たとえば、ひとり旅

ピアノにかぶせる布みたいな

向かい合わせの直角の椅子に座って

窓の外はたぶん鮮やかな緑で

山々と田んぼだろう。


偶然、向かいの席に女性が座る。

なんだか運命のようなものを感じながら

だけど、ドキドキして話しかけることなんかできない。


その女性はたぶん10歳くらい年上で

トンネルを切欠に話しかけてくる。


僕は戸惑いながら受け答えをして

どうにか気に入られようと、頭の中をひっくり返して笑わせようとして

目的地の駅までとても短く感じる。


さぁ、その後は想像がつかない。

どんな会話をして、どんな顔をして、どんな気分になって

どう了承したのかわからないけど

その女性と僕は同じ部屋に泊まることになる。



僕はひとり旅を考えると、こんなことを思う。

もしかすると、こんなことがあるかもしれないと思う。

ひとり旅同士が出会い、気が合うと

きっとこんなことになるんじゃないかと、なぜか思ってた。



だけど、今はもう思えない。

こんなことは起こり得ない。

どうしてかと言えば、それは時期が過ぎてしまったからだ。

僕の年齢は、その時期を越えてしまった。

だって40前後の女性は

たいがい子供がいたり旦那がいたり自信を失っていたり思慮深くなっていたりするものだし

僕にも期待させるだけの瑞々しさが失われてる。


僕のひとり旅は変わってしまったんだ。

たぶん、青春が終わったんだ。