するかどうかギリギリの得体の知れない微妙な魔力の存在を感じ始めていたからだ。

 

「ファフニールさんに何かをした輩かしら?」

感覚を研ぎ澄ますため、アーシュラ先生から教わった瞑想魔法を試す。

 

相手もこちらの出方をうかがっている様だ。

アッコは防御と反撃を兼ね備えた魔法、ベルガ・ヴィーダをいつでも放てる様に精神を集中させていた。

と、光の魔法の発動を感知する。光を収束させて熱を伴う攻撃を行うものだ!

ベルガ・ヴィーダを唱え、結界を張るアッコ。光線は結界で反射され、放った相手に向かう。

だが、相手はそれを軽くよけ、素早い動きで警戒魔法の探知範囲から姿を消してしまった。

 

「光の魔法を使う輩とは!?」

シャイニィアルクも光の矢を放つように、光の魔法はシャイニィシャリオが得意とする魔法系統だ。そのような魔法を使う輩が居るとは要注意だ。シャイニィロッドがシャリオの象徴の様に思われているが、光魔法は杖が無くても放つことができる原初的な魔法だ。アッコも2年生の時、アーシュラ先生と共に研究を進め、ブライトンベリー魔女パレードでシャイニィロッドが無い状態で放ったが、その奥深さは実感していた。(*1)

「これは、アーシュラ先生に連絡しないと・・・」

 

アーシュラ先生に状況を伝えると、救急隊が来るまではファフニールさんを守って、その後はすぐに帰ってきて、と言われた。

 

ほどなく救急隊と警察がやってきた。彼ら-魔法界専門の部隊はここにどのような種族が住んでいることは把握済の様だった。救急車と言っても実体は10トンクラスのトラックだ。クレーン等も使ってトラックにドラゴンを載せ、そそくさとどこか然るべき所に向かって行ってしまった。

 

困ったのはアッコ、その後、警察に第一発見者として色々なことを聞かれる。なぜ、ここに来ていたのか?も聞かれた。とりあえず、優秀な投資家であるファフニールさんとルーナノヴァの経営について話合いの場を設けるための調整に来ていたとか言ってごまかす。不審な事が無かったか?も聞かれるが、こちらもわかっていないことを不用意に伝えることはできない。余計なことは言わないように細心の注意を払いつつ、隠していることもバレないように愛想よく対応して、何とか切り抜けた。

 

◆今後の対応策

 

なんとか、急いでアーシュラ先生の所に戻ってきたアッコだが、アーシュラ先生は、いきなりアッコに抱きつき、「よかった、無事で。危険な目に合わせてごめんなさい。」と何度も謝る。

 

アッコは、「いや、いや、私は全然大丈夫。ファフニールさんはちょっと心配だけど。」

「このくらいで、やめたりはしませんよ。」

「ちょっと対策は必要かもしれませんが、またやりますよね?」

 

アーシュラ先生は、アッコの気持ちや、実際、その能力も十分評価しているが、それでも心配は尽きない。何より、一人でさせていることに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。せめてダイアナがいれば言うことなしの最強チームになるのに・・・と。

ダイアナもルーナノヴァへの貢献には積極的だが、今はダイアナ自身の壮大な夢の実現のため世界中を飛び回っていたのである。

 

「今後は、流星丸と行くわ。彼なら、どんなにここから離れていても一っ飛び、もし万が一私が気絶しても彼なら自分の意志で私を運んでくれるわ。それなら大丈夫でしょ?」

 

そう、流星丸はアッコが初めて乗れたホウキ。ホウキ自体に魔力が宿り、魔女なしでも飛べるホウキ。元の持ち主は既に亡くなっており、その時は大きなニュースになったものだ。それ以来、持ち主をなくした流星丸は長らく魔道具屋に留め置かれていたが、ルーナノヴァ・ホウキリレーでアッコを乗せて何十年か振りに飛んだのだった。

 

道具に宿る精霊と話ができるロッテは、魔道具屋では精霊を見つけられなかったが、アッコが乗ることで精霊が生まれたことを知る。ロッテはおばあさんから精霊は「宿るンじゃないよ、生まれるンだよ」と聞かされていたのだ。アッコと流星丸はそのような(親子のような?)特別な関係になっていたのだ。

 

それでも心配するアーシュラ先生と、しばしの作戦会議を続けた後、続きは明日からとなった。

 

翌朝、病院から連絡が入る。ファフニールさんの意識が回復したとのこと。そして、カガリ・アツコさんが見つけてくれたことを伝えると、いたく感激し、今度ぜひともお礼がしたいとのことだった。

 

アッコは「近いうちにまたそばを通りますので、その時伺いますね、と、伝えておいてください」と応え、再び冒険に出ることに胸をワクワクさせるのであった。

 

◆次回予告

「レイラインと新たな出会い」

アッコは再びレイラインの遺跡探索に乗り出す。一般にはストーンヘンジと言われる超有名遺跡に隠された秘密を探る中、アッコはある人物と出会う。そして、政府の特殊部隊が迫る中、流星丸で飛ぶ2人はタンデムで伝説の魔法を発動させる!!

~ドッキドキのワックワク~

 

◆今後の展開

2話「レイラインと新たな出会い」 セシルとの出会い

3話「眠れる夢のアッコと闇の魔女」 眠れる森の魔女の病にかかったアッコ

4話「チーム復活」   ロッテ、スーシィとの再会

5話「新世代入学生」  セシルとユートとカリンが入ってくる

6話「愛と育児 夢の5年間」 ドラゴン子育てと何か

7話「ルーナノヴァ日本校」 開校祝いと日本ならでは展開

8話「魔法と怪獣」   日本に怪獣はつきもの

9話「宇宙樹の真理(前編)」 海を越えたら次は世界を超え、次元を超える

10話「宇宙樹の真理(後編)」 5000年前からの帰還 アッコ誕生日

11話「All friends gathered」 かつての仲間全員集合

12話「ウィッチ達のユニバース」 お祭り

※時間軸としては2023年3月末~8月末のお話

 TVアニメの続編だが、その時期はアニメミライの2013年としている。

 なので、10年後は2023年。

 ちなみに2013年に16才の設定は私の娘と同じになる。

 

◆さらにその先のお話(執筆中、構想中含む)

<2023年の魔法祭>(2023年10月の魔法祭と、そこに至る物語)

1話「悪ガキと妖精」(前日譚2009年)

  アッコ入学の4年前 作者の化身の妖精が登場

2話「魔女パレード」(前日譚2014年)

  アッコ2年生 次世代の卵たちとアッコたちとの出会い

  新世代のアッコ:パール(7才)と新世代のダイアナ:リラ(8才)登場

3話「ロッテカンパニー(前編)」

 (前日譚)アッコ卒業~マンババラン島の冒険

4話「ロッテカンパニー(後編)」

 (前日譚)魔法祭で使われるロッテの魔法神器作り

5話「新世代」(2023年5月~)

  次世代の卵の入学 恋愛発動??

6話「蜂騒ぎと1000人魔女」「10年の時を超えて」の裏側

  恋愛が深まる?騒動と対魏怒羅作戦の舞台裏

7話「魔女家系断絶の秘密」「10年の時を超えて」が終わった直後

  アッコの謎の先祖 魔女家系が消滅した理由

8話「2023年の魔法祭(前編)(バーニッシュ)」

9話「2023年の魔法祭(後編)(リラデパール)」

エピローグはなぜか本編執筆前から存在。

「2023年の魔法祭篇後の引っ越しエピソード」

 

(2024年2月~3月末のお話)

新世代のダイアナ:リラと作者の化身の人外との

禁断の恋。ナイトフォールのオマージュ??

<リトルウィッチアカデミアの中国大紀行>

前編 誘拐された中国生まれの妖精 神獣の力をめぐる陰謀

後編「決戦テッペリン 信じる心は愛」 人と妖精の恋

<ジョニィのルーツ探し>

1話「武陵源」 秘境での妖精の起源探し

2話「黄山」 秘境での妖精の起源探しⅡ

3話「魔法石地帯」 時の魔法 時をかける少女誕生

4話「首都」 野望の行方 ナイトフォールへ?

 

◆主題歌

「時のミラージュ」

リトアカのゲームの主題歌なのですが、テーマ/コンセプトに合っていると思い、借用しました💦

時間と幻影は扱っていきたいテーマ。

 

◆参考資料

レイラインの旅(笑)

ちなみにグラストンベリーがリトルウィッチアカデミアの舞台ブライトンベリーのモデル。

 

 

◆注釈

(*1) これはリトルウィッチアカデミア続編構想PartⅡ 2023年の魔法祭の第2話「魔女パレード」で詳しく描かれる。