Tokyo Town Pages


都会に行くたびに自分を少し見失う。

僕と都会を隔てるものは僅か30分の時間だけだ。

なのに、自分が自分でなくなってしまう不安感に襲われる。


街は得体の知れないエネルギーに溢れてる。

スタイリッシュでとてもポジティブなエネルギー。


人々はベルトコンベアーに乗せられて

自動車製造の工程みたいに

機械はまたたく間に頭を開き、何かを埋め込み、また閉じる。

そして何事もなかったかのように、

寒々とした空気が渦巻く地下鉄の出口から次々と出荷されていく。


東京タワーから発信される電波に

埋め込まれたなにかが反応して

人々を心地よい高揚感で一杯にさせる。



なんだろう?

街が僕の隠された浮つく心をどういうわけか探し当てて

引っ張り上げてしまうんだ。

踏みとどまることを意識していないと

心地よい高揚感に流されてしまいそうになる。


「流されてしまえよ、きっと楽しいよ、そういうところなんだからさ。」

優しい声で僕の頭に直接語りかけてくる。

「そうかもしれない‥」

僕はなんども思う。そうすべきなんじゃないかと思う。


ペンシル型の高いビル

黄色いフィルター越しの太陽。掠れた青い空。

声をあわせた男の子たちが歌う恋の喜び。

真っ直ぐすぎてある意味新鮮なラップ。

スクリーンにファンデーションのCM

雑踏と雑踏と雑踏

恋と愛と期待と無関心がすっぽり包み込んでいる。

退屈をなにより怖れる人々は、はっぴを着た呼び込みに吸い寄せられて

または、黒い肌のおじさんの持つ、

太字で「消費」と書かれた看板の示す赤い矢印の方向にあるピカピカの建物へ。

建物の入り口には、きっちり制服を着こなした若い男が二人。

渾身の笑顔で人々を迎えるんだ。


そしてすべての人々が建物の中に入ってしまうと

若い男二人は重い扉を閉めて、どこかへ行ってしまう。

すると、どこからか吹いてきた砂塵がピカピカのビルを覆い

あっという間に廃墟に変えてしまう。

砂に埋もれた国、クチャのように。


違うんだ。街は最初から砂に埋もれているんだ。

もともと街はスバシ故城のように、遠い昔に朽ちていたんだ。

台風がレポーターの傘をひっくり返して飛ばしてしまうように

固められたコンクリートや、巨大スクリーンや、ショーウインドウや

そこに飾られるとてもキレイな流行のワンピースや、アクセサリーや

声をあわせて歌う男の子たちの恋の喜びや

ベルトコンベアーや、地下鉄の出口は寒々とした空気ごと

全部、なにからなにまで幻想なんだ。

砂塵がそれを吹き飛ばしてしまったんだ。




実際は、そこまで思ってない。

都会を親の敵とも思ってない。

ただ、なんとなく

街はすべて幻で、さわればパラパラと崩れてしまう土塊なんじゃないかと思ってしまう。



Tokyo Town Pages

この曲を聴くと、僕の頭にはスバシ故城の東京が浮かぶんだ。

カラカラと乾いた土地にサソリが這い回る

人々は暑さを避け布で顔を覆い、夜は寒さに毛布を巻きつける。

中央アジアの砂に埋もれた国、クチャを思い浮かべてしまうんだ。