日大アメフト部の騒動を見ていて騒動そのものとは離れるが、個人的に非常に気になる事がある。
「これって、日大に弁護士さんが入っているのかな?」という点である。
先週の金曜日「バイキング」だったと思うが、司会の坂上忍さんが番組準レギュラーの横粂勝仁弁護士に「日大って弁護士さん入ってるの?」と尋ねていた。危機管理として誰か弁護士が介在しているのかという質問である。
それが丁度日大側が一回目の回答書を出した辺りである。例の「受け取り方の『乖離』」というフレーズが使われた頃である。
この時、横粂弁護士は「恐らく入ってると思います」と答えていた。私もそうだろうと思った。「乖離」などという言葉は如何にも法律家が好みそうな単語である。「認識」という証明しづらい問題に持ち込むのはよく弁護士さんが使う手である。
そして週が明けて、同じく準レギュラーの佐藤大和弁護士にも坂上さんが同じ質問をしていた。
この頃は丁度、内田前監督が二つの空港で立ち見の謝罪会見を開いた後である。「騒動の全責任は私にあるから監督を辞任します」と言いつつ、指示はあったのかについては一切黙して語らずで批判を受けた頃である。
坂上さんの質問を受けて、佐藤弁護士は「入ってると思うんですけど・・・」と歯切れが悪かった。まぁ、かなりお粗末な会見だったから、おかしいなと感じたのかもしれない。
そして、翌日のバイキングで今度は元裁判官の清原博弁護士に同様の質問を聞いていた。
この日は内田前監督の会見を受けて、関学の被害者の父親が怒りの会見を開き、加害者側の日大の学生も会見を開くらしいという情報が出ていた頃である。
この番組の中で清原弁護士は「とても弁護士が入ってるようには見えない。日大の一部のオヤジたちが勝手に判断してる事じゃないのか。弁護士が入っているとしてもそのアドバイスを全部無視して自分たちの考えで動いているんじゃないのか・・・」と坂上さんに答えていた。
私も最初の頃に、「えらくセンスの悪い弁護士さんがついているなぁ~」と思っていた。だが、これまでの経緯を見てきて、「もしかしたら一切弁護士や危機管理の人間を付けずに動いているんじゃないのか?」という思いが膨らんで来た。それ程に杜撰である。
今回危機管理を色々と考えた。
日本では弁護士さんが危機管理につくことが多い。それは両者の領分が重なるからである。だが、完全に一致するわけではない。今回もそんな感じである。
当初、日大側の狙いは内田前監督の「監督解任」回避にあったのだと思う。この時点では傷害罪にまで発展するとは思っていなかったんだろう。そもそも傷害罪が成立してしまえば監督に留まれるわけはないのであるから、監督の地位をキープ出来るということは傷害罪にも問われないで済むと言う事でもある。
そこで、最初の回答書に「乖離」というテクニックを使ったわけであるが、余りにもセンスがない。この回答書でどんな反応が世間に巻き起こるかくらい、普通のセンスの持ち主であれば分かりそうなものである。この文面では「監督・コーチの意図を誤解した生徒が悪い」と言っているようなものである。
ここがこの問題の分岐点。例えば、仮にこの時点で弁護士さんがいて、弁護士さんが日大側から「監督の解任回避」と「傷害罪の不成立」を依頼された場合に、センスの悪い弁護士さんなら依頼者の利益を守るためにその指示通り動くのかもしれない。
だが、センスのある危機管理者ならば、「いや、もう監督辞任は不可避です。」、「防衛線を常務理事の辞任回避に設定しましょう。」とアドバイスを送るはずである。世間の動向を読んでどこまで犠牲にしなければならないか判断するはずである。目の前の利益に拘っていたのでは更に問題を大きくし、もっと大きな犠牲が出てしまう。結果的に常務理事の責任にまで発展しなかったとは断言出来ないが、もしかしたら最初に「謝罪」と「指示」と「監督辞任」をスパッと打ち出していれば「常務理事の責任」にまで問題は到達していなかったかもしれないのである。
それを後手後手に動いてここまで事態を大きくさせてしまった。
今回の問題は構造的な問題もある。当の内田前監督は日大の№2の立場にあると言われている。そして№2たらしめているその力の本性は人事権である。そんな人の責任を人事を握られている部下たちがまともに処理できるはずが無いのである。日大の広報が内田前監督の「指示なし」を早々と打ち出したが、当該選手に聞き取り調査もせずに一方的に公表したのは呆れるばかりである。内田前監督の指示か広報部の忖度か分からないが、こんなもの後から明らかになれば世間から叩かれるのは容易に想像出来そうなものである。
№2の力が及ばないレベルの人物がこの問題を仕切らなければスムーズに処理できないし、公正性も担保されないのである。要は理事長である田中英壽さんが登場しなければ話が進まないのである。
テレビでは今の所、理事長の田中さんにインタビューを突撃したシーンは一度しか見ていない。しかもインタビューは失敗で、早々と逃げられていた。結局はこの人が動かなければ問題は先に進まないような気がする。メディアとしては早くこの人物を表舞台に登場させる事ではないだろうか。
それにしても分からない事がある。日大の態度である。日大が内田前監督を守ろうとしている事は分かる。仮に、内田正人=日本大学という関係性であれば分かる。だが、内田前監督は理事長でもないし、日大の創設者の血筋でもない。理事長と仲が良いということであるが、それだけでここまで守る意味が分からない。
容易に思い付くのが「お金」である。よく使われているが、日大ブランドが今回の件でガタ落ちだと。ただ、日大ブランドなどと言っても痛みは伴わない。例えば、将来的に受験生が減り、受験料が入って来なくなるという事態は想定出来るが、これもあくまで将来的な話である。現時点で懐が痛むわけではない。
そうすると内田前監督をここまで守るべき理由はどこにあるのだろうか。一つ言われている事が、「日大の創立130周年記念事業」である。平成30年に創立130周年を迎え、そのための資金集めの中心人物が内田前監督と言われている。
もしかしたらこれなのかもしれない。
だが、そうだとしてもやはり理解出来ない。過去からの130年間の偉業よりもこれからの長い未来の方が遥かに大切だろう。まぁ、老い先の短い人達にとっては未来よりも目の前の記念事業の方が大切なのかもしれないが・・・
日大がここまで内田前監督を守ろうとするその背景を読み解かないとこの騒動は完全に解決されない気がする。日大ブランドを捨ててまで彼を守る意義を日大上層部はどのように捉えているのだろうか、そこが知りたい。
