なにかというと
「先代は」
と言われることには
もう慣れた

自分の色を出そうとすると
暖簾に泥をぬる気か、と言われ
自分の色を出さないでいると
気楽な二代目稼業、と言われる

ふとした拍子に
大空に向かって
大声で
叫びたくなるときがある



言ってもしょうがないことは
言ってもしょうがない

なんのうしろだてもなく
新しい暖簾を出す
それはとてつもなくたいへんだ
ドラマチックにたいへんだ

目まぐるしく変わる時代の風のなかで
受け継いだ暖簾を守っていく
それもとてつもなくたいへんだ
ドラマチックではないけれどたいへんだ

どんなに大きな暖簾でも
それを受け継ぎ
守るものがいなければ
消えていく



言ってもしょうがないことは
言ってもしょうがない

言葉ではなく
日々の営みのなかで受け継ぎ続ける
ときおり風にゆれる
暖簾の下で