僕、やっぱり一般的傾向としてマゾヒストだね。
なんだか、恥かしさにも慣れちゃって
こんな状況も受け入れちゃう。
これから、だいぶ方向変わってしまいそうだけど
なにしろ、今回で終われるかな。
僕には彼女の性癖というか、性の方向・範囲を
だいたい把握してしまえたから
あとは彼女が未体験の行為を言葉にするだけで良かったのね。
守らなきゃいけないのは
僕と彼女2人の従属と支配の関係で
そこに余人を含めてしまってはいけない。
この関係を究極のプライベートにすることで
世間との敷居を高くして
できるだけ高くすることによって、一つ一つの行為の淫靡さも増す。
家庭が甘くなれば甘くなるだけ、社会との違いが明確になって
外に出たとき、逆に公共心が強まるのと一緒
たぶん、ニートの右傾化と構造は同じなんじゃないかな。
あくまでも電話やメールだから
本当に行為をしているのかどうかはわからない。
だけど、そんなことを疑うことなんてなかった。
信じるとか、信じないとか
証拠だとか、適当にあしらうとか
そういう関係ではもうなかったのね。
僕たちの性に対する姿勢は間違いなく一致していて
1つの曇りもなく、誠実だったんだ。
ただ、彼女は性欲を満たし、新しい快楽を求めることに誠実で
僕は彼女の想いに対して、誠実であろうとしてた。
その違いはちゃんと感じてたし
僕はとても意図的だったから
たぶん、魔が差さなかったんだ。
でも、実は理性的である方が、よっぽど淫らなんだと思う。
だって、好きな子に渡すプレゼントを考える頭で
それをするってことなんだから。
効率のいい電車の乗り継ぎを考える頭で、それをするんだから。
最初は足を縛って自慰をすることだった。
たぶん、その世界じゃ基本中の基本なんじゃないかな。
ほんの少しの不自由さでも
彼女の想像を刺激できてしまえば、あとは彼女自身の想像が膨らんで溺れていく。
僕はそうやって彼女の想像に刺激を与えてあげればいい。
それが的確であれば、あとは自動的なんだ。
僕の示した方向は、すべてそういうことだった。
社会と隠すべきプライベートを、ガラス越しに添わせる。
部屋の中から、道行く人を見ながら慰めさせるようなもの。
服というわずか何ミリの公と私の境目を意識させ、添わせる。
やっぱり彼女は本能で満たされるから
結局、精神的な興奮よりも肉体的な興奮を求めてしまって
たとえば、下着をつけずに外に出るなら
危うさのあるスカートよりも、ジーンズを選ぶ。
下着をつけずにジーンズをはくと、生地の質感で
肉体的にもいいし、精神的にも興奮するんだそうな。
そんなことを真剣に訴えるものだから、
さすがに僕も笑ってしまった。
彼女は自分からも、興奮を探索する。
たとえば、そのようにジーンズでデパートに向かい
十分興奮を味わって、
それを材料にトイレの個室で耽る。声を押し殺しながらね。
そして、それを僕に話して、また興奮するんだ。
僕は彼女の行為に、まだ見逃している興奮があることを伝えてあげる。
吹く風の1つさえも、彼女を想像を刺激する針にしてしまうんだ。
通り過ぎる男性の視線をすべて淫らなものに、彼女の想像で変えさせてしまう。
僅かでも可能性があれば、どんなものでも淫らなものに変えてしまえる想像力を
僕の示す方向に沿うことで、彼女は獲得していった。
想像が世界を淫らに変えてしまう。
そして、世界は、人はすべからく想像に従事すべきだと考えるようになる。
するとね、逆にそうではないものを感じるんだ。
とても清らかなものがあることに気がついて
世界が美しいものだと思うようになる。
人はすべからく美しくあるべきと思うようになる。
きっと、そうなる。
でも、そんな風に想うのは僕だけなのかもしれないね。
違うか、やっぱりこんなの建前だよ。
僕はただ、押し込めていた欲望を少しずつ彼女に漏らしていた
そんなとこなんだよ本当は。
結局、彼女は肉体的な快楽を優先してしまい
電話とメールという、想像が拠り所の支配と従属の関係では
満たされ続けることができないのね。
久々にかかってきた電話で
1つ年上の彼を見つけたことを報告してきた。
心から良かったと思ったよ。
きっと、彼女はすぐに初体験を済ませて
「なんだ、こんなものか‥」と落胆して
性の虜になることも飽きてしまうだろうと思ったから。
やっぱり剥きだしの欲望は自分を酷く傷つけるし
社会で生きるには邪魔なものだからね。
正直、僕も苦しかったんだ
真性のサディストじゃないからね
結局、マゾヒストとしてマゾヒストを理解する方に近いからね。
快感よりも、彼女を思いやってしまう苦痛の方が大きかったんだ。
たぶん、この1つ年上の高校生との関係も
きっと長くは続かないだろうし、
もっと言ってしまえば、
勝手気ままに扱われて、悲しい思いをすることになるんだろうと思った。
だけど、それでもいいと思うの。
相手が、10も20も年が離れてる関係でそうされるよりかは
全然救いがあるでしょ。
思春期の恋として処理してしまえるでしょ。
案の定、彼女は数日後
初体験を済ませて、「こんなものなの?」と、疑って落胆してた。
もちろん、彼女は彼女らしく
僕に彼と二人でした、様々な行為を話すのだけど
数ヵ月後、あっさりと別れてしまった。
同じように有り余る性欲も、あっさりと放棄して
まったく普通の受験生になって、高校生になった。
それからも、ときどき電話をくれたけど
付き合ってた彼女のアドレスオール消去と
この間解約した携帯で、もう二度と話すこともなくなった。
結局残されたのは、
心の奥に沈んでいる欲望の根深さを認めざるを得なくなった僕自身と
頼んでもいないのに送ってきた
彼女の写メール。
もちろん、これも頼んでないのに胸を露出した奴ね。
書かなかったけど、僕は彼女の容姿を知ってたのね。
美人ではないけれど、悲しいほど性的に露骨な唇を持ってて
魅力的な子だったよ。きっと大人になったら方々から声がかかる。
高校生にもなれば、彼女を想う男の子も現れるね、きっと。
それにしても、中学生のとき、塾で仲の良かった女の子と、とてもよく似ててね
その子も僕の誘導尋問に引っかかって、自ら慰めていることを話してくれたから、
きっと、この手の感じは似た性質を持ってるのかね。
あぁ、僕そんなことしてたんだ。
なんて馬鹿な中学生だったんだろう。
まったく僕の変態っぷりは本物だね、嫌になるな本当に。
僕はまったく、その写メールの存在を忘れてて
彼女に見つかって、大変なことになりそうだったんだ。
まぁ、開き直って
「うん。勝手に送ってきたんだよ、まったく困ったもんだ」と
逆に憤ってみせたら、案外素直に引いてくれたけど
たぶん、その頃には僕に飽きてたんだろうなぁ。
で、この話はおしまい。
本当に嘘みたいな話でしょ。
そして、僕も嘘みたいでしょ。
なにせ、将来の夢は仙人みたいな人間だからね。
すべての欲望をマンホールの下に押し込めて
やみくろを育てるんだ。
全然、仙人じゃないか‥
お願いだから、僕を変な目で見ないでね。
誰だって、少しくらい変質的なところはあるでしょ。
こんなもの無いってわかってるけど、あるって言っといて。
要するに僕は、どんな偏狭な性癖も受け入れる度量がある
包容力のある男だと、想像を刺激して思い込んでください。