魚屋や八百屋が並ぶ小さな商店街。

道行く人は、営業のサラリーマンだったり、定年で暇を持て余すおじさんだったり

小さな子供を連れた若い奥さんだったり

バイトに行くのか大学の授業か、若い男の子だったりする。


僕はその商店街の電気屋にあるテレビを見つめてた。

灰色のスーツを着たアナウンサーの後ろに、世界地図。

いくつかの国が赤く塗られ、そのニュースの当事者なのだと思う。

中央アジアのどこかの国を出発点に、赤く塗られた国々に放物線が描かれる。

天気予報でよく見慣れたここ日本も、赤く塗られた放物線の行きつく先にあった。


「核ミサイルが…」

灰色のアナウンサーが切迫した表情でニュースを読み上げている。


徐々に人が集まってくる。

営業のサラリーマンも、定年後のおじさんも、若い奥さんも大学生も

ガラス越しのテレビを取り囲む。


遠慮を知らない人が、目の前にスルスル入り込み

見えなくなってしまったテレビを諦め、僕はアナウンサーの声に耳を傾ける。


どうやら中東のどこかの国が核ミサイルを撃ち込むらしい。

赤く塗られた数カ国がその標的

だけど、どの国が攻撃されるのかまだわかっていない。



なんとなく思う。

地図を見る限り、赤く塗られた国は日本を含め10カ国

確率は10%。でも僕はこれまで10%の確率を信じてこなかったと思った。

もし降水確率なら傘は持っていかない。

当たりが10%のクジでも僕は当たらない。

10%の数字を、僕はこれまでその数字の持つ意味以上に少なく見積もっていた。

限りなく0に近い数字。

良い悪い関係なく、僕の手には届かない数字。


だけど、そのときはなぜか

その10回のうちの1回を引いてしまうこともあるんだろう。と、思った。

僕のように一度も引けない人もいるなら、引いてしまう人もいるんだと思った。

確率がある以上、どこかの誰かは必ず引くのだと思った。


すると、なんとなく、

今回は引いたかもしれないと思った。


僕は不安で渦巻くテレビを囲む人々の輪を抜けて商店街を歩く。

ふと、空を見上げると

青い空に黒いペンシル型のミサイル。


体が絶望に萎える。

あぁ、今回は引いてしまったんだ‥ 

僕は何かを思いたかった。勇気や感謝や愛やさようならを。

でも、もうその暇はない。

僕は不安定なまま、絶望に萎えたまま、そっと目を閉じる。



一昨日、そんな夢を見ました。