人生は
私が流した汗の
しみのあと

世の中は
みんなが流した汗の
数珠つなぎ

はじまりは
すべてのはじまりは
誰かが流した汗の
ひとしずく





あなたと出会って
御意におちて
わたしはもう全てが
あなたまかせなの

熱が下がらない
御意の病い
なおせるのはもちろん
あなたひとりなの

 ギョッとしないで
 ギュッとだきしめて
 二人でおちましょ
 フォールイン御意

夢では二人は
御意人なの
わたしの夢すなわち
あなたの夢なの

 ギョッとしないで
 ギュッとだきしめて
 二人でおちましょ
 フォールイン御意

 ぎょい!ぎょい!ぎょい!
 ぎょぎょいのぎょい!

 ギョッとしないで
 ギュッとだきしめて
 二人でおちましょ
 フォールイン御意

 二人でおちましょ
 フォールイン御意






バッハの音楽を聴くと
脳内にバッ波が流れだす

バッ波が流れだすと
口からある言葉が飛び出す

 バッハッハッ!

それを何回か繰り返すと
脳内にバッ波が流れやすくなる

バッハッハッ!と言うだけで
脳内にバッ波が流れるようになる

 バッハッハッ!

バッハッハッ!と口にすると
なんだか愉快になってくる

バッハッハッ!と繰り返すうちに
さらに愉快になってくる

 バッハッハッ!

バッハッハッ!と口にするだけで
自分の人生も満更でもなかったような気がしてくる

バッハッハッ!と口にするだけで
極楽浄土へ往生できるような気がしてくる

 バッハッハッ!

バッハッハッ!と口にするだけで
死んでもいずれまた転生できそうな気がしてくる

バッハッハッ!と口にするだけで
笑って転生できそうな気がしてくる

 バッハッハッ!

生きてるときも、死んでからも
バッハッハッ!で乗り切れそうな気がしてくる

もともと人間に必要な言葉は
バッハッハッ!だけだったような気がしてくる

 バッハッハッ!
 バッハッハッ!
 バッハッハッ!
 (以後、永遠に繰り返す)



バッハにまつわるエトセトラ その1




ビルと
ビルの間の
青空に

ゆっくりと
巨大なウミウシが
姿をあらわした

ゆっくりと
ゆっくりと
とおりすぎてゆき

やがて
ビルの背後に
消えていった

しばらくすると
巨大なヒトデが
姿をあらわした

腕が一本足りないヒトデが
ゆっくりと
姿をあらわした

とおりすぎていくうちに
腕が
さらに一本もげた

後ろからやってきた魚が
その腕を
食べた

そんなこんなで
魚たちにみとれていると
あたり一面が赤く染まり始めた

やがて
すべてのものが
赤味に飲み込まれていった

しばらくすると
巨大なクジラが
姿をあらわした

ひときわ巨大なクジラが
ゆっくりと
姿をあらわした

ひときわ真っ赤なクジラが
ゆっくりと
姿をあらわした

ゆっくりと
ゆっくりと
とおりすぎていく

その巨大さのなかに
飲み込まれてしまいそうなほど
ゆっくりと

その真っ赤な色のなかに
吸い込まれてしまいそうなほど
ゆっくりと

ゆっくりと
ゆっくりと
とおりすぎていく

ときのながれの向きが
逆向きになりそうなほど
ゆっくりと

見ているものと見られているものが
あべこべになりそうなほど
ゆっくりと

ゆっくりと
ゆっくりと
とおりすぎていく

実をいうと

そのクジラは
その巨大なクジラは
その真っ赤なクジラは

いまだに
とおりすぎきっては
いないのだ